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タイトル未設定 - 35話:断片

📚 目次

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白い魔法使いが退散した後、ジュプトル達は一度、【雪花屋】に戻っていた。

そして…

自分達に突然襲い掛かってきた白い魔法使いに対し、疑問を募らせる。

敵か味方かはっきりしていなかったが、ジュプトルとリザードンを襲ったと言うことは、敵なのだろうか?

誰もがそう思う中、ピカチュウははっきりと断定できていない様子で、悩んでいた。


「…本当に、白い魔法使いって敵なのかな…」

「どうした、ピカチュウ」

「うん…何となく、本当に何となくなんだけど。……白い魔法使いは、ジュプトルというより…ジュプトルの中のファントムを倒そうとしたんじゃないかな、って」

「「「ジュプトルの中のファントム?」」」

「…ドラゴンか。だが、何故」


“ジュプトルではなくウィザードラゴンを始末しようとした”

そんなピカチュウの言葉を、誰もが信じられないと言ったような目で見る。

ピカチュウ自身も、はっきりそう断定できない以上は、曖昧に頷くばかり。

だが…


「……ジュプトルの中のファントムが、ファントム達の総大将…ワイズマンよりも強大な力を持って生まれてくる可能性があるって言ってたよね。それを阻止するために、って考えたら……そうなのかなって」

「俺を直接潰しに掛かる行為が、か」

「でも、それならエンゲージリングを使ったほうがいいんじゃ?」

「いや…無理だろ。どっちにしたってジュプトルは警戒するだろうし、だったら半殺しに留めてそれからエンゲージリングを使ったほうが……まだ確実だ」

「…」



ヘイガニやオニゴーリなども話す一方で…

リザードンは少し考えたような様子で、頭を抱えていた。

そういえば、ベルゼバブと戦っているときからおかしかったような。

そう思ったジュプトルはリザードンに訊ねようとするが、その前にバンギラスがリザードンに話をしていた。


「――ベルゼバブのことで考え事か?」

「いや、それもあるけど…大部分はあの白い魔法使いだ。……あいつ、お前にビーストドライバーを渡したって事は…この間行った遺跡の構造を知っていた上でお前に渡した、って事だよな」

「そうなるな。それが?」

「なんか腑に落ちないな…って思ってさ。お前が、そのベルトを気味悪がって捨てて…お前と何の関係もない、小柄なポケモンが拾うって事もありえたのに……どうして『お前がどの道ビーストに関わる前提で渡した』んだろうって思ってさ」

「……それだったら、青い魔宝石。あれも『必ずジュプトルの元に行く前提で』渡したように思えるな」

「それが本当だとしたら、…未来予知でもできるってことか?」


リザードンの推測に、オニゴーリも自分の時のケースを思い出す。

…日食の儀式の1ヶ月前、オニゴーリは白い魔法使いと接触していた……

その際、青い魔宝石を渡されて。

それがもし『ジュプトルの手元に必ず渡る』前提で渡されていたとしたら、――バンギラスの言うように未来予知ができているとしか思えない。

となると、白い魔法使いはエスパータイプのポケモンなのか?

