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タイトル未設定 - 11話:俺の希望

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11話:俺の希望

Episode2 戦う理由
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生まれた時から、世界は真っ暗だった。



止まった時間、止まった世界の中で、ずっと一人で暮らしてきていた。

色のない世界。

太陽のない世界。

風も感じられない世界。

そんな世界の中で、当然ポケモン達の心も荒みきり、今以上に治安は悪かった。

ポケモンより生命力で劣る人間も徐々に数を減らし、その数は100人にも満たないほど少なくなっていく。


“彼”も、生まれた頃から真っ暗な世界しか知らない。

明けることのない夜、変わることのない景色。

…それでも、“彼”が自分を保っていられたのは、当人でも分からない。

だが…

草ポケモンであるが故か、光のない…生命の息吹すら感じられない森に住むのは、多少応えていた。

家族はいない。

この世界に耐え切れず、狂って、そのままどこかへ行ってしまった。

友達もいない。

森に住むポケモンの大半は心が荒んでおり、むしろそんな彼らから身を守るので精一杯だった。



だからだろうか。

ある日出会った、人間の少女との出会いには…

心が、救われていたのは。





「――ヘイガニ、どうしたの!?」

「って、ウイッ…ジュプトル!?一体何が…!」

「オオスバメさんまで…ヘイガニさん、一体どうしたんですか!?」

「……どうしたもこうしたも言ってる場合じゃねぇ!ピカチュウとコータスはオレンの実とオボンの実…ついでにチーゴの実を持って来てくれ…ヤミラミさんは止血準備!!」


ジュプトルとオオスバメを担いで、【雪花屋】にやってきたヘイガニ。

これには、部屋にいたピカチュウ・コータス・ヤミラミも驚くしかない。

『一体何があった』

あまりの事態に、彼らはこう言うことしかできなかった。

特にジュプトルがここまで酷くやられるなど、予想もしていなかったのだろう。

ヘイガニはヤミラミが持ってきた包帯をオオスバメの翼に巻きながら、説明していた。


「…ヤバいファントムが出たんだよ。それも、セレビィの話じゃ【スピード・デリバリー】のポケモンが…所長のヨルノズクさんを除いて、全員やられた」

「「!?」」

「そ、そんな…。でも、よくジュプトル達を連れて逃げられたね…?」

「…館長が時間を稼いでくれたから」

「オニゴーリさんが!?」



その言葉に一番驚いていたのが、コータスだ。

ジュプトルとオオスバメの火傷を見るに、相手は炎を使うファントムであるのは分かる。

相性上、炎に弱いオニゴーリがそのファントムと戦ったらどうなるか…

コータスは今すぐ行こうとするが、ヘイガニに止められてしまう。


「そんな…っ、今すぐ助けに行かないと!」

「落ち着け!今から言ってもコータスの足じゃ間に合わないし、何より足手まといになるのは自分で分かってんだろ!!」

「ですが!」

「あの人がそんな簡単に負けるか…だから、今、自分にできることをしろ!館長なら絶対そう言う!!」

「ウイィ…ヘイガニの言うとおりだ、コータス。気持ちは分からなくもないけど、まずはジュプトル達の手当てが先だ」

「……分かりました」


ヘイガニだけでなくヤミラミにも言われ、コータスは少し冷静さを取り戻したようだ。

そんな中、ピカチュウはジュプトルに包帯を巻きながら、考えている…

しかし今はそんな場合ではないと思い直し、手当てに専念していた。






〜〜〜






――【スピード・デリバリー】本部前では、激しい戦いが行われていた。



フェニックスとオニゴーリが、今もなお戦い続けている。

本来なら炎と氷、オニゴーリのほうに分が悪い戦いでしかない…

現に氷技の大半はフェニックスの放つ炎で解かされ、まったく効き目がない。

しかしそれでも食い下がれるのは、鬼館長だからか。


(…時間稼ぎは充分にできた、後は、どうやって逃げるかだな…)

