簡単無料小説

タイトル未設定 - 10話:不死鳥との遭遇

📚 目次

10話:不死鳥との遭遇

10/60 ページ





「――あーさでーすよー!!!」




オオタチの大声から始まる、【雪花屋】の朝。

流石にここで暮らし始めて1ヶ月近くも経てば、ジュプトルはこの大声にも慣れる。

だが…

一方のピカチュウはいつものように深い眠りに就いており、最近では、彼女をどう起こすかがオオタチとジュプトルの日課になっていた。


「むにゃむにゃ…うーん、こんなにたくさんセカイイチ食べられないよー…」

「……さて、今日は何して起こす?」

「昨日は館長のところまで連れて行って、“吹雪”だったからな。…今日は…平和的に行こう」

「じゃ、窓からロープで吊るす?」

「むしろバンジーだな」

「OK、じゃあ、ロープバンジーで」

「確か、この辺にロープが…」


いやに慣れている二人である。

ちなみに、雪花屋の南棟は現在工事中…

そのため、南棟で暮らしていた探検隊達は、旅客用の北棟に一時的に住んでいる状態だ。

他の探検隊達からの支援金もあってか、工事はすぐに始まり、南棟の再建まではあと1ヶ月だという。

ヘルハウンドの襲撃以降、ファントムの動きも静かになり、そう簡単に姿を現さなくなった…

そのせいか、ジュプトルもピカチュウと一緒に探検隊としての活動をすることが多くなり、探検隊ランクのポイントも徐々に上がりつつある。


「こんなんで、次のランクに上がっても大丈夫なのかな?」

「そういえば…探検隊にはノーマル、ブロンズ、シルバーとランクがあったんだったな」

「そう。で、ピカチュウ達【ブレイブス】はノーマルランク…でも、ここ最近探検隊として依頼を成功させているから、もうすぐブロンズランクになれるんじゃない?」

「あまり実感がないけどな」



なお、ピカチュウ・ジュプトル・ヘイガニの【ブレイブス】は…現在ノーマルランク。

探検隊制度では、探検隊のランクは一番下のノーマルから始まり、ブロンズ→シルバー→ゴールド…と言うふうに上がっていく。

ゴールド以上のランクもあると言う噂だが、実際にそれに到達しているポケモンは…今のところ、まったく耳にしない。

ジュプトルはせっかちで時々抜けていることもあるが、実力は折り紙つきで、低レベルのダンジョンに生息する野生ポケモンなど蚊を払うようなもの…

それに加えて、ヘイガニは探検隊の知識が……探検隊志望のピカチュウと、過去の世界でポッチャマと探検隊をしていた相棒と暫く一緒にいたはずのジュプトルよりあるため、そういう意味では非常に重宝されている。