誰もがそんな疑問を感じていると、ミロカロスがふと気になったのか、ベルゼバブについて話していた。


「…。『仕事がある』、ベルゼバブはそう話していたのよね?」

「ああ、そうだ。それが?」

「もし、その仕事がファントムとしての仕事と言う前提で話すなら…一体何をする気なのかしら」

「…確かに。白い魔法使いのことも気になるが、まずはベルゼバブだ」

「だけどベルゼバブって、空間を自在に湾曲できる能力を持っているんだよな?そんなのを相手に、どうやって…」




――そう。

今問題になっているのは、白い魔法使いよりもベルゼバブ。

正体がばれた以上は、PPCを利用することはできないと彼なら考えるだろう。

だとすれば、彼の手がかりを掴むには…ミロカロスが言うように『ベルゼバブが狙っているゲート』を突き止めるしかない。

それ以前に、ヘイガニの懸念している【空間湾曲】は非常に厄介…

前にそれでジュプトルとリザードンが戦いどころではなくなり、まとめて保護者の世話になっていたほど。

そうしていると、オオタチがローリングスライディングをしながら手紙のようなものを持ってきていた。


「オオタチさんたらお手紙持ってきたー!」

「「「お前マジ空気ブレイカー!」」」

「つか、その渡し方怖いだろ!そしてその歌の流れじゃ、お前が手紙を食べなきゃならなくなるぞ!!」

「それは美味しくないからご勘弁ー。と言うわけではい、差出人不明のお手紙〜」

「…またか。……今度は一体…」


ジュプトルがオオタチから手紙を受け取り、それを読むと…

驚くべき内容が書かれていた。

『ベルゼバブにワイズマンから下されたのは、あるポケモンを絶望させること』

『今日、海ではPPC主催のイベントがある』

『そのイベントに乗じて、ゲートを絶望させるだろう』

…明らかにこれは、ベルゼバブを陥れかねない手紙。

一瞬罠かとも誰もが思っていたが、「ファントムも一枚岩じゃないかもな」というヘイガニのぼやきに誰もが納得していた。

そもそも、ファントムが本当に一枚岩だとしたら、ゲートを有効的に絶望させられる知恵を持ったベルゼバブを残すはずだ…ゲートを見極められる目を持った、メデューサ同様に。


「これがもし本当だとして、……どうベルゼバブを倒すかだな」

「ドラゴタイマーを使えば数で押し切れるとはいえ、やっぱりジュプトルに負担が掛かるからな…」

「そうですよね…白い魔法使いも、そのことを懸念していたようですし」

「「「…」」」

「――とにかく、行ってみないことには変わりないだろ」

「確かに。一歩遅れてゲートのファントムが誕生寸前、なんて冗談…笑えないからな」






〜〜〜






海。

そこでは、サーナイト保育所の子供達がわいわいと大はしゃぎで遊んでいる。

楽しそうに遊んでいる彼らを見て、サーナイトもギャラドスも嬉しそうに微笑む…

今日、海に遊びに行くことをオオスバメにうっかりバラしてしまい、『俺も行く病室やだここから出して』と喚いた時は……ギャラドスも相当困ったものだったようだ。

当然、要注意人物として見張りが常についているオオスバメは…その後すぐにラッキー達にとっ捕まえられていたのだが。

そうしていると、ウリムーやピチューが大はしゃぎでギャラドスに声をかける。


「おじさん!向こう、お店やってる!!」

「おいしそうなのたーくさんあったよぉ!」

「お、そうか。じゃあ、一緒に見に行くか……見に行くだけだぞ!」

「「「はーい」」」


そう言って、ギャラドスの長い胴体の上に乗りながら子供達が移動する。

そうしていると…

いくつもの店が立ち並んでおり、その種類と多さに子供達は目を輝かせていた。

わたあめ屋、射的屋、焼きそば屋、たこ焼き屋…

この屋台はPPCのプロデューサー達が企画を行い、必要があれば射的屋のように資金の援助もしていた。

所長であるルージュラが満足げに店を見ていると、遅れてやってきたフーディンに声をかける。


「あら、フーディン。遅かったじゃない」

「ええ…少し、取材を受けていたものですから」

「もうお祭りは始まってるわよ。あなた、確かクレープ屋の担当だったわよね。あそこ、かなり売れてるわよ〜」

「綿密な調査の賜物ですよ」



そう言いながら、フーディンはニヤリと笑う。

…周囲には魔法使い達はいない

…ゲートを絶望させるなら、今が好機でもある

そう言いながら彼はクレープ屋の様子を見に行く……その姿を、影でこそこそしながら見ているポケモンがいた。

ニョロトノ。PURIN-cesの元マネージャーであり、現在はプロデューサーとしての仕事がない。


(くぅ〜、所長に取り入っちゃってさあ。第一、何で僕だけ怒られて…ファントムなんて化け物をプロデュースしていたあいつはお咎めなしなんだよぉ!)


