カビゴンから借りてきたと言う絵本。
それを、ピカチュウとリーシャンが引っ張った拍子に破いてしまい…
ピカチュウは酷く反省しているのだが、リーシャンは自分が悪いとは思えず、ピカチュウのせいにしてしまう。
だが、そんな彼女に対して言い放ったのは……オオタチだ。
「……ふざけないでよ」
「ふざけてなんかないわよ!だって、そのそもあの子が…」
「それ…すっごく大事な本だったんだよ?自分にとって大事なものを目の前で壊されたら、誰だって嫌でしょ!?」
「おい、落ち着けオオタチ。…だが正論ではある。リーシャン、ピカチュウや俺と一緒に謝りに行くんだ」
「ジュプトルさんまで…」
どうして。
そんなことを言おうとしていたリーシャンであったが、セレビィが騒ぎを聞きつけてやってくる。
そして、一部始終をヘイガニやリザードンから聞くと…
頭を抑えながら、リーシャンに訊ねていた。
「――そもそも、あなたがジュプトルさんの何を知っているって言うのよ。どんな人と一緒に行動して、どういうことをして、どういう思いで戦ってきたのか知らないで!」
「あなたこそ何が分かるって言うのよ!」
「少なくとも、昨日会ったばかりのあなたよりは…ジュプトルさんのことをよく知ってるわよ!」
「何ですって!?」
(しゅ………修羅場ー!!!)
「…ピカチュウさん、こっちに…こっちに……!」
「こっちに避難して来い、あの手の女の戦いってのは、巻き込まれると厄介なもんなんだ…!」
戦慄する空気に凝固するピカチュウ。
しかし、そんな彼女にコータスとオニゴーリが必死で「こっちに避難してこい」と誘導。
…特にオニゴーリに関しては、何故か説得力がある。
すると…
セレビィとリーシャンの口論は過激さを増し、本が巻き込まれる前にギャラドスとミロカロス、リザードンにバンギラスが急いで部屋から運び出す。
そして、リーシャンの次の言葉に対し、セレビィは激しく憤りながら反論していた。
「何よ…彼女でも何でもないくせに!」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ。それはあなたが思い込んでいるだけであって、ジュプトルさんは何一つ了解してないじゃない!」
「でも昨日、一緒に居たいって…」
「それはあなたがゲート、ファントムっていう化け物に狙われているからよ。ミロカロスさん、それはあなたも証言できるわよね!?」
「ええ…『ファントムが襲ってくる可能性があるから護衛をしたい』って。と言っても、私の場合は……オスのポケモンにトラウマがあったから、『ピカチュウ達がつくならいい』って断っていたの」
「嘘…」
セレビィの言葉を聞いたリーシャンは、愕然としていた。
それ以外にも、PURIN-cesやコロトック、ピカチュウといった不特定多数のゲートを守るために戦っており…
更に太陽が昇るよりも以前に、ジュプトルはミライという人間の少女のパートナーと共に過去の世界に渡り、時の停止を食い止めるための戦いをしていたという話を、セレビィはしていた。
しかしリーシャンは『自分以外のメスのポケモンとも声をかけている』ということしか聞いておらず、それ以外の話は耳に入っている様子がない。
そして…
破れた本の片割れをジュプトルに投げつけ、そのまま泣きながら走り去っていった。
「私以外の女の子と付き合ってるなんて、――馬鹿ーッ!!」
「うおっ!?」
「オオタチキャーッチ!」
「「「勘違い凄いな!!?」」」
投げられた本はオオタチがキャッチし、ヘイガニ達は勘違いしまくりなリーシャンに叫ぶが…
リーシャンは既に何処かに飛び去っていき、「まずい」とジュプトルは追いかける。
今、この状況でリーシャンを単独行動させてしまえば、ファントムに付け込まれてしまう。
ただでさえ勘違いしやすい性格なのだ。
相手がオスのポケモンで…それがファントムだった日には、絶望しかねない。
ジュプトル・ピカチュウ・リザードンが追いかけることになり、苦労人の代表格であるヘイガニは、本をガムテープで補強できないか考えている最中。
そうしていると…
先程のオオタチの態度が気になったのか、バンギラスが訊ねていた。