ピカチュウも、強さも実力も他の二人に劣っているのを自覚しているのか、「頑張らないと」と言う意識が強く沸き、最初の頃に比べてだいぶ強くなっている。


「まぁいいや。ロープ見つかった?」

「ああ、で、どこに巻く?」

「やっぱり尻尾でしょ」

「いや…だが万が一飛び降りる勢いが強すぎて、尻尾に大きな負荷が掛かって最悪の場合抜ける…なんて事があるとただのネズミ饅頭にしかならない。胴体に巻きつけろ」

「わーサラッと酷いこと言ってるねジュプトルさん☆巻くけど」

「巻くのかよ」

「……おーい、お前ら何して――んだ本当にいいいいいいいいいいいいい!!?」


例の如く、朝食を食べに来たヘイガニが…オニゴーリ辺りに『寝ぼすけと、そいつの起こし方について議論している2人連れてこい』と頼まれたのだろうか。

ジュプトル達の部屋の扉を開けると、そこで待っていたのは…ロープで体を縛られているピカチュウの姿。

…流石に、これは止めなくてはならない

…ってかロープで縛って何する気なんだ

そんな使命感と疑問を感じながらも、ヘイガニはジュプトルとオオタチを止めに入っていた。





「……で、暫く大乱闘をして…怒りが頂点に達したオニゴーリさんに『部屋で暴れるな』と、4人纏めて氷の礫を食らったんですね」

「「「ハイソノトオリデス…」」」


コータスはズズ、と茶を啜りながら…

頭の上に大きなタンコブを作っているピカチュウ・ヘイガニ・ジュプトル・オオタチを見て、訊ねていた。

呼びに行ったヘイガニもなかなか降りてこない辺り、【ミイラ取りがミイラになる】とはよく言ったものだ。

しかし、ピカチュウの寝起きの悪さも問題と言えば問題。

少し難しそうな顔をしながら、コータスはピカチュウに話す。


「ピカチュウさん、もう少し早起きすることはできませんか?」

「うう〜…私も、私も寝ぼすけなのは自覚してる。でもね、……どんな目覚まし時計を使っても、どんなに大声で起こされても、…全然起きられないのー……orz」

「オニゴーリさんなんて、毎朝5時には起きているんですよ。まあ、私も朝の4時には起きるほうですが…」

「いや、コータス。お前は早すぎじゃね?」

「風呂の掃除とかがありますので…ちなみにオオタチさんも、オニゴーリさんと同じぐらいです」


何でそんなに早く起きれるの、とピカチュウは泣きそうな声で叫ぶ。

ジュプトルは、前日にウィザードとして戦い、魔力を消費していなければ大体5時半には起きる。

魔力を消費すると、回復する手段はしっかりと睡眠を取って体を休めるしかない…

そのせいか、魔力を大きく消費すると…オオタチが起こしに来る7時になるまでは寝ているのだ。

ここにはいないオオスバメは、当然【スピード・デリバリー】の仕事があるので…朝の4時には起きているとの事。セレビィやヘイガニも、起きる時間が6時半と他の面々よりは若干遅いが、それでも早い。

セレビィも今日は雪花屋で朝食を一緒に取っており、呆れたようにピカチュウを見ていた。



「そんなので、この先探検隊としてやっていけるの?早起きは三文の徳、ってよく言うでしょ」

「…仰るとおりです…」

「まあ…ピカチュウ、世の中にはな、……お前よりも凄い寝ぼすけだけど…起こしてくれる嫁がいなくなったもんで、館内の清掃含め早起きしなくちゃいけないうちに早く起きれるようになった奴もいるんだ。……こういうのは、最初の1ヶ月は辛いけど…後から慣れてくるもんだ……」

