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タイトル未設定 - 29話:フェニックス、最後の作戦

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29話:フェニックス、最後の作戦

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ワイズマンは、考えていた。

…新たな魔法使い、メイジについて…

メイジに関する情報は、これまでに一切届けられていない。

ということは、これまでファントムと遭遇することはなかったか…それとも、行く先で出会ったファントムを倒していたか。

いずれにしろ、そこまで問題視するほどの者ではない。

そう思い、ワイズマンはメイジの話を持ってきたメデューサに話していた。


『――その話が本当だとして、奴は何故これまで姿を現さなかった?』

『そこは私にも。ですが、これ以上魔法使いを増やし続けるのは危険なのでは?ワイズマン』

『放っておけ。確かに想定外の相手ではあるが、居た所で何の問題もあるまい…それよりも、ゲートを絶望させるのだ』

『…それなのですが、ゲートを絶望させてファントムを生み出す…本当に、それだけなのですか?』


メデューサの問いに、ワイズマンはくすりと笑う。

メデューサも、ベルゼバブも疑問に思っていたこと…

“ワイズマンはファントムを増やしてどうするのか”

前々から『同胞を増やし、この世界の新たな種族として君臨する』という説明を受けている。

…しかし、それにしては随分と同胞の数を減らされているのだ。

一気に増やそうにも、セイレーンはいない…このままでは、魔法使いに倒されるのを待つのみだ。

だが…

ワイズマンはなおも余裕の表情で、話し続けていた。


『それを知る必要はない。――とにかく、ゲートを絶望さろ。それがお前の使命だ、メデューサ』

『…分かっております』



『……いいや、俺は納得できないな!』



この場に割って入ってきたのは、フェニックス。

それを見たメデューサは訝しげな顔を見せ、ワイズマンもくすりと笑いながら彼を見ている。

一方のフェニックスは、もはや我慢の限界なのか、ワイズマンに言い放っていた。


『何で面倒な手順でファントムを増やす!どうして魔法使いを放っておく!!――納得行かないことだらけだ!!!』

『古の魔法使いはともかく、メイジやウィザードは中のファントムが育てば最強最悪のそれとなる。これまで希望を与えてきた分、この世界のポケモン達に絶望を与えていくのだ』

『中のファントムを育てさせるためだけ、か!?』

『そうだ。魔法使いは、私の指示があるまで手出しをするな…お前も、メデューサも、ゲートを絶望させることに集中すればいい』

『…そんなこと、納得できるかよ……面倒くさい手順で絶望させて、それで絶望させても魔法使いに潰される…中のファントムを育てるとか悠長なことをやるより、潰したほうがよほどいいに決まってらぁ!!』


一触即発の空気。

メデューサもフェニックスを窘めようとするが、彼の意見も一理ある。

魔法使いがいればいるほど、ゲートを絶望させるためのファントムが倒され…

運よくゲートが絶望しても、中のファントムを潰されてしまう。

どうしてファントムを減らし続けてまで、魔法使いを生かすのか?

ファントムを増やして世界を支配する目的と、矛盾しているのではないか?