「オオタチ、…お前もしかして、カビゴン爺さんと知り合いなのか?」
「わっどぅーゆーどぅー?」
「…。……以前、カビゴン爺さんが言ってたんだよ。『よく本を持ってきた子がいる』って…そいつは物探しが凄く得意だったらしいな。で、お前も物を探すのが異常に得意ときたもんだ」
「…んー、ご想像にお任せしまっす!」
そう言いながら、オオタチは(障子用の)糊を持ってヘイガニに加担する。
が、「その糊を持って来るなよ!」とツッコミを入れられてしまう始末…
しかし、適当に誤魔化されてしまってはいるが…あの時のオオタチの怒りようからして、確定しているのは確かだとバンギラスは思っていた。
問題は、どうしてカビゴンとは会わなくなってしまったのか。
その事を聞こうにも、――アホの代名詞たるオオタチは超強力接着剤を持ち出し、ヘイガニに「俺に渡してくれあんたは怖すぎる!」と叫ばれる始末。
――ま、いっか…
バンギラスは諦めたような顔をした後、カビゴンにどう言ったらいいものか頭を悩ませていた。
〜〜〜
リーシャンが泣きながら向かったのは、海だった。
彼女は悲しいことがあると、すぐ海に向かう癖がある…
昨日だって、付き合っていた(と言うより、強引にそう思っていた)パラセクトに彼女がいたと知った時も、この海に来ようとしていた。その途中、ファントムに襲われたと言うわけだ。
ぐすぐすと泣いていると、ゴミ袋を持って海辺のゴミの掃除をしているベトベトンがそれに気付き、声をかける。
「あれ、君、どうしたの?」
「ぐすっ…。あなたは…?」
「僕はベトベトン。ゴミを拾って、更にそれをリサイクルする仕事をしているんだぁ。――で、どうしたの?」
「……実は、付き合っていた人が…私以外の女の子とたくさん関係を持ってて、それで」
「あぁ〜。そういうの、フシダラって言うんだよねぇ」
そうなの!とリーシャンはベトベトンに文句を言い始める。
ジュプトルに関しては“たくさんの女の子と関係を持っている”以外に文句を言う部分はなかったが、セレビィやピカチュウに関してはポンポンと言葉が出てきていた。
あの子が勝手なことをしたのが悪い、あのピンクのポケモンは後からしゃしゃり出てきて偉そう…
その話を聞いていたベトベトンは、のんびりとした様子で話していた。
「ふうん、随分酷い子達なんだねぇ」
「そうなのよ!…だって、私はジュプトルさんのために頑張っていたのに」
「でも、逆にこう考えられるんじゃないかなぁ?――そういう酷い子達と付き合うポケモンなんて、悪どい性格してるんだって」
ベトベトンの言葉に、リーシャンは暫く考えた後…
「そうかもしれない」と頷いていた。
元々勘違いの激しい性格で、真実を曲解してしまう部分がある。
そのため、ベトベトンの言葉を真に受けて、ジュプトルを『性格の悪い女の子達と付き合う悪い人』と勘違いしてしまったのだ。
騙されていたと思い込んだリーシャンは落ち込むが、そんな彼女をベトベトンが励ます。
「きっと君は、今までいい男の人と出会えなかっただけなんだよぉ。偶然悪い男の人ばかりに惚れて、なかなか幸せになれなかったんだ」
「…そう、かな。……そうよね…」
「君はいい子なんだから、きっと幸せになれるよ。だから元気出して?」
「――優しくて…暖かくて、……カッコいいかも…」
「え?」
「あのっ!わ、私と付き合ってください……あなたとならきっと、ちゃんとした恋ができると思うの!!」
リーシャンに突然告白され、ベトベトンは困ったような顔を見せる。
だが、そんな彼女が放っておけなかったのか…
口元に笑みを浮かべた後、ベトベトンはそれを了解していた。
「いいよぉ。でも、いきなり恋人になるのは難しいから…もうちょっと君のことが知りたいなぁ」
「!……は、はい!!」
「君の事を知りたい」
そう言われたのは初めてだったのか、ベトベトンと一緒にポケモンタウンで食事をしようとリーシャンは提案していた。
――この人の言うとおり
――私は今まで、縁がなかっただけだったのよ
――この人となら、絶対に幸せになれる
そんなことを思いながら町を歩いていると、1匹のパラセクトがリーシャンを見つけて叫ぶ。
「…あっ、お前!」