「……そういや館長、朝だいぶ駄目だって…棟梁から聞いたことあるな……」


はああ、と深い溜息を見せるオニゴーリの横で、ヘイガニが呟く。

――あの館長にも苦手なものはあったのか…

ジュプトルがそんなことを思いながら茶を飲んでいると、

……オオスバメがいきなりスバッと登場していた。


「朝から皆さんおはようございまーす、【スピード・デリバリー】でぇーす!!」

「ブッ!!?」

「ちょっジュプトル汚い!」

「いや、今のオオスバメさんが悪い………まあいいや。で、オオスバメさん、どうしたんだ?」

「そうそう。ジュプトル宛に、お届けもの」


オオスバメはそう言うと、鞄から少し大きな小包を取り出す。

彼の登場で茶を噴出した際、鼻にも入ったのかジュプトルはかなり咽ていたようで…

代わりに、隣に座っていたセレビィが受け取る。

彼女は不思議そうな顔をしながらも、ある程度落ち着いてきたジュプトルに小包を渡していた。


「ジュプトルさん、これ、…“あいつ”からよ?」

「何…ゲホゲホッ、……とりあえず見せてくれ」

「はい」

「……間違いない。確かにこれは、ヨノワールの筆跡だ…じゃあ、この中身は…?」




ヨノワール、という名前にオニゴーリやヘイガニ、ピカチュウが反応する。

探検隊活動をしている者で、ヨノワールを知らない者はいない…

彼は過去の世界にいた時の経験を生かし、探検隊制度を設立させ、自身もかなりの名うての探検家として活動しているほど。

ピカチュウもかつて、彼によって命を救われ……その事があってか、探検隊を志すようになった。

今現在では、どこで何をしているのかも分からないが…かつての敵でもあり現在の友でもあるヨノワールが、今も元気でいることはジュプトルにとっても喜ばしい。

特に、宝石店をこの町で営んでいるヤミラミに教えてやれば…泣いて喜ぶだろう。彼は、ヨノワールの部下だったのだから。


「手紙もあるけど」

「すまん、もう箱開けた」

「「「ジュプトル(さん)せっかちすぎ!!?」」」

「しかもリーフブレードかよ…」

「中身が箱いっぱいの豆腐とかだったら、中身の死亡フラグですね…」


オオスバメが手紙を出す前に、ジュプトルは箱の隙間と隙間の合間に“リーフブレード”を差し込み、箱の封を切っていた。

相変わらずせっかちな部分の強いジュプトルだが、…せっかちすぎにも程がある。

オニゴーリやコータスが呆れながらも中身の安否を心配していると、ジュプトルは驚いたような顔で、中身を取り出していた。

――それは、緑色に輝く魔宝石と……火を噴く竜の姿が印象的なリングだった。






〜〜〜






ジュプトルへ



最近は気候も安定してきて、暖かくなりつつある。

さて、せっかちなお前のことだから、長話をしても手紙を破り捨てるだろう…

だから、重要な部分だけをこの手紙に書こう。

私はお前が指輪の魔法使い…ウィザードとして戦っていることを、知っている。


実は私も、半年ほど前からファントムという存在がこの世界に潜んでいることを知り、独自に調査を進めてきた。

その旅の途中に出会った、かつての部下の1人であるヤミラミからお前の話を聞き、半年前の謎の儀式にお前も巻き込まれたのだと知った。

私はゲートではなかったのか、狙われずに済んだのだが…3年ほど前といい、今といい、お前はこの世界に起こっている【大きな転換期】とも言える戦いに、身を投じる定めなのかもしれないな。


私は今、探しているものがあるため…そちらに直接顔を出すことはできないだろう。

だが、ある程度の協力をすることはできる。

贈った箱の中にある魔宝石と魔宝石の指輪…これは、私が旅の途中で手に入れたものだ。

これから激しくなるであろうファントムとの戦いにおいて、お前の大きな力となるはずだ。

しかし…気をつけろ、ジュプトル。

私は魔法使いではないから分からないが、お前の中にいるファントムは、今もお前を内側から食らおうとしている……この力は、ひょっとしたらお前の中のファントムに、その“機会”を与えてしまうものかもしれないのだ。

言っても無駄かもしれないが…用心はしておけ。


最後に。

お前は冷静に見えるがせっかちで、周りが見えなくなりやすい。

突き進むのもいいかもしれないが、落ち着いて、周囲を見ることも大事だぞ。

それから、季節の変わり目は風邪を引きやすいから注意しろ。



ヨノワールより






「―――お前は俺のオカンかーッッッ!!!」


他はともかく、最後の部分(特に風邪の話題)を見たジュプトルは、手紙をビターン!と床に叩きつけていた。

しかし、色々と分からなくもないのか…ヘイガニはジュプトルの肩を叩きながら、忠告する。


「まあ、馬鹿は風邪を引かないとは言うけど…用心はしとけよ、ジュプトル…」

「お前も何を言うか!?というか、馬鹿と言うな馬鹿と!」

(何故だろう…アニメ的には、ヘイガニが言ったらいけない気がする…)

(ヘイガニさんは…何故か時々、真面目なツッコミ役という設定に疑問を感じるんですよね……アニメのせいで)

(アニメでは浮きやロープを食って、熱を出していたヘイガニが言うのか…)


ジュプトルにツッコミをするヘイガニを見ながら、ピカチュウ・コータス・オニゴーリは不思議な違和感に襲われている。

でも、確かにアニメ的にお前が言えることではなかった。ヘイガニ。

オオスバメとオオタチは「あはは」と笑い、セレビィは複雑そうな顔をしながらも、ヨノワールから贈られてきた魔宝石を見ていた。



「でも、これでジュプトルさんも更にパワーアップできるって事…よね?」

「ウィザードにも、まだ別の姿があるって事なのかな?」

「さあな。俺としては、ヨノワールの言っていたリスクが気になるが」

「とにかく、俺は届けたんで。じゃ!」


セレビィとピカチュウがそう話し、ジュプトルは難しい顔で魔宝石を見ている。

しかし、実際…指輪にしてみないと、分からないだろう。

後でヤミラミに届けてくるか、と思っていると、オオスバメはあっさりと挨拶し…雪花屋から完全に出て行った。

「相変わらず速すぎるな」とヘイガニは呟きながらも、茶を啜りながら、ジュプトルに話していた。


「お前のことだから、魔宝石を指輪にするようヤミラミさんに頼む気だろ」

「ああ」

「俺、今日は橋の修復工事があるから探検隊活動無理なんだよな。ピカチュウはどうするんだ?」

「私は……とりあえず、朝早く起きれる方法を探してみる…頑張って早起きする…」

(((努力は認めるけど、あの寝起きの悪さはなぁ…)))