――そもそもあのアイドル対決の後、ルージュラに『ニョロトノが自分の趣味を押し付けたプロデュースをPURIN-cesにしている』という話がPPCで持ち上がっていた。

他にも似たようなことをしていた者はいたのだが、そんな彼らもここぞとばかりに弾圧側に回る。

恐らく、ニョロトノをスケープゴート…簡単に言えば身代わりにして、難を逃れようと言う魂胆だったのだろう。

お陰でニョロトノはルージュラに盛大に怒られ、しかしその一方で、ピクシー・ノートをプロデュースしていたフーディンは咎められることがないことに不満を感じていた。

そして…彼は考えた。

彼がプロデュースしているクレープ屋を台無しにして、自分と同じ気持ちを味わわせればいいと。


(クレープ屋は昨日の段階で、ちょっと細工をしたんだ〜。くふふ、あいつの困り顔を見るのが楽しみだよ〜♪)




ニョロトノの思惑だが、――フーディンには最初から気付かれていた。

むしろ、そのお陰で準備を進めるのに問題はなかった…と言ったところ。

ニョロトノが考えている“台無し作戦”は、屋台の脚の部分に少し切れ込みを入れ、雇ったピジョンの吹き飛ばしで屋台を倒壊させるというもの…

当然、客に危害を加えては駄目だという良心はあったのか、客が屋台の周囲にいない時に実施するようにしている。

だが、フーディンは既にそのピジョンをベルゼバブの能力で操っている。

風を起こすのは彼の意のまま…その一方で、ニョロトノが細工をし終えた後に別の細工をしていたのだ。


「――あれ?火が点かないなぁ…」


屋台を経営していたカイロスが、困り顔でガスの様子を見る。

もう空になっちゃったかな?とガスの様子を見ようとすると…そこへフーディンが声をかけ、そっちのほうに向かってしまう。

そうしていると、今度は屋台の近くにサーナイト保育所の子供たちがわらわらと寄ってくる。

食べることはできなくても、屋台に飾られている写真付きのメニューの彩のよさに心惹かれてしまうのだろう。

「見るだけだぞ」とギャラドスが声をかけるが、子供達は元気よく返事をした後、どのクレープが一番美味しそうか話している。


「僕ねー、オレンクレープ!」

「えー、モモンクレープがいいよー!」

「パイルクレープもいいよねー!」

「ったく…あいつら」

「でも、凄く楽しそう。買ってあげられないのは残念ですけど…」



『ターゲット』がやってきたのを見たフーディンはパチン、と指を鳴らし…

その瞬間、ガスボンベの中身が一気に噴き出してクレープを焼く鉄板に火柱が上がる。

更に、その瞬間ピジョンも吹き飛ばしを使い、炎の勢いが風で強まり屋台を一瞬で燃え上がらせてしまう。

想定外の展開続きで、ニョロトノが慌ててピジョンの待機場所に向かい、「何してんの」と叫ぶが…逆に翼で打つによる反撃を受け、気絶。

しかも、屋台はそのまま一気に崩れ落ち…子供達の上に落ちていた。

子供達の上に燃える屋台が倒れたことでサーナイトは気絶し、ギャラドスは慌ててハイドロポンプで消火活動をする。

――まさしく、一瞬の出来事。

いきなり屋台を台無しにされて愕然とするカイロスであったが、そんな彼以上に絶望の淵に立たされていたのは……ギャラドスだ。

子供達は全員軽い火傷を負っているか、意識を失っているかだったが…怪我をしたのは間違いない。


「おい、チビども!……おいっ!!」

「お困りのようですね」

「お前…ッ、頼むフーディン!今すぐこいつらを、診療所に!!」

「頼む相手が私でいいのですか?」


そう言いながら、フーディンはギャラドスの目の前でベルゼバブの姿を見せる…

ファントムの姿を現した瞬間、客や屋台のポケモン達は全て逃げ出してしまうほど。

ルージュラも、何が起こったのか分からず呆然として見ているばかり。

一方で、ベルゼバブは高らかに笑いながら、ギャラドスに言い放つ。


『もうお分かりでしょう?――この子達は、あなたのせいでこうなったということを』

「なん…だと…?」

『そう。あなたはゲート、そして、そのゲートを絶望させるために…何の罪もない子供を利用するのはごく当然のこと』

「お前……ッ!」

『それがファントムですからね。ああ、私を恨むのはお門違いですよ?恨むならば…子供達を傷つける原因たる、自分自身。あなたがゲートであるからこそ、こうして子供達が傷ついたのですよ』