…彼女がそんな疑問を心に秘めていると、フェニックスがとんでもない発言をしていた。


『俺はもう我慢できねぇ、――俺が新しいワイズマンになれば…好きなように暴れられる!』

『フェニックス!?』

『…ほう、この私と戦うというのか』

『言っておくが、俺は既に4回再生済みだ…今の俺は……超強いぜッ!』




カタストロフをワイズマンに振り下ろそうと、フェニックスが駆け出す。

だが…

パチン、という指の音が聞こえたかと思えば、フェニックスの動きが制止する。

それだけでなく、どういった理由でワイズマンに襲い掛かろうとしていたのか、覚えていないのだ。


『………あれ、俺…何してたんだ?』

『あなた、覚えていないの?』

『あ?何だ、人を鳥頭みたいに』

『…ワイズマンに襲い掛かろうとしたことを、覚えていない……こんなことができるのは…』

『――私が彼に頼んだのだよ、フェニックスが後悔する前にね』


そう言って現れたのは、ベルゼバブ。

…更にその後ろには、テディスというファントムの姿…

それを見たメデューサは目を細め、ベルゼバブは説明を続ける。


『…テディス、あなたの仕業ね?』

『ええ、メデューサ様。私の能力は…知っていますよね?』

『彼の力を使って、この部屋に押し入ってきた理由やワイズマンとの口論の総てを忘れさせてもらった。――それよりもフェニックス…魔法使いと戦いたくはないか?』

『…できるのか?』

『ああ。……ウィザードやメイジ、白い魔法使いと戦うのはワイズマンの意思に反する…しかし、古の魔法使いならば……そうですよね?ワイズマン』



ベルゼバブの言葉に、ワイズマンは頷く。

…ビーストの中には確かにファントムがいるが、それはビーストドライバーに封印されたファントム…

一度封印された以上、どうやってもそこからビーストキマイラを外に出すことは不可能。

だが、アンダーワールドを経由してビーストキマイラに干渉し、倒すことは可能なのだという。

アンダーワールドに介入できる手段を“封じている”以上は、キマイラの解放は不可能…しかし、だからこそビーストは倒しても特に問題がないのだ。

特にリザードンはゲートではないのだから、尚更。


『…古の魔法使いか。ならば、特に問題はないだろう』

『と、いうことだ。――しかし、普通の方法では古の魔法使いと単独で戦うのは難しい…必ず、指輪の魔法使いの妨害が入るだろう』

『…確かにな。でも、それじゃあどうすればいいんだよ』

『私に任せろ。……何、私の作戦の確実性はお前がよく知っているはずだ…フェニックス』

『……チッ。お前はいけ好かないが、頭がいいのは確かだからな…任せたぜ、ベルゼバブ』


そう言って、フェニックスは先程の無礼などすっかり忘れ、去っていく。

一方で…

フェニックスとベルゼバブの話を聞いていたメデューサは、「まさか」と考えていた。


『……成程、そういうことか…通りでおかしいと思った』






〜〜〜






【スピード・デリバリー】本部。

そこでは、オオスバメが3日間ほど休暇を申請に、ヨルノズクのいる部屋に訪れていた。

その際、ヨルノズクはオオスバメが休暇を申請するなど珍しいと思ったか、その理由を尋ねる。

すると、オオスバメは少し困った様子でありながらも、詳しい話をし始める。


「――実は、ちょっと調べたいこと…というか、探したい人がいて」

「探したい人?」

「はい。…あ、そうだ、ヨルノズクさん……ピジョットってポケモンに心当たりがないですか?」


――ピジョット

オオスバメからその名前を聞き、ヨルノズクは食い入るようにして彼を見ていた。


「…あいつを知っているのか!?」

「ヨルノズクさんの知り合い…って可能性は、低いんですけど。……知っているんですか?」

「……ああ…あいつは、私の友人だったよ。5ヵ月ほど前に、いなくなったがな」

「いなくなったって…どうして?誘拐じゃないんですよね」

「…少し暗い話になるが、聞くか?」



【スピード・デリバリー】はそもそも、最初の頃はヨルノズクとピジョットが立ち上げた…小さな配達屋だった。