「パラセクトさん?……どうしたのよ、もう私達の関係は」
「どうしたもこうしたも!……お前が変な言いがかりをつけるせいで、彼女に誤解されてフラれたんだぞ!?どうしてくれるんだよ!!」
「いっ…言いがかり!?」
「道に迷って案内したってだけで、勝手に彼氏になってくださいって…。『俺には彼女がいる』って何度説明しても、『私のことですよね!?』って妄想を広げちゃってさ……こっちはいい迷惑だよ!」
パラセクトの話によれば…
彼は偶然、行きたい店が分からなくて困っていたリーシャンを見つけ、道を教えていた。
しかし、そんな彼の優しさにリーシャンは一目惚れ。
何度パラセクトが『自分には彼女がいる』と説明しても分かってくれず、昨日…その彼女であるハッサムといる現場をリーシャンに見られてしまったそうだ。
当然、【パラセクトの彼女】と思い込んでいたリーシャンはハッサムに食って掛かり、ハッサムも二股を掛けられていたのだと誤解してバレットパンチをお見舞いされていたのだ。
そのまま二人の関係は破局…
リーシャンはパラセクトを解放しようとして、その際『私の彼氏を傷つけるなんて酷い女』と呟いてしまったせいか、それがパラセクトの逆鱗に触れて『お前とは彼女なんかじゃない、俺にはお前以外のちゃんとした彼女がいたんだ』と言われてしまう。
「そ…そんなのそっちの被害妄想よ。それに、あの女とパラセクトさんもどうせ縁がなかっただけの話じゃない……私には関係ない!」
「関係あるね!人の人生を壊しておいて、その責任を一切取らないのは許されることじゃないだろ!!」
「もういいでしょ、この話は!私には今、ベトベトンさんっていうちゃんとした彼氏がいるの…私の幸せを壊さないで!!」
「自分だけ幸せになろうってどういう神経してるんだ!……それに、お前みたいな自分勝手で被害妄想ばかりの女、誰が好き好んで付き合うもんか。騙されてるに決まってる」
「何ですって!?」
「――あっ、いた!リーシャン!!」
「まったく…」
リーシャンとパラセクトの口論を、ピカチュウとジュプトルが見つける。
リザードンも遅れてやってくるが、リーシャンの近くにいたベトベトンを見て「?」マークを頭に浮かべていた。
…ベトベトン
…待てよ、確かバンギラスが
リザードンはバンギラスが予め挙げていた、“ファントムになっている可能性のある行方不明者”の存在を思い出し、リーシャンに叫ぶ。
「って、おい…そのベトベトンから離れろ!」
「リザードン?」
「バンギラスが前に調べてたんだよ…あの儀式の前後で、清掃員の中に行方不明者が出ているって。――その一人がベトベトンだ!」
「でも、ベトベトンなんていくらでもいるんじゃ…?」
「いや…清掃員として従事していたベトベトンは1匹だけだって話だ。可能性としてはありえる!」
「何言ってるのよ!ベトベトンさんは優しくていい人よ、あなた達みたいな酷い人達と違って信用できるわ!!」
リザードンの言葉に、ジュプトルやピカチュウがベトベトンに疑いの目を向けるが…
それに対してリーシャンは、「違う」と言い放つ。
ベトベトンを心底信頼しているのか、今度ばかりは本気のようだ。
このままでは、リーシャンが騙されて絶望してしまうかもしれない…誰もがそう思っていると、何処からともなくグールの大群がやってくる。
仕方なく、ジュプトルとリザードンはそれを守るために戦うが、その間にベトベトンはリーシャンを連れて逃げてしまう…
それを見たピカチュウは慌てて追いかけ、パラセクトは『あのリーシャンといると碌なことにならない』と一目散に逃げていた。
2匹が逃げ込んだのは、狭い裏路地。
――悪者に襲われ、追われている展開
――彼と命からがら逃げ延びて…いつ襲われるか分からない恐怖に、いつしか二人の仲は…
そんな絶好のシチュエーションに、リーシャンは顔をすっかり赤らめている。
そうしていると、リーシャンの後を追っていたピカチュウが声をかけていた。
「あっ、リーシャン!……早く離れて、リザードンさんはともかく…バンギラスさんの情報は間違ってたことがないんだよ!?」
「そうやってベトベトンさんを悪者にして…この人の何を知ってるの!?」