その頃。

ある廃墟では一匹のピジョットが暴れていた。

手当たり次第に物を破壊し、まるで鬱憤を晴らしているかのよう…

そんな彼の元にやってきたのは、ベルゼバブだった。


『随分と荒れているようだな?』

「煩せぇ。俺もそろそろ暴れたいんだよ…いつまで待っていりゃいいんだ!」

『そんなに戦いたいのなら、暴れてくればいいだろう。ウィザードと接触しなければいいのなら、相手はいくらでもいるはずだ』

「…それもそうか。それに確か、“あそこ”はゲートがほぼいないってメデューサが前に言っていたし…しょうがねぇ。物足りないだろうが、ひと暴れしてくるか」


そう言いながら、ピジョットは姿を変え、どこかに向かう。

…その姿は炎の幹部・フェニックス…

彼の背を見ながら、ベルゼバブはふむ…と考え事をする。


『……奴の行きそうな場所は、ゲートのことを考えると“あそこ”だろうが…まあいい。ゲートさえ殺さなければ、問題はないだろう』






〜〜〜






オオスバメは悠々と空を飛びながら、考えていた。

…今日の夕ご飯何にしようかなー、と。

正直、今はまだ正午にもなっていない時間…夕飯を考えるよりも、昼食を考えるべきだ。

しかしこのオオスバメのズレっぷりは今に始まったことではなく、それに付き合っていたら日が暮れるほど。

だが仕事ができるのは確かで、今も配達物を送り届け…【スピード・デリバリー】の本部に戻る途中だった。


「次の配達終わったら休憩だし、そしたら雪花屋で昼ご飯食べさせてもらおうかなー。……あれ?」


オオスバメが【スピード・デリバリー】の本部前まで差し掛かった途中、あるものを見つける。

そこにいたのは、ボロボロになって倒れているムクホークの姿。

彼だけではない。

ポッポにペリッパー、【スピード・デリバリー】に所属するポケモンの大半が、何者かによって怪我を負わされていたのだ。


「…ムクホーク!?皆、一体何が…」

「先輩…逃げて、くだ…」

「ぐ、うぅ…」

「何なんだ…あの、化け物……」

「化け物?」



化け物、という言葉にオオスバメは首を傾げる。

とにかく…早く彼らを治療せねば。

彼のスピードなら、ひとっ飛びすれば橋の修復活動をしているオーダイル棟梁と大工衆を呼びにいける。

そう思い、すぐに助けを呼びに行こうとするオオスバメだったが

――そんな彼の前に、フェニックスが立ちはだかっていた。


「あ、怪物!」

『誰が怪物だ、誰が!…俺には、フェニックスって名前があるんだよ』

「とにかく俺、忙しいから!じゃあね!!」

『そう簡単に行かせてたまるか。――俺を満足させられたら、行かせてやってもいいぜ?』

「…満足?」

『なぁに、簡単なことだ。……俺と戦え!』


そう言いながら、フェニックスは大剣を振り回す。

オオスバメは慌ててそれを避けるが、相手は彼のスピードにも臆さず向かってくる。

正直な話、オオスバメは戦闘が不得手だ。

だから、自分でも探検隊は向かないと思っていたし…スピードを生かすならと、【スピード・デリバリー】に入った。

実際【スピード・デリバリー】のメンバーは大半がオオスバメのような理由で、所属している者ばかり。

…そんな彼らがフェニックスの欲求を、「強い奴と戦いたい」という欲望を叶えられるはずがなかった。


「えぇぇ!無理だって、バトりたいならオニゴーリ館長呼んでー!?」

『チッ、こいつも雑魚か…だったら失せろ!』

「!」




その頃…

ジュプトルはヤミラミ宝石店に行き、例の魔宝石をヤミラミに預けていた。

指輪ができるのは、早くて1日掛かる。

それまで暇だからヘイガニの様子でも見に行くか、などと思っていると、探検隊立ち寄り所に行ったはずのセレビィが大急ぎでやってきた。


「ジュプトルさんっ!」

「どうした、セレビィ」

「どうしたも何も…大変なのっ、【スピード・デリバリー】本部前にファントムが出たって…」

「何だと!?」


セレビィの話では…

立ち寄り所に、随分とボロボロのオニスズメがやって来たかと思えば、

『助けてください、怪物が』

…と言い残し、気を失っていたのだ。