今ではそう思えないほどたくさんのポケモンが働いているが、昔はたった2匹だけで何とか経営していたらしい。

『安く、速く、安全に』をモットーとするスピード・デリバリーは、ポケモン達の口コミで徐々に話題になり、そこで働くポケモンも増えていった。

だが…

ある事件がピジョットを襲いかかり、彼は配達業を辞めなくてはならないまで追い詰められていた。


「……その日のあいつは、運が悪かっただけなんだ。届けるはずだった荷物を台無しにしただけでなく、翼にも傷を負って…姿を消した」

「荷物を台無しに、って……何かあったんですか?」

「…私は詳しい話を聞いてはいないのだが、もしかすれば…最近噂になっているファントムとやらにやられたのかもしれない。――しかし、私に何も言わずに姿を消すなど…」

「…」

「私事ですまないとは思っているが、オオスバメ…何か分かったら、教えてくれないだろうか。……あいつが、今何処で何をしているのか…それが気がかりでならないんだ」


そう話すヨルノズクの表情は、真剣そのもの。

…大事な友人が突然いなくなり、不安に思うのは誰にだってある

しかし、流石に「ファントムになって皆を傷つけています」と言うことはできず、ヨルノズクを深く傷つけてしまうだろう。

そう思ったオオスバメは、潔く返事を返していた。


「…分かりました!何処まで調べられるか分からないけど、できる限りはやってみます」

「そうか、…ありがとう」




オオスバメが完全にいなくなり…

ヨルノズクのいる所長室に現れたのは、ベルゼバブだった。


『――お勤めご苦労』

「…言うとおりにはした。約束は……」

『ああ、勿論守られるとも。…貴様の息子のホーホーは、ここにいる』

「…お父さん!」

「ホーホー!」


親子の感動の再会。…それを嘲笑うかのように笑みを見せる、ベルゼバブ。

そもそも、オオスバメにした話は…ベルゼバブがヨルノズクに言うよう強要した、嘘だ。

『ここで働いているオオスバメを、ピジョットと言うポケモンを探すように仕向けろ』

『そうしなければ、お前の息子の命はない』

…大事な子供の命が掛かっていれば、いかにヨルノズクと言えども、従わざるを得ない。

現に、仕事の間は【サーナイト保育所】に預けているはずのホーホーを目の前に連れて来られた時は、ヨルノズクは血の気が引いた。


『だが、自分から探す気でいたとは…手間が省けて助かったな?』

「しかし…あんな嘘を私に言わせて、何をする気なんだ…」

『何、餌になってもらうだけの話だ。まあ…フェニックスは気性の荒い奴だから、例えゲートと言えど命の保障はできないが』

「なっ…!」

『おっと、お前は自分の息子の命を優先したのだ…従業員を悪魔に売ってな。……尤も、子供の命と赤の他人の命…どちらを選ぶべきなのかは、明白だっただろう?』



それだけ言うと、ベルゼバブはその場から姿を消す。

…わんわんと泣くホーホーを抱きしめながら、ヨルノズクは後悔していた。

息子の命を盾に取られたとはいえ、そのためにオオスバメが殺されてしまうかもしれない。

どうすればいい…

ヨルノズクが必死で考えていると、ムクホークが部屋に入ってくる。


「所長、実は来月の頭から3日間、休暇を…」

「…ムクホーク…!」

「しょ、所長…どうしたんですか?それに、何でホーホー君が…」

「ムクホーク!――オオスバメを、オオスバメを急いで呼び戻してくれ…もしかしたら、……あの恐ろしい化け物に殺されてしまう!!」

「ええっ!?」


ヨルノズクの言葉に、ムクホークは最初、理解ができなかった。

しかし…

以前、【スピード・デリバリー】の配達員の殆どを襲った、フェニックス。

その被害者でもあるムクホークは、「こうしてはいられない」とばかりに自分の休暇申請を忘れて、飛び出していた。

だが、実際にファントム絡みだった時のことも考え、ムクホークは先にジュプトルかリザードンに協力してもらおうと、【雪花屋】に向かっていた…





その頃、オオスバメは…