「それは…」
「知らないでしょ?……ベトベトンさんは…優しい人なの。私の悲しみを包み込んでくれて、暖かくて、――そんな人があんな怪物なわけない。第一、ポケモンがあんな化け物になるわけないでしょ!?」
「その優しさが嘘かもしれないんだよ!?――私だって分かる、私も…ファントムに騙されて、絶望した一人だから……信じていたポケモンに裏切られた一人だから!」
ピカチュウはそう言いながら、ミズゴロウのことを思い出していた。
…初めて作った探検隊
…初めてできた仲間、初めての友達
そして、――初めて信じた友達からの裏切り…
どうしようもなく絶望した。悲しんだ。だが、それを救ってくれたのがジュプトルだった。
彼のお陰で、ピカチュウは探検隊を続けられ…今では信頼できる仲間がたくさんできた。
だからこそ、今、ベトベトンに騙されているかもしれないリーシャンのことが放っておけなかったのだ。自分のような犠牲者は出したくない、だからこそ。
「そんなの、あなたの縁がなかっただけの話じゃない…私達には関係ない!」
「……そうかもしれない。でも、他人事じゃないんだよ?『関係ない』じゃ済まされないの…じゃあ訊くよ?リーシャンは一度でも人の気持ちを考えたことがあるの?誰かの話をちゃんと聞いたことがあるの!?」
「…ッ!」
「人の話を訊かないで、自分の中で完結させてるから…『裏切られた』って思ってるだけじゃない。――ちゃんと見てよ!何が正しくて、何が間違っているのか!!」
そうしていると…
ピカチュウに向けてヘドロ爆弾が放たれ、大きく弾き飛ばされる。
それを放ったのは、ベトベトン。
リーシャンはそれを“私を守ってくれた”と勘違いしてしまうが、ベトベトンは無表情で呟く。
「…あーあ、魔法使いが嗅ぎ付けたなら早めにやんないとなぁ」
「ベトベトンさん?とにかく、今すぐここから逃げ…」
「さっきのパラセクトだったっけ?――彼、凄く鋭いなぁ…あの着眼点、『僕ら』にも欲しいよ。ベルゼバブ様が抜けた穴って、結構大きいんだよねぇ」
「ベトベトンさん…?」
「彼の言葉、2つの意味で正解なんだよ?『自分勝手で被害妄想ばかりの女を好き好んで付き合う奴はいない』………そりゃそうだ。僕だって付き合ってみて面倒だって思ったもの。そして2つめ」
そう言いながら、ベトベトンは本当の姿を現す。
それは昨日、リーシャンを襲ったファントム……ククルカン。
その姿を見たリーシャンは愕然とし、ピカチュウはそれを助けようとするがグールに阻まれてしまう。
魔法使いがいない間に、早めにこの“勘違い女”を絶望させておくべきだと思ったククルカンは、本性を露にしながら言い放つ。
『騙されてるに決まってる…非常にその通りだよ!さっきの言葉を含めて、正解過ぎて花丸あげちゃいたいね!!』
「べ…ベトベトン、さん…?」
『あのパラセクトの話は正解。古の魔法使い…リザードンの話も正解。そして、あのピカチュウの話も正解。――あれぇ?こんな正解だらけなのに、どうして君は間違いのほうを選んじゃったのかな?どう見ても、正解に行き着く可能性のほうが高かったのに』
「わ、私を…騙したの?」
『僕が君を騙したんじゃない。――君が選んだんじゃないかぁ、たった一つの不正解を!』
「ふ、せい、かい…」
『でも、まさかファントムの事をまったく知らないとは思わなかったなぁ。ここ最近の事件で、ポケモン通信も大きく取り上げているから……てっきり分かってるとばかり。どんだけ君、自分の妄想しか信じられてないのさぁ』
――【ポケモン通信】でも、最近はファントムに関係する記事が大きく取り上げられることがある。
但し、ファントムについて積極的に調べたいと思うのは、バンギラスぐらいだろう。
他の記者達は割を食っているが、自分達にファントム事件を取材しろと局長に言われても「無理です」と言うことしかできず…
大きく取り上げられると言っても、バンギラスの案で一面に大きく載せるのではなくその次のページの1/3ほどのスペースをもらえればいいと言う案で、何とかなっている。