『おらおら、考え事をしている暇はないぜッ!』

「……チッ!」


向かってくるフェニックスに、オニゴーリは盛大な舌打ちをしながらも、水の波動を放つ。

オニゴーリのみならず、氷タイプのポケモンの弱点は格闘・炎・岩・鋼と多い。

しかし格闘タイプ以外は対策が取りやすい。鋼や炎には“地震”を使えばいいし、炎と岩を相手にする際は“水の波動”がいい。

だが【依頼人を所定の場所に連れて行く】タイプの依頼がある以上、地震は探険家の技としては不向き…

その上、鋼タイプはその大半が地面や岩タイプを持っていることから、オニゴーリは“水の波動”のほうを選んだ。


『――ほぉ、水技持ってたのか。ちょっとは効いたが…倒すには至らねぇな』


しかし、フェニックスの前に…それはあまり効果はない。

恐らく相手は相性など関係なしに、強い。

それも、まるで幹部格…と言ったほうがいいぐらいに。

「参ったな」と思いながらも、オニゴーリはこの場から逃れる手段を考える。

相手の最大の攻撃に合わせて、絶対零度を放つ…そうすれば大量の水蒸気が発生し、相手の視界を奪っている間に逃げられる。




だが…



『――そこまでよ、フェニックス』


突然フェニックスを制止する、女の声。

…メデューサだ。

メデューサを見たフェニックスは気だるそうな様子を見せ、オニゴーリは警戒を続ける。

しかし、次の瞬間メデューサが頭の蛇を伸ばして捕まえたのは……フェニックスだ。


『おいっ、何しやがる!メデューサ!!』

『何をしている、と言いたいのはこっちよ。……あなたは大事なゲートを2匹も潰す気なの?』

『あぁ!?』

「…仲間割れか…?まあいい、今のうちに…!」


フェニックスとメデューサが言い争いをしている間に、オニゴーリはその場から離れる。

「待て」とフェニックスは吼えるが、そんな彼を制止するかのように、メデューサは彼から魔力を吸い取り始める。

魔力の吸収は半分程度で済ませ、フェニックスを地面に叩きつけると、見下すような目で彼を見ながら言い放っていた。



『が…ッ!』

『指輪の魔法使いに不必要に手を出すな、と言うワイズマンの指示を忘れたの?……それに、さっきも言ったけど…あなたゲートを2匹も潰す気?』

『煩せぇ!何をしようと、俺の勝手だ!!…第一ゲートを見れるのはお前だけなんだ、誰がゲートかなんて分かるわけあるか!?』

『…だから、目的もなく暴れるなと言っているのよ…今度は完全に魔力を吸われたいの?』


メデューサは頭の蛇をフェニックスに向けながら、言い放つ。

これには、流石のフェニックスも従うしかない…

その一方で、あの場に誰がゲートとして存在していたのか。

それが気になったフェニックスは、メデューサに尋ねていた。


『で、…お前の言う2匹目のゲートって何なんだよ。1匹目は分かってる、あのオニゴーリだろ』

『あなた、指輪の魔法使いが来る前に打ちのめしたポケモンがいるでしょう?……あれがもう1匹のゲートよ』

『ってことは、――あのオオスバメ…ゲートだったのか!』

『そういうこと。……言っておくけど、あのオオスバメを絶望させるのは不可能に近いわ…オニゴーリのほうは心の支えが何か分かればそれでいい、だけど』

『―――分かってねぇなぁ。あいつ、配達員だろ?……だったら翼をへし折ればいい』



フェニックスの言葉に、メデューサは訝しげな顔をする。

確かに、仕事を生きがいとするオオスバメにはダメージを一番与えられる方法だろう。

だが、フェニックスを前にしても「じゃあね!」と立ち去るあのオオスバメが、それで絶望してくれるのか…

メデューサはそんなことを考えながらも、同時に、どうにかして一度フェニックスを懲らしめられないか考えていた。

となれば、やはりウィザードに一度倒してもらう他ないのだが……今のウィザードに、彼を倒す手段はない

――いや、あった。

1つだけ…彼の中にいる、ドラゴンの力を活性化させる、あの指輪。


『…分かったわ。だったら、あのオオスバメを絶望させてみなさい……そうしたら今回の件は、ワイズマンには報告しない』

『話が分かるじゃねぇか。――魔力が回復したら、すぐ絶望させに行ってやるぜ』


…せいぜい頑張りなさいよ…

メデューサは心の中でほくそ笑みながら、踵を返し立ち去っていた。






〜〜〜






オニゴーリが【雪花屋】に戻ってきた頃には、セレビィやオオタチも集まっている。

ジュプトルとオオスバメの手当ては無事に済んでおり、後は回復を待つのみ…

彼が無事に帰ってきたのを見たコータスは号泣し、ヘイガニはそんな彼女を宥めながら、オニゴーリに尋ねていた。


「館長、…どうだった?」

「どうもこうも、ありゃまともに相手するのもまずいな。乱入してきたメデューサって奴もだが」

「「「…」」」

「でも本当に、よく無事に帰ってきたね館長…」

「ああ…といっても、仲間割れしている隙に何とか逃げたからな。……たぶんフェニックスは何らかの形で暴れたくて仕方がなかった、そして…メデューサはそれを止めに入った」