ポケモンタウンで、早速聞き込み調査をしていた。

しかし、誰に聞いてもピジョットのことは分からず、むしろこの間の放火事件のことしか分からない。


「うーん、スピデリにいたのに、皆知らないって言うしなぁ。…やっぱり、もうちょっと遠くの…小さな集落にも足を運ぶべきかな」

「――ん?君は…確か、スピード・デリバリーの」

「え?…あっ、フーディンさん!」


頭を悩ませているオオスバメの元へ、偶然現れたポケモン。

PPCの一員である、フーディンだ。

会社の設立は3ヶ月前とはいえ、フーディンはポケモンタウンで暮らしているポケモン。

駄目元でピジョットのことを訊ね、それを聞いたフーディンは、少しばかり考える。


「…ピジョット、か……それはこの間の、放火事件の犯人と言われている…?」

「うー、それもそうなんですけど、俺が言っているのは【スピード・デリバリー】に所属していたピジョットのことを知らないか、ってことなんです」

「スピデリのピジョット…か。……私もよくは知らないのだ、すまないな」

「そうですかー…」

「いや、だが…待てよ。……ピジョットと言えば…」

「何か知っているんですか!?」



オオスバメは、フーディンの言葉に希望を見出す。

きらきらとした純粋な目に、フーディンは多少気圧されながらも…

小さく頷くと、話を始めていた。


「放火犯のピジョットなのか、君が探しているピジョットなのかは分からないが……【芽吹きの森】の近くに、小屋を建てて暮らしているピジョットがいるようだ」

「きっとその人だ!」

「本当にそうなのかは分からないし、今もそこにいるのかは…私も知らないがな」

「でも、今までで一番有力な情報ですよ!ありがとうございます!!」


オオスバメはフーディンに礼を言うと、【芽吹きの森】まで飛んでいく。

それを見たフーディンは、フッと笑いながらPPC本部に向かおうとしていた…

だが。

――そんな彼を物陰から見ていたのは、バンギラスだ。

そんな彼の後姿に気付いたリザードンは、牛乳瓶を片手に持った状態で、訊ねる。


「……」

「バンギラス、お前何してんだ?」

「…お前こそ何してるんだよ」

「何って、牛乳飲んでる。やっぱ1日1本は飲まないとな!」

「まあいい。――お前、ちょっとオオスバメの後を追ってくれないか。嫌な予感がする」

「へ?オオスバメ……って、――間に合うわけないだろ【神風宅急便】と影で噂されているあのオオスバメに!?」

「気合い入れて飛べボケ!無理なら俺が殴り飛ばす!!」

「あっ、すいません自分で追いかけます!某ロケット団のように『やーなかーんじー』はしたくないであります!!」




その頃…

【雪花屋】にムクホークが駆け込むが、そこにいたのはコータスとオニゴーリ、オオタチのみ。

ヘイガニとギャラドスは大工の仕事。

セレビィは立ち寄り所での受付の仕事。

そして、一番いて欲しかったジュプトルは…【ブレイブス】の一員として、ピカチュウやミロカロスと探検隊の仕事に向かっていた。

確かに借金などの事情がある以上は、探検隊として働いて返さなければならないのも仕方がないのだが。

ムクホークは「どうしよう」とかなり焦っている様子で、オオタチが訊ねる。


「どーしまーしたー?」

「そっ、それが…オオスバメ先輩が、もしかしたらファントムに殺されるかもしれないって…」

「…何だと!?」

「それ、本当なんですか?」

「よく分からないけど、ヨルノズク所長がファントムに脅されたみたいで。それで、オオスバメ先輩が危ないって…」


敵がオオスバメを狙う理由。

彼はオニゴーリやギャラドスと同じく、ゲートの一人なのだ…

オオスバメを絶望させるための策があるとコータスは思っていたが、オニゴーリはそう思っていない。

…そもそも、あのオオスバメが簡単に絶望するはずがないのだ。

少なくとも、策を何重にも構えただけではオオスバメは絶望しない。というか、多分無理と言うのが周囲の認識。

――だがもしも、【絶望させる】以外に使い道があるとすれば?