「……俺、が」





俺のせいで、

――その瞬間、ギャラドスの中に亀裂が走り、絶望してしまう。

このまま魔法使いが来る前にファントムを生み出してくれれば、と思うベルゼバブであったが…邪魔が入らないとは限らない。

現に今、ジュプトルがマシンウィンガーから飛び出したかと思えば…生身ライダーキックを放つ。

しかし空間を歪ませ、ジュプトルが突っ込んだ先にあったのは焼けた屋台の残骸。

もしアレが突き刺されば、冗談抜きで痛い。

…だが、その前にリザードンがジュプトルの頭の葉っぱを掴み、砂浜に下ろしていた。

遅れてヘイガニやバンギラスといった面々も到着し、怪我をした子供たちと気絶したサーナイトを手分けして避難させる。


「ベルゼバブ、貴様!」

「…狙いはギャラドスだった、ってことか」

『邪魔が来ることは分かっていましたよ。あなた方は、我々ファントムの邪魔をするのが趣味ですしね』

「くそっ、ゲートが絶望していなかったら2人でベルゼバブを倒せたが…リザードン。お前はベルゼバブを」

「いや、――お前がベルゼバブを倒せ。俺がギャラドスのほうを助ける」

「リザードン!だが、……あいつはお前の」


仇だろう、とジュプトルは言いかけるが…それをリザードン自身が遮る。

ベルゼバブについての話は、向かう途中で聞いていた。

フェニックスだけでなく、まさかベルゼバブまでもがゴウカザルの死…そしてグレムリンの誕生に関わっていたとは思わなかった。

だからこそ、因果関係のあるリザードンがベルゼバブと戦うべきだとジュプトルは思っていたが…

『だからこそ』リザードンは、ジュプトルにベルゼバブを任せたかった。


「確かにあいつも俺の仇だ。だけどな、…お前がアンダーワールドに行っている間に倒せる保証はない、あいつの能力はお前も知ってるだろ」

「…ああ。だが、早めに済ませて共に戦うことも」

「その『共に戦える』自信がねーから言ってんだよ!……フェニックスの時はほぼ一騎打ちだったからよかった、だが、…こいつを前にしてお前とタッグで戦って勝てる自信はない。正直、今でも怒りが爆発しそうなのは事実だしな」

「リザードン…」

「だからお前が、ベルゼバブを倒せ。ギャラドスのことを思うなら尚更だ……今回のはオオスバメの時とはワケが違うって俺でも分かってるんだ!お前ならあいつを倒せる勝ち筋がある、それとも出し惜しみをして、ギャラドスやゴウカザルみたいな被害者を出したいのか!!」



リザードンの言う【勝ち筋】とは、…ドラゴタイマーのことだ。

確かに、ベルゼバブは先程の戦いでウィザード・ビースト・白い魔法使いの三人を相手に「少し厳しい」といっていた…

それは、2人だけなら軽くいなせるが、3人以上は苦戦するということ。

事実、ベルゼバブの空間湾曲にも限度というものは存在する…流石に多方面からの連続攻撃は、防ぎきれないのだ。

しかしそれは同時に、ジュプトルの中のウィザードラゴンを誕生に近づけることを意味する。


「…いいのか?ドラゴタイマーを使うということは…」

「お前の中のファントムが誕生する可能性がある、ってことだろ。――それならそれで構わねぇ、今できる最善の方法を取れなくてどうすんだよ。それこそお前絶望モノだろ」

「それはそうだが」

「安心しろ。――もしお前の中のファントムが生まれるとしたら…俺が責任を持って、食ってやる。エンゲージでゲートのアンダーワールドに行き来できるなら、魔法使いのアンダーワールドにだって行けるってことだからな」