オニゴーリの推測に、オオタチもうーんと考える。

そうしていると…

何かを思い出したコータスが、オニゴーリに訊く。


「そういえばオニゴーリさんも、ゲートでしたよね…それで止めに入ったのでは?」

「あっ、そうか!」

「それだったら納得いくな」

「それもあるんだろう、が…どうも引っかかるんだ。メデューサは『ゲートを2匹も潰す気か』と言っていた…つまり、まだゲートはいたんだろう」


誰かは分からないけどな、と呟きながらオニゴーリはジュプトルを見る。

傷はある程度治っているが、精神ダメージのほうはどうなのだろうか。

あの負けず嫌いなせっかちがこのまま折れるはずがないとは思うんだが…と思っていると、そのジュプトルが突然起き上がっていた。



「…!あの焼き鳥……ッ!!」

「あ、ジュプトル!」

「ジュプトルさん、まだ寝ていないと駄目よ!…フェニックスに相当やられたんでしょ?」

「そして焼き鳥はむしろ、火炎球を持ったオオスバメのことを言うぞ」


意識を取り戻したジュプトルは、傷の痛みで顔を顰める。

そんな彼に、ピカチュウとセレビィはまだ横になっているよう告げ…

ヤミラミの謎ツッコミに、「この現状において、冗談じゃ済まされないこと言わないでくれ」とヘイガニに呆れられていた。

一方で…

ジュプトルは再度横になり、天井を見ながら呟いていた。


「――そうか、俺は…負けたのか」

「「「…」」」

「まぁいい。…それよりも、何とかしてあいつを倒す方法を見つけないと……被害が広まる一方だ」

「で、でも、一体どうやって?」

「そうよ…ジュプトルさんが勝てない相手なら、どうしようもないじゃない!」

「……あ、そのことなんだが…ジュプトル。例の魔宝石の指輪、完成したぞ」

「本当か!?」


ヤミラミの言葉にがばっと起き上がるが、その際に傷口が傷み、「何やってんの」とピカチュウに怒られる。

すまんと謝りながらも、ヤミラミは出来上がったばかりの指輪を見せていた…

そこにあったのは、緑の魔宝石の指輪。

1つは雷を意味する魔法リングで、もう1つはパッと見はハリケーンリングに近いが…所々違う。




「これは…ハリケーンリング?いや、……微妙に形が違うな」

「俺の推測だけど…これは恐らく、ハリケーンの上級リングだろう。感じが、今までとまったく違っていたからな」

「それなら、きっとあのフェニックスにも勝てるかも!」

「そうね…それしかもう、あいつを倒せる手段はないかも…」

「――待て、ピカチュウにセレビィ。……確かにこれは今までにないほど、強力な魔宝石でできている…だが、その分嫌な予感がするんだよ」


嫌な予感がする、というヤミラミの言葉に、ピカチュウは首を傾げる。