「…もし本当にそうだとしても、だ。【ブレイブス】は今日、【ビリビリ山岳】で合計3つもの依頼をこなしに行った……すぐには帰って来れないぞ」

「そういえばこの間、『依頼はなるべく同じものを取ったほうが、それだけランクも速く上がるしジュプトルの性格にも合ってる』とヘイガニさんが教えていましたから…それを実践しに行ったのかも」

「ミロカロスさんも、今度はピカチュウに“10万ボルト”を覚えさせるって意気込んでたしねー」

「じゃ、じゃあ、先輩は…!」

「落ち着け!……とりあえず、お前はリザードンとバンギラスに伝えに行け。俺とオオタチはあいつを探しに行く、コータスはここに残って…戻ってきたジュプトルに今の話を伝えろ!!」

「分かりました!」






〜〜〜






【芽吹きの森】。

その付近にある小屋を探そうと、オオスバメは空を旋回していた。

そして…

森の入口から少し離れた場所に、ぽつんと建てられた小屋。

もしかしたらあれかな、と思ったオオスバメは左に体を傾け、小屋に向かう。


「……あのー、ピジョットさん…いますかー?」


返事がない。

やはり、警戒されているのだろうか。

「やっぱり菓子折りを持ってきたほうがよかったかな」などと暢気なことを思っていると、ゆっくりと扉が開く。

…そこにいたのは、白いシーツで体を覆い隠すピジョットの姿。


「……なんだ、お前は」

「ええと…たぶん、一度以上は会ってると思う。……スピード・デリバリーの…」

「ふん、スピデリの配達員が何の用だ」

「あの、あなたは、…フェニックス……なんですよね?」


フェニックス、と呼ばれ、ピジョットは目を見開く。

『何故知っている』

そのような目でオオスバメを見ており、オオスバメはどうして何も言わずにヨルノズクの前から姿を消したのか、訊ねていた。



「…それを知っているってことは、お前、……指輪の魔法使いの仲間か…!」

「ええと、今日はその用事で来たんじゃなくて。いやそれもあるんだけど。――どうして、ヨルノズクさんの前から姿を消したんだ?」

「…。……俺が化け物になった、なんてあいつが知ったら…どう思う?」

「それは…、……でも、凄く心配してるよ。せめてヨルノズクさんに会って、嘘でもいいから姿を消した理由を言ってくれ!…そうじゃないと、可哀想だよ」


『知らないほうが幸せ、ってよく言うでしょ』

以前のオオタチの言葉が、オオスバメの頭の中に蘇る。

…確かに、知らないほうがいいのかもしれない

…だけど、友達同士なのに離れ離れになったままなのは

…ファントムに言っても通じないかもしれない、それでも、ちゃんと自分の口で説明して欲しい


「世の中には、知らなければいいことなんてたくさんあると思う…だけど、真実は隠し続けてもいつか知られるものなんだ。それが、どんな形であったとしても」

「……」

「だから、ヨルノズクさんと話をしてくれ。無理だったら、俺が君の気持ちをそのまま伝える…何でもいいから話してくれ」

「――5ヶ月前だった、俺は…俺を生み出したゲートは、事故に巻き込まれて翼をやられた………こんな風にな」




ドスリ、と鈍い音が響く。

オオスバメは一瞬、何が起こったのか分からなかった。

――だが、気付けば目の前のピジョットはフェニックスとなっていて