「そうか。――分かった…ギャラドスは任せた」

「こっちこそ、俺が仕事を済ませるまでにベルゼバブを倒せよ!」

<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!>

<L・I・O・N、ライオーン!>


ジュプトルはウィザード・ハリケーンドラゴンに変身し、ウィザーソードガンでベルゼバブを狙撃・牽制する。

その間にビーストに変身したリザードンはギャラドスのほうに向かい、頭にある青い3本ツノ(?)の真ん中にエンゲージリングを嵌めていた。


「リザー…ドン……、…すまねぇな…お前も、俺のせいで……」

「あんたのせいだ?バカ言ってんじゃねぇ、これは俺が決めたことだ。誰のせいでもねぇよ」

「だが…」

「子供が事故に遭ったのも、あんたが絶望したのも、屋台が台無しになったのも全部ファントムのせい。……それでいいだろ、何も間違ってないんだから」

<エンゲージ、ゴーッ!>




そんな彼らの様子を、白い魔法使いは見ていた。

そして、何かを見届けた後すぐに立ち去ろうとしていたが…

突然がくりと膝を突き、その姿を見ていたペガサスがスキップしながら話しかける。


『――随分と大変そうだね?』

『貴様…、……あのオオスバメを介して魔宝石を渡させていた、張本人か』

『あったり〜』

『何を企んでいる?…しかも、上手く溶け込んでいるようだが』

『自分はファントムとウィザードの中立だからね。どっちが得か、考えている最中なんだ』

『そして、そのためならファントムの作戦に加担し…ハイパービーストリングとミラージュマグナムの在り処を教える、か』


うん♪と白い魔法使いの問いに答えるペガサス。

ペガサスにとっては、魔法使い対ファントムという構図は…自分にとって損か得かしか興味がない。

そのためなら、自分が握っているセイレーンの情報を渡すこともありえるだろう。

ペガサスはクスクスと笑いながら、白い魔法使いに尋ねる。


『でもさ、上手いこと考えたもんだよね〜。まさか、あんな場所にセイレーンを隠すなんて』

『…』

『でもね、一部のファントムはもう気付きかけているよ?セイレーンの正体が誰かにさ』

『……なんだと?』

『どうやら、テディスというファントムの記憶書き換え能力で、あんたが消したセイレーンの記憶を刺激する方法を取ってたみたいだよ。そして、それに反応を示したポケモンは…』