だが…

ヘイガニやコータス、オニゴーリは思い出したのだ。

この指輪を作った魔宝石を送ってきた…ヨノワールの言葉を。

『お前の中にいるファントムは、今もお前を内側から食らおうとしている』

『この力は、ひょっとしたらお前の中のファントムに、その“機会”を与えてしまうものかもしれない』


「……そうか、魔宝石を送ってきたヨノワールの手紙に書いてあった。この魔宝石で作られる指輪は、諸刃の剣かもしれないって」

「つまり…ジュプトルさんが絶望して、ファントムになる可能性が高まるという…こと、ですよね」

「というか、中のファントムの力を活性化させ…そいつの魔力をフルに使える代わりに、ファントム自体の力も高めてより一層表に出て来やすくする……ってところだろうな」

「あ…」


ヘイガニ達の意見を聞いたピカチュウは、考え直し始めていた。

確かにこの指輪の力を借りれば、ウィザードは更に強くなるかもしれない。フェニックスを倒せるかもしれない。

だが…

その分、ジュプトルに後戻りが利かなくなってしまうのだ。

それこそコータスやオニゴーリの言うように、彼の中にいるファントムを出て来やすくするほどの…

しかし、ジュプトルは……



「――現状、俺の魔力で敵う相手じゃないのは確かなんだ。それを倒せる希望があるなら、多少のリスクは仕方ない」

「い…いいの!?だってそれって、ジュプトルが…ジュプトルがファントムを生み出す可能性が、増えるって事だよ!!?」

「それでも構わん。…それに俺は、簡単にファントムに食われるつもりはない」

「…なんでだよ!何でお前が、そこまで頑張らないといけないんだよ…魔法使いだからって言うんじゃないだろうな!?」


ピカチュウとジュプトルの言い争いに、ヘイガニが割って入る。

その言葉に、オニゴーリやコータス、ヤミラミも納得した様子で頷いていた…

魔法使いが今のところ、ジュプトルと…オニゴーリが出会ったことのある白い魔法使いの2人しかいないこともある。

だが、2人もいるならジュプトルが無理にフェニックスに勝つ必要はないのでは。

ファントムを生み出す危険性を孕んでいる以上、無闇に使わないほうがいい。

そう説得しても、ジュプトルの意志は固い。

そこまでして戦おうとする彼に、誰もが複雑そうな顔をしていると…

意識を取り戻し、話を粗方聞いていたオオスバメが尋ねていた。


「―――そうまでして、この世界を守りたい理由があるの?」

「「「うわオオスバメさん起きてた!」」」

「スバッと起きましたー。…で、実際どうなんだ?それって……ジュプトル自身の希望に繋がっていて、だから…えーと……半年前の変な儀式の時も絶望しなかった、って思うんだけど」