――自分の左の翼には、大きな剣が突き立てられていて


「……ああああああああああああ…!」

『お前、本物の馬鹿か?まさか本当に、こんな作戦に引っかかっちまうなんてよぉ』

「作、戦?」

『お前は古の魔法使いを呼び出す、餌だ。まあついでに、ファントムを生み出せれば万々歳って奴だな』


フェニックスはそう言うと、カタストロフを抜き、オオスバメを蹴り飛ばす。

その拍子に古い木の壁は壊れて外に投げ出される形になったが、翼を傷めている今のオオスバメでは、空を飛んで逃げることはできない。

フェニックスはその炎で“罠”に使っていた小屋を燃やすと、ゆっくりと歩きながらオオスバメに言い放つ。


『お前は騙されてたんだよ、あのヨルノズクにな』

「ヨルノズクさんに…?……なん、でっ」

『さあな?しっかしお前も、ヨルノズクには騙されて…配達員の命でもある翼を傷つけられて、ホント馬鹿じゃねぇか』

「…」

『どうせなら、その翼一本切り落として…完全に絶望させてみるか?』



<シックス! バッファ、セイバーストラーイク!!>



フェニックスの背中から、猛牛のオーラが襲い掛かる。

しかし、フェニックスは1〜2発はそれを食らった者の、残りの4体の突進は総て焼き切る。

…そこにいたのは、バッファマントを装着したビースト。

オオスバメを追いかけた先にフェニックスがいると知り、ビーストは憤りを隠せない。


「フェニックス…テメェ……!」

『おっと、もうお出ましか。今日はテメェと遊ぶために来てやったんだ、ありがたく思いな』

「…ゴウカザルの仇…今日こそ取る!」

『テメェなんかにやられるかよ!』


互いにぶつかり合う、フェニックスとビースト。

カタストロフとダイスサーベルによる激しい剣戟が繰り広げられ、どちらも一歩も退かない…

しかし、パワーは圧倒的にフェニックスのほうが強い。

次第にビーストのほうが押され始め、フェニックスは調子付いたのかビーストを挑発する。


『どうした?意気込んでおいてその程度か!』

「…うおおおおおおっ!」



バッファマントの頭部から突っ込むビーストだが、余裕でかわされる。

そして、フェニックスの横を通り過ぎた瞬間、炎タイプの彼だからこそ分かる…熱量の異常な発生を感じ取っていた。

すぐさま背後を振り返るが、――遅かった。

フェニックスは巨大な炎の翼を広げ、その炎がビーストに襲い掛かる。

直撃の寸前にドルフィマントに変え、水飛沫で防御を試みるが…焼け石に水。

ビーストは地獄の業火とも言える炎に焼かれ、そのまま変身を解除していた。


「が、あ…!」

『古の魔法使いの丸焼き、一丁あがりってか?』

「リ、ザー…ドン……」

『――貴様にはまだ仕事がある』

「!」


オオスバメの背後に現れたのは、…ベルゼバブ。

彼はそのままオオスバメをどこかの空間に連れ去り、姿を消していく。

「あいつまだ何かする気かよ」とフェニックスは呆れていたが、まずはリザードンを潰すことが先決だと思ったか、カタストロフを構える。


『あばよ、地獄のライフを満喫してきな』

「ぐ…!」


…こんな所で死ぬのか

…俺はまだ、ゴウカザルの敵を討てていない

…グレムリンとすら邂逅していない

…まだ死ぬわけには、いかないってのに…!