ゲートを狙うのではなく、適当に暴れている様子を見ると…相手は無差別にポケモンを襲っているのだろう。

ジュプトルは舌打ちすると、コネクトでマシンウィンガーを呼び出し、それに跨りながらセレビィに言っていた。


「怪我人が出ているなら、病院に運ぶ必要がある。…お前はヘイガニのところに行って、助けを呼んで来るんだ!」

「ジュプトルさんは!?」

「…ファントムを倒す。それだけだ」

「……分かったわ!」



ジュプトルが【スピード・デリバリー】前に急行すると、目の前にどさりと何かが落ちる。

慌ててハンドルを左に切り、マシンウィンガーから降りて確認すると

…そこには数時間前まで元気に話していた、オオスバメの姿があった。

しかし酷くボロボロの様子で、頭に鉢が流れているのも見える。

「しっかりしろ」とジュプトルが叫んでいると、そんな彼の前に…フェニックスが現れる。


『お?何だ、ウィザードのお出ましか』

「貴様…!」

『お前は潰すなって命令されているが…こうして会っちまったもんはしょうがねぇし、何より、お前も俺と戦いたいよなぁ?』

「…当たり前だ。いくらこのオオスバメが馬鹿で抜けてて馬鹿でアホで押すで大雑把で馬鹿で天然で馬鹿な奴でも、……ここまでされて見過ごせるか」

<シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!!>

<ハリケーン、プリーズ フー、フー、フーフーフフー!>


ジュプトルはウィザードライバーを腰に巻くと、ウィザード・ハリケーンスタイルに変身する。

そして、そのままウィザーソードガンを逆手持ちにすると、フェニックスに向かってそれを振り下ろす

…が、フェニックスは片手…しかも剣を持っていないほうの手で、軽々と受け止める。


「!」

『何だ、思ったより力ねぇな』

「…チッ!」

『バインド、プリーズ』


ウィザードHSはフェニックスから距離を取ると、“バインド”で拘束する。

だが…

フェニックスは鎖による拘束をものともせず、鎖を引きちぎり、ウィザードHSに斬りかかってきた。


「ぐあああっ!?」

『どうした、こんなもんか?指輪の魔法使い!』

「…ッ、まだだ!」

<ウォーター、プリーズ スィ〜スィ〜スィ〜スィ〜♪>




ウィザードHSはウォータースタイルに変化すると、ウィザーソードガンの銃弾で遠距離攻撃を行う。

しかし、それも効き目が薄いどころか、相手は火を放って攻撃してくる。

“ディフェンド”で防御を試みるも、あまりの勢いに水の盾が押され、遂には突き破ってウィザードWSにダメージを与える。

その上フェニックスはすぐにウィザードWSの元まで接近しており、避けるのが間に合わないと思った彼は“リキッド”で相手の攻撃を受け流す。


『チッ、面倒なモン持ってるな』

(こいつ…今までのファントムよりも、強い。……長期戦を覚悟で、ランドかフレイムで戦うしかないか…!)

<ランド、プリーズ ドッドッドドドドン、ドッドッドドン!>

<ビッグ、プリーズ>

「…おおおっ!」


ウィザードWSはランドスタイルに変わり、“ビッグ”リングによる巨大な手の攻撃を行う。

だが…

フェニックスはそれを両手で受け止め、「何」とウィザードRSが動揺しているところへ剣を振り回しながらやってくる。

ウィザードRSは後退しながら“ディフェンド”を連発するが、相手の攻撃は止まることがない。

それどころか、5回目の土壁を出す前に目の前に接近され…拳で殴り飛ばされる。


「ぐっ!?」

『どうした?逃げてばかりじゃ俺を倒すのは無理だぜ??』

「(……どうする、ハリケーンじゃ力が足りない…ウォーターも効き目がなかった、ランドの防御力も通用しない…!)…まだだっ!!」

<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>

<スラッシュストライク ヒーヒーヒー!ヒーヒーヒー!>



ウィザードRSはフレイムスタイルに変化し、一か八か、スラッシュストライクで蹴りをつけようとする。

ウィザーソードガンの一閃は炎を纏い、フェニックスに向かっていく。

…これが決まれば!