『――それ以上口を開けば、貴様から殺す』

『わー、それはやめてほしいなー。大丈夫、自分からは言わないよ〜これに関してはマジの大マジですから』


それだけ言うと、ペガサスは音もなく去っていく。

くっ、と睨みつけた後、白い魔法使いはテレポートで静かに去っていくが…

その会話の内容を物陰で聞いていたメデューサは、「やはり」と呟いていた。


『――やっぱりね。アレがセイレーン…意外も意外だわ』



一方で、ベルゼバブとハリケーンドラゴンの戦いは熾烈を極める。

グールを数体呼び出し、もう一つの操作能力で苦しめるも…

“コピー”でウィザーソードガンを増やしての、“サンダー”による稲妻回転斬りで一掃。

そして、その状態からドラゴタイマーを呼び出し、起動していた。


<セットアップ …ランドドラゴン!…フレイムドラゴン!…ウォータードラゴン!>

『ドラゴタイマーを使うか…それがどんなものか分かっていながら使うとは、愚かの極みそのもの』

「…それでも構わん」

「俺には守るべきものがある」

「そして、…共に戦う仲間がいる」

「だからこそ俺は、」

「「「「――絶望に負けたりはしない!」」」」


4体のドラゴンによる連続突きが、ベルゼバブを襲う。

そのうちハリケーンドラゴンとフレイムドラゴン、ランドドラゴンには攻撃が互いに直撃するが…

ウォータードラゴンだけは事前に“リキッド”と使っていたのか、別の分身からの攻撃が当たることはない。

更に、空間湾曲には空間湾曲とばかりに“コネクト”の魔方陣の中に尻尾を突っ込み、地面からそれが襲い掛かる。

それが攻撃の起点となり、フレイムドラゴンの胸にあるドラゴンの頭部が火炎放射を放ち、ランドドラゴンは地面からドラゴヘルクローで切り裂く。

ハリケーンドラゴンはキックストライクの体制に入り、更にもう一度“サンダー”を併用することで、暴風と雷を纏ったスクリューキックがベルゼバブに放たれようとしていた。


『ぐううっ!?』

「そして、――これでトドメだっ!」

『まさかっ…!だが、……私は役目を十分終えた…後は、―――ワイズマン…!!』


ベルゼバブはハリケーンドラゴンのストライクウィザードを直撃しつつも、最後に指を鳴らす。

しかし、それで消えるわけでもなく…

真正面から攻撃を受け、爆発していた。






〜〜〜






ギャラドスの中のファントム…ウロボロスとの戦いも、過激さを増すばかり。

最初は金の龍一匹だと思っていたのだが、尻尾が開いたかと思えば、銀色の頭部が露になる。

「やべぇ」とビーストはキマイラに乗って攻撃をかわすが、これだけでは勝ち筋はないに等しい…

そうしていると、キマイラは暢気に笑いながらビーストに声をかけていた。


『ほっほっほ。苦戦しておるようだな』

「キマイラ!」

『お前さん、荷物を結ぶときは蝶結びか?それとも、固結びかな?』

「あー、俺、前に勝手にバンギラス宛の荷物を開けて、それを誤魔化す時に蝶結びにしたら『スピデリの荷物は基本固結びだボケ』って殴られ…いや今それ関係ないだろ!?」


ビシィ!とノリツッコミを披露するビーストだが…

ふと、その言葉にヒントを得たかのように、キマイラを動かす。

二頭の龍は執拗にビーストを追い掛け回し、時にはミラージュマグナムで牽制しながら、“狙い”に沿って動く。

そして…

ウロボロスは互いが複雑に絡み合って固結び状態になり、身動きが取れなくなってしまう。

見ようによればそれは、でかい塊だろう。


「へっ、これじゃあわざわざ倒してくださいって言ってるようなものだな!」

<キックストライク、ゴーッ!>



ビーストはキマイラから離れると、キマイラは一度分解した後に再編成され…

巨大な鉤爪とも言える姿になる。

そして、ビーストの右足とドッキングすると、そのままウロボロスに向かって突撃。

大量の魔力がビーストドライバーに吸収され、ビーストが一息ついていると…

突然目の前にペガサスが現れ、「ハロー♪」と声をかけていた。


「どわっ!?…お、お前は!」

『ペガサスでーす。ねぇ、知ってる?自分は他の人のアンダーワールドに干渉して、その中を“見れる”んだ』

「…前にジュプトルやヘイガニから聞いたことはあるが、可能なのか?」

『モチのロンですばい。…気になるならついてきなよ、いいもの見せてあげるから』


そう言って、ペガサスは黒い渦のようなものを呼び出し、その中に飛び込む。

一瞬罠じゃないのか、とビーストは疑うが…

空気を読んだビーストキマイラが突き飛ばし、「キマイラてめぇぇぇぇ!」とビーストは吼えながら渦の中に引き込まれてしまう。

そして、尻餅を突きながら着いた先は…誰かのアンダーワールドの中。

ビーストが周囲を見回すと、崖の下にはこの場所に集められたポケモン達がいる。

その中にジュプトルがいるのを見て…ビーストは、声を上げる。


「ジュプトル!?…ってことは、ここはジュプトルのアンダーワールド…」

『違うよ?』

「どわっ!?…お、お前、いつの間に」

『さっきからここにいたよー。…このアンダーワールドは、ある人物のアンダーワールド……あ、そろそろ始まるみたいだね』




ペガサスがそういうと、反対側の崖から白い鳥のようなファントムが現れる。

――もしかして、あれがセイレーン?

ビーストがそう思っていると、太陽が月に食われ始め、それを見計らってセイレーンは歌い始める。

その瞬間、崖下に集められたゲート達は一気に絶望し…

一匹、また一匹とファントムを生み出してしまう。

太陽が再び顔を出すまでに魔法使いとして覚醒したのは、ジュプトルただ一人。

他のファントム達は誕生してすぐ、思い思いに散っていった。

あのファントムが儀式を起こしたのか、とビーストはその目にセイレーンの姿を焼き付けようとしていたが

……その背後から現れた存在を見て、目を疑う。


『……誕生した魔法使いは一人か』


セイレーンの背後から出てきたのは、――白い魔法使い。

そして、更に白い魔法使いはセイレーンに手のひらを向け、その瞬間彼女は崩れ落ちるように倒れる。

…まさか、あのファントムは操られていた?