リザードンに振り下ろされる剣は、直前の所で凍りつく。

その間にリザードンの尾を引きずり、抱え上げる者がいた。

氷を融かしながらフェニックスが攻撃の放たれた場所を見ると、――そこにいたのは…オニゴーリと、“エキサイト”を使用したウィザード・ハリケーンドラゴン。


「チッ…“絶対零度”でも、あの程度しか凍らせられないかっ!」

「相当、フェニックスの力が強くなっているようだな…」

「お、まえら…」

『邪魔しに来やがったのか、指輪の魔法使い……まあいい!お前ごと燃やしてやらぁ!!』

「……生憎と俺は、お前に付き合う気はない…要救助者のオオスバメがいないなら、尚更だ!」

<チョーイイネ! サンダー、サイコー!!>


“サンダー”の魔法が地面に炸裂し、大きな砂塵が舞う。

フェニックスが何とか視界を確保しようと剣を振るうと、……既にウィザードHD達の姿はない。

空を見ると、リザードンとオニゴーリを抱えあげた状態で、猛スピードで飛び去っていくウィザードHDの姿。

「逃げんな」とフェニックスは憤りながら追いかけようとするが、それを止めたのは、ベルゼバブだ。


『まあ待て、真の狩人とは…獲物が来るのを待つものだ』

『あぁ!?』

『そのために、あのオオスバメを使う。…負傷した人質がいれば、奴らも従わざるを得ないだろう』

『……チッ、しょうがねぇ…だが、今度こそ殺してやる…!!』




状況を冷静に判断し、撤退するウィザードHD。

しかし…

リザードンは空中で暴れ始め、「煩い」とばかりにオニゴーリが氷の礫をぶつけていた。


「…離せッ!俺は…俺は、ゴウカザルの仇を……ッ!!」

「おい、暴れるな!リザードン!!」

「黙れ!」

「――黙るのはお前だボケ!!」

「ごっふ!?」


ガゴン、と頭に氷塊をぶつけられたリザードン。

「できれば館長も暴れないでくれ」

ウィザードHDは正直そう思っていたが、…オニゴーリ相手に言えるはずもなく。

リザードンもオニゴーリも、ウィザードHDに抱えられた状態で、口論をしていた。


「あ、あだだ…何すんだ館長!?」

「フェニックスは死と再生を繰り返し、そのたびに強くなるファントムだ…今のお前の力で勝てると思ってるのか!」

「……だが!」

「それに!――お前があの時優先すべきだったのは、仇を取ることじゃない…オオスバメの救出だった!!……個人的な恨みに囚われる前に、今助けるべき奴のことを考えろ…それが探検隊だろうが!!!」

「…!」



オニゴーリの言葉に、ようやくリザードンも頭が冷えたようだ。

…あの場でオオスバメを助けられていれば、状況は変わっていただろう…

しかしそれを果たせなかったことで、不利な状況を覆せない。

オオスバメを助け出すには、敢えて相手の術中に嵌るしかなくなるのだ。

それ以前に、リザードンはフェニックスを目の前にして、冷静な判断を失ったどころか『困っている人のために』という理由でゴウカザルと探検隊を結成していた…自分自身を否定したことになる。


「…、……すまねぇ…」

「すまねぇで済んだら保安官やジュプトルは要らないんだよ。……相手の出方を覗うしかないんだ、まずは【雪花屋】に戻るぞ」

「ちょ、館長、…俺とばっちり…!」


“何で俺まで”

そう文句を言いたいウィザードHDだが、…オニゴーリ相手に文句を言えるはずがなく…

仮面の奥で泣きながら、【雪花屋】に向かっていた。






***




結論:余計なことに首を突っ込むとこうなる

…オオタチに言われたばかりだろ、オオスバメェ…!


フェニックス、三歩歩けば忘れる鳥頭を発動!

…ではなく、テディスと言うファントムの仕業みたいですねぇ。

どういう能力かはさておき、テディスは後々出てきます。

何か、フェニックスとベルゼバブがフラグを立てているような…メデューサも気付きつつあるみたいですし。



脅されたとはいえ、ヨルノズク所長も上手い嘘考えるなぁ…

そりゃオオスバメも騙されるよ。

しかし、子供を人質に取るベルゼバブも…非道ですわぁ……

ライッターでもあった、リザードンの牛乳ネタw

ちなみに、学校とかでよく見る牛乳瓶1本分飲めればいいみたいです。彼。

…その割にはカルシウム足りないなw

いや、バンギラスや館長のほうが圧倒的に足りてないけど…


ジュプトルがエキサイトをしていた理由→リザードンとオニゴーリを抱えるんだぞ、エキサイトしないと持ち上がらないだろうが…!

ちなみに、ジュプトルは何とかムクホークが見つけ出して事情を説明→ジュプトルだけ依頼そっちのけで飛んでいく→館長と合流して一緒に探す…と言う感じです。

え、何で館長連れてきたんだって?

……館長の、対ファントム戦における逃走確率が100%だからだよ……!

後、ファントムと対峙して生き残れる確率も100%。




次回はフェニックス戦…決着!

(ちなみに、タイトルに【フェニックス、最後の作戦】とあるのに作戦の大半はベルゼバブじゃねぇか、というのはスルーする方向で)