そんな儚い希望を持っていたウィザードFSだが、フェニックスは大きな溜息をつきながら


『こんなチャチな炎…防御するまでもねぇよ』


そう言いながらフェニックスはその攻撃を受けるが、無傷。

そんな、と叫ぶウィザードFSだが…

フェニックスは剣を高く掲げ、そこには地獄の業火ともいえる炎が纏わりついていた。

あれを受ければ、ウィザードFSは確実に終わる。元々が炎タイプに弱いジュプトルなら、尚更だ。

ウィザードFSはどうにか一発逆転できないかと、取り出した指輪は…ヨノワールから受け取った“スペシャル”ウィザードリング。

それをすぐ右手の指に填め、魔法を発動しようとするが…


<エラー>

「なっ!?…もう一度!」

<エラー>

<エラー>

「何故だ…魔力はまだ残っているのに、――まさか…!」

『万策尽きたようだな?……それじゃあ…死んどけ』






フェニックスの最大の一撃が、ウィザードFSに直撃する。

あまりの威力にジュプトルは変身解除し、炎に包まれた大地に倒れてしまう。

そんな彼の首を踏みつけながら、フェニックスは見下したように言い放つ。


『まったく…ワイズマンやメデューサが目を掛けているようだったから、期待したが……とんだ期待外れだったぜ』

「……ッ!」

『まあ、これ以上邪魔をされても面倒だし…お前はここで潰しておくか』


そう言いながら、フェニックスがジュプトルの首をへし折ろうとしていた…

――その時だった。

突如、氷の礫が飛んできたかと思えば…それをかわした瞬間、フェニックスの下半身は凍りつく。

「一体誰が」

そんなことを思いながら周囲を見ていると、そこにいたのはオニゴーリ。

彼は商店街に買い物に来ていたのだが、その途中で騒ぎを聞きつけ…様子を見に来たのだ。


『何だ、テメェ?』

「易々語るほどでもないんでね。…それよりお前が、これをやったのか?」

『だとしたら?』

「――雪花屋を焼いた奴の次は、大量のポケモンを傷つける奴か…ファントム、それも炎属性の奴にはまともな奴はいないのか?」

『はっ、どうやら他の奴よりは手応えありそうだな』

「…あ?」



「――おぉい、館長!何事だ!?」

「突然セレビィがやって来て、…ってジュプトル!?」


そんな話をしていると、オーダイル棟梁やヘイガニといった大工衆がやってくる。

特にヘイガニは、【スピード・デリバリー】の面々だけでなく…ジュプトルまで倒れていると言う事態に、酷く驚く。

オニゴーリは彼らが合流したのを見ると、この場から他のポケモンを連れて逃げるよう指示する。


「棟梁、倒れている奴ら全員病院に運べ!ヘイガニは…オオスバメとジュプトルを任せた!!」

「つか何で…俺2人分運ばないといけないんだ!?運べなくもないけど!」

「お、おう!…だが館長、あんたは」

「……あのファントムを押さえておく。安心しろ、炎で融けることのない体なんでね…それよりも、怪我人を早く!」


オニゴーリの言葉に、オーダイル棟梁たちは連携して怪我人達を運ぶ。

ヘイガニも、オオスバメとジュプトルのことをわざわざ自分に任せた辺り…恐らく彼らに話を聞きたいのだろうと理解し、二人を担いで【雪花屋】まで運ぶ。

そして…

1人だけ残ったオニゴーリは、フェニックスと対峙していた。

フェニックスは未だ余裕たっぷりの表情で、下半身の氷を溶かすと、剣を構えて言い放った。




『―――楽しませてもらうぜ?』






***




まさかのヨノワール。

まさかの敗北回。

まさかのフェニックス…の正体。


オオタチとジュプトルは、色んな意味で仲いいなw

そしてピカチュウェ…

お前、朝相変わらず苦手なのかよ…

オニゴーリ館長も意外な弱点発覚しちゃいましたしね。まあ、今では早く起きれるみたいですが…



フェニックスキター!

で、やっぱドラゴンなしじゃ苦戦しちゃいますよねー。

安心しろジュプトル。

…晴人も通った道だ!←

でも、これでオニゴーリ館長が無事に生還したら、それこそジュプトルと晴人の立つ瀬が…


ちなみに、気になっている人もいるであろう…

ウィザダンメンバーの技編成は、こちら。

ジュプトル→リーフブレード、電光石火、穴を掘る、吸い取る

ピカチュウ→電気ショック、電磁波、電光石火、鳴き声

オオスバメ→燕返し、高速移動、空元気、電光石火

ヘイガニ→冷凍ビーム、クラブハンマー、噛み砕く、鋏む

コータス→熱風、鉄壁、圧し掛かり、火炎放射

オニゴーリ→氷の礫、吹雪、絶対零度、水の波動

セレビィ→マジカルリーフ、癒しの鈴、サイコキネシス、宿木の種

オオタチ→先取り、草結び、10万ボルト、シャドークロー

…ピカチュウの浮きっぷりがww

まあしょうがないよ…レベルまだ低いもん……




次回は若干、ジュプトルの過去に触れる

というか…

ほぼ探検隊ネタバレ?