それに、時々ウソッキーやポポッコに頼まれ、『バンギラスの取材した内容を【正しく伝える】と言う前提』で彼らのどちらかの手柄にすることもある。ファントム取材の件は誰の手柄でも関係ない…それが正しい形で伝われば誰が書いても構わないと、バンギラスは思っている節があった。
……だが、リーシャンはポケモン通信は基本読まない。
読まない上に、ファントムのことは“ただ面白おかしく書いてるだけ”と片付けていたので、危機感などまったく持っていなかったのだ。
そのせいで、重要な情報が彼女には伝わっていなかったのだ……『ファントムは、ゲートと呼ばれる絶望の因子を持ったポケモンから誕生した、まったく別の化け物なのだ』と。
「う、そ…」
リーシャンはすっかり絶望し、紫の亀裂が入る。
ピカチュウは彼女をジュプトル達の所に連れて行こうとするが、ククルカンの攻撃に阻まれてしまう。
このままでは、リーシャンが…
そう思っていると、そんなピカチュウの前にウィザード・ウォータードラゴンとビーストがやって来る。
ウォータードラゴンはウィザーソードガンで相手を牽制し、その間にビーストがダイスサーベルで斬りかかる。
そして、リーシャンが絶望していると知ると…すぐに役割分担を始める。
「ジュプトル、お前がこいつの中のファントムを倒せ!俺があの土偶っぽい何かを倒す!!」
「いいのか?」
「いいも何も、あーゆーボーナスステージ的な狩場を誰が見逃すってんだ。ファントムもグールも食ってやるから安心しな!」
「…確かに、お前の都合を考えるとそれが一番か」
ウォータードラゴンはそう言うと、リーシャンの紅白紐の部分にエンゲージリングを嵌める。
そして…
今まで勘違いを続け、今回、本当の意味で悪意ある者に騙されてしまった彼女は…すっかり落ち込んでいる。
そんな彼女に、ウォータードラゴンは言い放っていた。
「……お前はまず、人の話をよく聞いて、考える必要がある。オオスバメやオオタチだって基本はKYだが、お前よりは人の話をちゃんと聞くし、考えられる…だから誰からも好かれるんだ」
「…私は、私はただ……ちゃんとした恋がしたかった。それだけなのに…」
「それなら尚更、悪い奴に騙されないように嘘を嘘と見抜けるようにしろ。そして…人の話をちゃんと聞け。そうじゃなければ、お前は一生騙されるだけだぞ」
「……」
「俺がお前の希望を繋ぐ…本のことを、カビゴン爺さんに謝るためにもな」
<エンゲージ、プリーズ>
〜〜〜
リーシャンのアンダーワールドは、誰かの結婚式だった。
式を挙げているのは、新郎のブーピッグと新婦であるチリーン…
その式にリーシャンが参列しているのを見て、ウォータードラゴンは察していた。あのチリーンは、リーシャンの姉なのだと。
恐らくリーシャンにとっての希望は、姉のような幸せな結婚をすることだったのだろう。
だからこそ、あんなにも必死になって異性と付き合おうとしていたのだ。
――チリーンといえば、プクリンのギルドの奴を思い出すな
そんなことを思いながらも、突然教会から大きな亀裂が入り、そこからゴーゴンが現れる。
『ゴォォォォォゴンッ!』
「…前のほうに“プテラ”をつけたくなるな…いや、それじゃあまったく別の怪人、というか戦隊ロボになるか!」
<コネクト、プリーズ>
ウォータードラゴンは“コネクト”の魔法でマシンウィンガーを呼び出し、その上に跨ってゴーゴンを誘導する。
ゴーゴンは巨大な一つ目から岩を放ち、更に目を光らせてウォータードラゴンの進行方向にあった建物や木を石にしてしまう。
…相手の攻撃が席か能力である以上、的が大きくなるウィザードラゴンには乗らないほうが先決
いくらウィザードラゴンの飛行スピードが他のファントムを凌駕していても、翼が一部分でも石になってしまえばそれだけ不利になる。
ここは、ドラゴンの力を借りたウォータードラゴンの状態で、尚且つマシンウィンガーに乗って撹乱するしかないのだ。
『ゴォーゴンッ!!』
「そらっ!」
ゴーゴンが目の前に坂のような形状をした石の障害物を作るが、ウォータードラゴンはそれを逆に利用し、勢いよく宙に飛び上がる。
その状態でマシンウィンガーを踏み台にし、“ブリザード”でゴーゴンを凍らせる。
更に“スペシャル”リングを使って巨大な尾を呼び出すと…