「……」


オオスバメの意見に、ジュプトルは顔を歪ませる。

…当たっているのだ。

館長ならまだいい、ヘイガニは分かる、コータスなら許せる、ピカチュウなら素直に驚く、セレビィとヤミラミは…たぶん知っているので当然だとは思う。

だが、他でもないオオスバメに言われるのは、複雑な部分があるのだろう。オオタチもだが。

しかし…

説明しなければ納得できる者達ではない(特にヘイガニ)。

そう思ったジュプトルは、素直に話し始めていた。


「――この世界は3年ほど前まで、太陽のない世界だった。それは…お前達も分かっていると思う」

「「「…」」」

「俺はキモリ時代、ずっと一人だった。あいつが…ミライが来るまでは」






〜〜〜






産まれた時から世界は真っ暗で、太陽の光を知らないまま育っていた。

時が止まり、世界の色は黒か灰のみ、死んだように静かな世界…

そんな世界で生まれたポケモンは、大半がおかしくなってしまう。心が荒んで、自分のことしか考えられなくなってしまう。

――まぁどっかのオオスバメみたいに、あんな世界でも前を向いて生きられる馬鹿がいなかったってことだ。

って納得するなピカチュウ。館長とコータスもそこ、同意するところなのか。

あぁもうヘイガニまで同意した…まあいい、とにかく俺の両親もとっくの昔におかしくなってどこかに行った…同時期に生まれたポケモンも、狂っていった。



家族もいない。

友達もいない。

生きる希望も何もない…もうじき自分も他の奴らみたいに狂い始めるだろうと思っていたところへ、一人の人間の少女が来た。

皆も分かっているだろうが、人間はポケモンより生命力が低い…だから時の止まった暗黒世界では、真っ先に絶滅しかかっていた。

つまり、――俺のところに来た少女…ミライが、人間最後の生き残りだったわけだ。


『あなたも一人ぼっちなの?』

『だったら、私と一緒だね』

『ねぇ、よかったら、私と友達になろうよ』


あんな真っ暗で、誰もが狂ってもおかしくない…光のまったく見えない世界にいながら、

何故だろうか…ミライだけは、眩しく輝いて見えた。

ミライも家族をすでに亡くしていて、友達も仲間も一切いない。

だからだろう。

俺はあいつに惹かれ、一緒にいることが多かった。

ミライはどこまでも真っ直ぐで、あんな世界にいても一度も絶望しなかった。前を向いて、必死で生きようとしていた。

そんなあいつに付き合っているうちに、俺もいつしか…前を向いて生きる力を、あいつから貰っていた。




俺は狂ったポケモン達から、戦う手段を持たないミライを守るために戦い続け、ジュプトルに進化していた。

そんなある日だった。

この世界を何とかしないといけない。そんな気持ちを日に日に強くさせていたミライが、こんなことを言ったのは。


『――ねぇジュプトル、私達で…こんな未来を変えられないかな』

『未来を変える、だと?そんな方法どこにある、それ以前に、もし仮にそんなことをすれば闇のディアルガやその配下のヨノワール達に狙われる。それどころか…』

『過去を変えた代償として、この世界は消滅する。未来の住人である、私達も……そんなの分かってるよ?』

『だったら!』

『だけど、だけど私は…この先、もっと先の未来で…私達と同じ思いをして生きる子達を作りたくない。だったらせめて、自分が生きているうちに……光を取り戻したい』

『…』

『それに、過去のポケモン達だって…自分達の未来が暗闇の世界なんて、絶対望んでない。彼らにとっての未来を守るためにも……私は、この世界を変えたい』


そう言い切ったミライの目に、迷いはない。

出会った時からずっと変わらない、真っ直ぐな瞳。

眩しいぐらいに真っ直ぐで、輝いて見えるミライの姿に、俺は暫く考えた。

…この暗黒の世界でこのまま暮らしていても、いいのかもしれない。ミライがいるのなら尚更…

…しかし、俺達はいいが、俺達の次の世代を生きるポケモン達はどうなる?

…そいつらはずっと暗闇の世界で生きることになる、ミライのようなパートナーに出会えないまま、止まった世界で狂っていく…



『世界を変えると言ったが、お前、先頭も俺任せで…戦う力も一切ないだろ。それなのに、よく言いきれるな』

『だって、何とかしたい気持ちは…ジュプトルも一緒でしょ?』

『――あぁ、お前みたいな向こう見ずを放っておくと、何をしでかすか分からない。……それに』

『それに?』

『俺だって、俺が生きている…その間にできることをしたい。俺もお前のように、命ある限り今の運命に抗い…成すべきことをしたい』


俺はずっと考えていた。

俺が生きている間に、一体何ができるのか?