…それに、あいつがあの出来事を仕組んでいたとしたら

…待てよ、じゃあ、以前会ったリザードマンが恐れていたのって

…白い魔法使いのこと――

しかし、その考えに至った瞬間、ビーストはアンダーワールドの中から追い出されてしまう。

恐らくはペガサスがそうしたのだろう。

誰のアンダーワールドだったのかはさておき、入った場所…つまりギャラドスのアンダーワールド経由で放り出されたビーストは、頭から砂浜に突っ込みつつ、何とかそれを自力で引っこ抜いて変身を解除していた。


「…死ぬかと思った!」

「大丈夫か?それにリザードン、ギャラドスのひび割れが収まってから随分時間が経っていたが」

「……その話は、後ででいいか?…ここじゃできない話だ」

「ああ…俺は構わないが」





その頃…

廃墟では、ワイズマンが目を細めながら“彼”を見ていた。


『ほう、目覚めたか』

『ああ。――ったく、ベルゼバブめ、フェニックスのように手当たりしだい暴れられては困るって理由とか言って、俺を暫く封印していやがった』

『封印とはいえ、眠っているだけで済んだのだからまだいいだろう?……“奴”に至っては、かなり厳重な封印の施されようだ…尤も、それをしたのは私だがな』

『…さっき見てきたけど、ありゃあえげつない。――俺も一応好き勝手やらせてもらうけど、ゲートはあんたから命令が下るまで狙わないぜ。ワイズマン様』


そう言いながら立ち去っていくのは、…グレムリン。

これまで、フェニックスのように必要以上に暴れては困る…という理由で、ベルゼバブによって眠りについていた彼。

しかし、自分がやられる間際にその封印を解除し、こうして解き放ったのだ。

だが、フェニックスよりは多少考えられる頭を持ち、――更に…メデューサほど強力ではないものの、ゲートをある程度までは見極められる目を持っている。

そんな彼を見て、ワイズマンはくすりと笑いながら…こう呟いていた。


『……程々にな』






***




転んでもタダじゃ起きないベルゼバブェ…!

白い魔法使いの謎が、かなり増えてきましたね…

ジュプトルの中のドラゴンが強い力をつけ、表に出ることを危惧する一方で…

大マジで儀式の発端だったとは……

しかもこの儀式、ジュプトル以外の被害者だとユキメノコとミズゴロウ確定してますからねw

これオニゴーリ知ったらマジギレってレベルじゃねーぞ…!


ニョロトノw

哀れ、ちっぽけな復讐心が大きな事件に…

ベルゼバブにとっては、細工に手間取る時間がなくてよかったんでしょうがw

それにしても、ホント抜かりのない奴ですよ。

そして、

…彼を失ったファントムサイド、これ以降ちゃんとゲートを絶望させられるのかなー…←

セイレーン復帰しないと難しくね?



リザードンも復讐第一、じゃなくなってますねー。

まあ確かに、ビーストじゃ手に余る相手なんですが…ベルゼバブ。

白魔が今回一旦退いたのは、リザードンが『責任とって食う』って言ったからなのかもしれないですね。

結果的にジュプトルの中のファントムを始末できるなら、ビーストがそれを食ったほうが一番いいですから。

…そもそも白魔って、ビーストとウィザードが敵対せずに共に戦う前提でいたのか…?

まあ、ジュプトル達は何かしらバンギラスとは関わりが出ることになるでしょうけど。

ところで、ウォドラが安定して強いw

今回のウォドラってオーズ兄弟世界のウォドラさんだろ!←


そして…

白魔が儀式の発端確定いいいいいい!

ペガサスはGJと言うべきなのか…何なのか…

とりあえず、全ての事情を知っている感じなんですよね。

オニゴーリの希望含め。

オオスバメ? どう足掻いても絶望できないってペガサスも思ってるかとw

それ以前にオオスバメのアンダーワールドって、結構鬱部分に触れちゃいますしねー…(参照:33話)




次回は!

……というか、次回から3話分、ジュプトルの受難で構成される予定w