ミロカロスの使うアクアテール・アイアンテールのような、勢いを生かした一撃で一刀両断。
ゴーゴンは真ん中から真っ二つになると、そのままガラガラと体が崩れ落ち…爆発していた。
ウォータードラゴンは着地しながらも、ふうと一息とつく。
「…案外、仲間の技の動きも参考になるものだな」
――ビーストとククルカンの戦いも、熾烈を極めていた。
ククルカンは大量のファントムを呼び出し、ビーストはセイバーストライクで応戦。
大量の魔力は貰えるが、やはりこれ以上長引かせても、戻ってくるジュプトルの負担を増やすだけ。
そうすると、本を何とか修復したバンギラスがやって来て、叫んでいた。
「リザードン!」
「…頭脳労働者キター!!」
「後で殴る!――前から思っていたんだが、ビーストでマグナムストライクは使えないが……ハイパービーストでセイバーストライクはできるんじゃないか!?」
「おっ、そのアイデア貰い!」
<ハイパー、ゴーッ! ハイハイ、ハイ、ハイパー!!>
確かに、ミラージュマグナム最大の必殺技は、ハイパービーストでないと使えない。
使用するのに、一度ハイパービーストになって、その指輪を使う必要があるからだ。少なくともビーストの状態で使えば、力が強すぎて使えたものじゃないだろう。
…だが、ダイスサーベルを使う必殺技・セイバーストライクは?
ファルコ・カメレオ・バッファ・ドルフィ…それらの指輪も使えるのだ、指輪さえ開かなければハイパービーストリングも使えるだろう。
<シックス! ハイパー、セイバーストライク!!>
「――そーら…よっ!」
『『『ギャースギャーッス!!』』』
『うっ、……何その猛獣大フィーバーッ!!?』
6の目が出たこともあってか、大量の動物のエネルギー体がククルカンとグール達を襲う。
自分の身を守るため、大量のグールを呼び出すが…
向かってくる獅子やカメレオンなどの大群には及ばず、遂にはククルカンも撃破されていた。
「ごっそさん」とハイパービーストは両手を合わせた後、変身を解除。
ちょうどウィザードもリーシャンのアンダーワールドでの戦いを終わらせ、全員が勝利を喜び合う。
そんな彼らを見ていたのは…
一匹の、ゴウカザル。
そんな彼に背後から話しかけてきたのは、メデューサだ。
「へぇ、なかなかやるじゃないか」
『…グレムリン。あなたに命令よ』
「あー、悪い。もう命令は下ってるんだわ」
『何ですって?』
「お前らがなかなか絶望させられないっていう、オニゴーリ…アレを絶望させろってのが、ワイズマンの命令だ」
『……残念だけど、あなたにアレを絶望させるのは無理よ。そいつの件は私に任せて、あなたは何もしないで頂戴』
「ワイズマンの命令でもか?」
『…ワイズマンの命令でもよ』
やれやれ、と言った様子で手を横に振るゴウカザル。
勝手にしてくれ、と言いたいのだろう。
だが、メデューサはそんな彼の背中を見ながら、歯軋りをする。
…あんな、今まで封印されていたような奴に
…ワイズマンは何を考えている
しかし、そうなる前に自分が成果を挙げればいい…メデューサはそう考えていた。
それに、彼女にはオニゴーリを絶望させられる【切り札】がある。
『――よく考えれば、凄く簡単なことだったわ…。奴にはオオスバメ同様、複数の希望がある…だったら、目の前で……より最悪な形で、その希望を壊してやればいい』
ジュプトル・ピカチュウ・バンギラス・リザードン、そしてリーシャンは…
皆して、カビゴンのところに謝りに行っていた。
リザードンがついて来たのは話の流れ…としか言えない。そしてバンギラスが怖かったから。
カビゴンは「古い本だし、保存環境も悪いから仕方がないことじゃよ」とあっさり許してくれ、ピカチュウは何度も頭を下げていた。
そしてカビゴンの家を出て、リーシャンはさっきのことをピカチュウに謝っていた。
「……さっきはごめんなさい。私、何も知らないで酷いこと言って…」
「ううん、別にいいよ。それよりも、もう二度と騙されたりしないでね!」
「あと、恋をしたいならそれなりの信頼関係を作らないとな。ま、相性ってのが存在するのも事実だけどよ!」