何か、この世界のためにできることがあるはずではないのか。

そして…ミライと話して、俺の決意は固まった。

――俺は、これから先の未来で暮らすポケモン達のために、【生きている】実感を与えてやりたい。

日が昇り、世界中の時が動き始め、風が吹き、水が流れ、日が沈み、星が瞬き、そしてまた日が昇る…

自分達では得られなかった生命の営みを、生きている証を与えてやりたい。


『――俺は、これから先を生きるポケモン達に…太陽を見せてやりたい。生きる希望を…生きているという証を与えたい。…行こう、ミライ』




それから後は、セレビィとヤミラミなら分かるだろうが…

俺とミライは過去に行くための手段を探り、ヨノワールやヤミラミ達に襲われながらもそれを退け…

その先で出会ったセレビィの力を借り、過去の世界に向かった。

――その際、タイムワープの途中でこの世界を暗黒にした張本人であるダークライに襲われた。

そして、ミライは俺を守るためにその攻撃を受け…

俺達は離れ離れになっただけでなく、ミライはその時の影響で記憶を失い、更にポケモンの姿になっていた。

お陰で、最初ポケモンになったあいつと出会ったときは、単なる同じ名前だろうと思って戦ったこともあったが…

色々あって未来世界に戻った際、ヨノワールから話を聞いてようやく俺はポケモンのミライが俺の知っている人間のミライであると知った。


……それと同時に、未来を変えることを少し、戸惑ったりもした。

過去に来る前、俺達に失うものは何もなかった。

セレビィも、消える覚悟で俺達に力を貸してくれた…

だが。

過去に来て、記憶を失ったミライは…ポッチャマというかけがえのない仲間を得た。

もしも記憶を失ったミライが、そしてポッチャマが真実を知った時、――2人は悲しむのではないかと思ったりもした…

しかし、ここで迷えば居間まで俺達がやってきたことはすべて無駄になってしまう。

時の停止を食い止められず、闇のディアルガが誕生し、過去の世界は俺達の住む未来と同じ…暗黒の世界になってしまう。



そうして俺達は時限の塔に向かい、そこで俺は最後まで歴史の改変を拒もうとしたヨノワール達と戦った。

そこで、あいつとの戦いには勝った…

だが、ポッチャマが時限の塔に向かうための【虹の石舟】を起動している間に、ヨノワールは歴史改変の真実をミライに告げた。

当然、あいつは戸惑っていた。

そしてヨノワールは最後の力を振り絞り、ミライを消そうとしていた…俺はそれを庇い、自分を道連れにヨノワールごと時空ホールによって未来に連れ戻そうと考えた。

その際、時限の塔の崩壊を食い止めるのに必要な、【時の歯車】をミライとポッチャマに託して。

――もはや残された時間は少ない

――ミライとポッチャマに、総てを託す他ないだろう

――大丈夫だ。ミライも過去のポケモン達を…ポッチャマを守るために、最後まで戦うだろう

――あいつらはきっと俺の意志を継いでくれる


『じゃあな、ミライ』

『俺はお前に会えて、幸せだった』

『―――別れは辛いが…後は、任せたぞ』


――この戦いが終わった後直後に、お前達の別れが訪れることは胸が痛いが…

――お前達ならきっと、世界を救えるはずだ

――ミライ…ポッチャマ…

――お前達の存在が、何よりの希望なんだ






「……そして、俺はこの世界に戻って…色々あって、ヨノワールやセレビィと一緒にこの世界の闇のディアルガと戦うことになってな。その際、少しずつ朝日が昇り始めていた」


「ミライとポッチャマは、過去の世界を変えた。未来の世界に太陽を取り戻した」


「それと同時に、――未来世界の俺達は消滅を開始した…はずだった」



「何故かは知らないが、正気を取り戻したディアルガの話では…奴よりも強い力、時間の神よりももっと上の存在によって消滅せずにこの世界に残ることができた…とのことだ」


「その時に俺は確信した。――恐らくはミライも、消滅することなく…過去の世界で再び、ポッチャマと出会えているだろうと」


「時の破壊が起こることなく、平和な世界で…“今”を生きているのだろう」



「だから、……あいつらが命を懸けて救ってくれたこの世界が、今度はファントムによって脅かされている…」


「ファントムを倒すことができるのが、ミライとポッチャマが救ったこの世界を守ることができるのが俺だけなら……俺は命に代えてでも、この世界を守る」


「俺の希望は、過去の世界で“今”を生きている。だから俺も…あいつらが繋げてくれた希望を、この世界で生きるポケモン達の“今”を守る。そのためには、……ファントムに負けるわけには行かないんだ」




ジュプトルの話を聞き、ピカチュウやヘイガニ、コータスは深く黙り込んでしまう。

消滅現象云々に関しては、当時パニックが起きていたのも事実だったが…

“消えた”という事実は記憶の中になく、恐らく当事者でないポケモンの【消滅の記憶】は…ポケモン達の消滅を防いだ存在によって、無くなっているのだろう。

オオタチは一人だけ微妙そうな顔でジュプトルを見ながら、尋ねる。


「つまりジュプトルさんは、何があっても絶望しない…だから、半年前の儀式も耐えられたってこと?」

「そうなるな」


恐らくジュプトルもある意味ではオオスバメと同じ、『絶望する可能性が限りなく低い』ポケモンなのだろう。

彼の希望は…ミライとポッチャマは、過去の世界で、“今”を生きている。

彼らの存在がジュプトルにとっての希望なら、時間を超えない限りは彼の希望を壊すことは不可能…

しかし、そんな彼でもドラゴンの力をフルに使ってしまえばどうなるか。


「……ジュプトルの言いたい事も分かるよ。でも、だからといって、…ジュプトルがファントムになる道を勧めることはできないよ…」

「ピカチュウ」

「ジュプトル一人が犠牲になって、それで…それでミライとポッチャマは喜ぶの?」

「…」



その時だった。

雪花屋の外で、ドォンと激しい音が聞こえる。

何かを破壊する音…

もしかすれば、フェニックスがこの場所を嗅ぎつけたのかもしれない。

ジュプトルは舌打ちをしながら起き上がるが、ピカチュウは必死で止めようと説得を続ける。

だが、それでジュプトルが意志を曲げるはずもないのも、事実。


「駄目だよ!…ドラゴンの力を使わなくても、勝てる手段はあるはずだよ!!」

「悪いが、――相手は俺が魔力を高めるまで待っていてくれる奴じゃあない。こうしている間にも、たくさんのポケモン達が無差別に傷つけられていく…」

「……」

「ミライとポッチャマが悲しむからやらない、というわけには行かない。今ここで、あいつを倒せる可能性があるのが俺だけなら…俺がやるしかないんだ。お前だって、探検隊として…傷付いたポケモンを放っておけるか?それと同じだ」


その言葉に、ピカチュウは何も言うことができなかった。

フェニックスを止めるために雪花屋を出るジュプトルを見送りながら、オニゴーリはピカチュウや他の面々に言っていた。


「……あいつだって生半可な覚悟で戦っているんじゃない、って事だろ。現状、あいつしか勝てそうにないのも事実なんだ…だったら、あいつが勝てるように祈るのも俺達の役目だ」

「…館長…」

「信じろ。あいつは自分の中のファントムにも…フェニックスにも負けない、ってな」




一方で…

オオスバメはんー、と考えていた。



(魔法使いはジュプトルだけって話だけど、一応、館長が昔出会った人も魔法使いなんだよな)


(…なんでジュプトルと違って、表立って出てこないんだろう?)


(表に出てこれない理由でも、あるのかなぁ)






***




館長生き残った。

しかも手当てする必要がなかった。

館長本と何なの館長!←


何気にコー→オニなんですよねぇ。

スピンオフ(バレンタイン)の時も、微妙にそんな描写ありましたが。

そして館長も何気にコータスに好意向けてそうやな…

あの館長、コータスに関してはあまり怒らないし。

何気に確定した、4/1ネタの「オオスバメはゲートだよ!」。

フェニックスさん、いくらあんたでも無理ですわー!!!←

断言する。

あいつは半年前の儀式でも、絶対絶望しない!

……と同時に、絶望しない分…魔法使いの資格も一生得られませんがw それこそ、強制絶望ショーでもない限り…



ヤミラミwオオスバメに失礼ww

ピカチュウ・セレビィ・ジュプトル・ヤミラミ→暴走組

ヘイガニ・コータス・オニゴーリ→冷静組(ただしオニコーは若干怪しい)

オオスバメ・オオタチ→アイムフリーダム!

本当にメインパーティ、ヘイガニだけが苦労してますよね…今回、冒頭付近でコータス軽く暴走しましたし。

これでビースト組が来たらどうなるんだw


そして明かされる、(原作基準の)ジュプトルの過去。

ちなみに、ミライはキモリです。

昔のパートナーがジュプトルで、そのジュプトルを庇った結果が記憶を失った状態で、しかもキモリになってしまう…

なんと言う皮肉。

自分は基本的にキモリを選ぶんですが、何も知らないで時の探検隊をやってこの展開に噴いた覚えがw

あぁでもキモリ便利。ピカチュウと組めば最強に鬼畜な探検隊!←




次回は…

シャイニングドラゴォォォン!(違)