「…バンギラス、リザードンと相性のいいメスポケモンっていると思うか…?」
「さあ…いてもオオタチじゃないのか。気が合うみたいだし…」
「え、お前とオオタチがいいコンビだと思ってたんだが」
「顔面が陥没するぐらい殴るぞジュプトル」
緑コンビの漫才が披露されながらも…
リーシャンはお辞儀をしながら去っていき、ピカチュウ達も【雪花屋】に帰ろうとする。
…そんな時だった。
カビゴンが何かを思い出したかのように、1冊の本を持てやってきたのは。
「おぉい、お前さん達」
「どうした、カビゴン爺さん」
「いや、実はお前さん達に渡し忘れて追った本があってな。――以前、ヨノワールと言うポケモンが、アルセウスのいると言う【神の頂】について調べておったのじゃが……その時、彼に見せてそのまま別の本の下に埋まらせてしまっていたものがあったのを、思い出してな」
カビゴンの話では…
以前にもヨノワールはカビゴンの元を訪れており、恐らくジュプトル達と同じで、何らかの手がかりを手に入れようとしていたのだろう。
その時、彼は今カビゴンが持ってきた本を見て目の色を変えていたそうだ。
その後、カビゴンは本を戻したものの…「保存環境が悪い」と自分で言うほどはあるのか、本棚というものはなくただ適当に積み重ねているだけで……本の山が崩れることはしばしば。
だからこそ、この本だけがジュプトル達に渡らず、ついさっき見つけたそうだ。
「ヨノワールの見ていた本…ということは、【神の頂】に関係する本か?」
「かも、しれないな…読むぞ」
「俺、先に帰るわ…」
「リザードンさん!古の魔法使いが聞かなくてどーするの!!」
脱走するリザードンをピカチュウが捕まえ、バンギラスは呆れ気味に話を続ける。
基本的には、これまで調べたアルセウスに関する情報と大差はない。
だが…
他の本にはなかった、新しい事実が記載されていたのだ。
「――『天界の笛・ハーメルケインは、その音色を奏でることで【神の頂】への道を開く。音を奏でる場所は、天に最も近い場所でなくてはならない』」
「ハーメルケイン…って、確か」
「……白い魔法使いの持っている…あの、笛の武器か?」
「じゃあ、アルセウスと白い魔法使いには…関係があるってこと?」
「ああ。ただ、そう簡単に渡すはずがないとは思っていたほうがいいかもしれないな…それに、本当にあいつの持っているハーメルケインが天界の笛とイコールである可能性は……今の段階じゃ、断定できない」
謎が謎を呼ぶ、白い魔法使い。
賢者の石、天界の笛、アルセウス、白い魔法使い…
これらが意味するものとは……何なのか。
***
教訓:人の話はちゃんと聞こう
というか、ウィザダンゲートの絶望率パネェな…
下のほうに纏めてあるんで、それを見た上でその異常性を再確認してください。
リーシャンの勘違いw
そして、オオタチがカビゴンと知り合いだったと言う…
でも、何で会わなくなっちゃったんでしょうね?
そして明らかに怪しいベトベトンェ…
今回の一番の被害者はパラセクトだと思うの…!
と言うか、彼には同情せざるを得ないw
そりゃ、彼からしてみれば本当に怒りたくもなりますよねー…
リーシャン、一応悪い子じゃないんです。
ただちょっと思い込みが激しいというだけで…! あ、でもストーカーしたりパンツに頬擦りするような変態ではないです。
てかそんな変態なら救いようがないわ!!←
2話:ピカチュウ
4話:オーダイル
7話:コロトック(+コロボーシ)
16話:プリン
22話:ミロカロス
28話:サンドパン (この前の27話でフライゴンとベトベトンにファントムフラグあり)
35話:ギャラドス
37話:リーシャン
…ギャラドスは、初登場で回避してるんだけどなー…
でも、大抵はその話の中で絶望しているって感じですかね。ほぼ毎回絶望してファントム生み出してるって…そりゃアンダーワールドのネタも尽きるわ!
ただ、館長にはフラグが…なぁ…
最終的に絶望しないで済むのって、オオスバメぐらいなんでしょうか…そもそも、「ぜ」の字はあっても(※33話)「つ」の字がないから魔法使いになる確率が限りなく低いw
次回
………馬鹿は風邪を引かない…この言葉を思い知る。