『――ほう、メデューサがそんなことを』
『俺としてはどっちでもいいんだけどな。あんたの判断を聞かせてくれ、ワイズマン』
困った奴だ、というかのようにくすくすと笑うワイズマン。
それに対し、グレムリンはどちらでも構わないという態度を両手を広げることで示す。
…グレムリンとしては、ワイズマンには便宜上従っているに過ぎない。
ただし、それだからと言ってメデューサに従う理由もなく、むしろメデューサは手柄を横取りしようとしているように思えるため従えというのが無理だろう。
そのためグレムリンの行動は決まっているのだが、一応ワイズマンにこの件を報告し、メデューサが言いがかりをつけても「ワイズマンの命令は絶対、それを無視するお前のほうがまずいんじゃないか」と釘を刺す気でいる。
『……愚問だな。最初に下した命を遂行しろ』
『はいはい。…ところでワイズマン、魔法使いの観察がてらに絶望対象を見てたんだが……絶望させられるのか?アレ』
『問題ない。…目の前で大事なものを失えば、心などすぐ壊れる。それが例え、どんな形であっても…だ』
…その話の内容を、メデューサは聞いていた。
――何故あんな奴に
――私のほうが、忠義を尽くしているというのに
ギリリと拳を握り締め、その場から立ち去ると…外に出たすぐ近くにある一本の木に握り拳を叩き込み、木はビキビキと音を立てて倒れる。
『くっ…!こうなったら、奴よりも先に手柄を立てるしかない……そうすれば、ワイズマンも私の力を認めてくれる……!!』
〜〜〜
――歌が、聞こえる
この歌には聞き覚えがある
ああ、そうだ、この歌は
この歌は……
『――う、うわぁぁぁぁぁ…』
『やめてくれ、…やめてくれぇぇぇ…』
『頭が、割れる…』
『あ、ぁ…』
この声は…
どうして、こんなに苦しそうなの
どうして…
私はこの声の人達を、苦しめて
やめて
やめて
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!
『……駄目よ?あなた達が“壊れる”まで、やめてあげなぁい……あはははははははははははははははははははは!』
―――やめてええええええええええええ…ッ!
【雪花屋】。
今朝はセレビィが非常に機嫌が悪そうにしており、一体どうしたとジュプトルが尋ねる。
「おい、セレビィ。大丈夫か」
「あ…ジュプトルさん。……ちょっと今朝から、頭が痛くて」
「そうか。あまり無理はするなよ」
「分かってるわ。…それにしても…」
「――うおおおおおおお…!腹が、腹がぁぁぁぁぁ……!!orz」
「3日前ならともかく、3ヶ月前の牛乳を飲むからだ馬鹿!」
「何でそんなの飲んじゃったの!?」
「いや、それ以前に、何でそんなの取ってたんだよ!?バンギラスの家のを飲んだんだよな!!?」
「うわー…大丈夫?リザードン」
「これは下剤が必要かも分からんね!」
「………オオタチ、下剤は逆効果よ?」
「つーか、これ、フシギダネん所に行って薬を処方してもらったほうがいいだろ。下剤以外で」
今朝から騒がしすぎる食卓。
…どうやら【雪花屋】に向かう前、リザードンが3ヶ月前の牛乳を飲んでしまい…
そのツケが、今、ここで来たようだ。
当然ピカチュウとヘイガニはツッコみ、オオスバメとオオタチは暢気なことを言い、ミロカロスとギャラドスは溜息をつくばかり。
本当に、どうして3ヶ月前の牛乳を飲んだのか…
ジュプトルまでもが呆れていると、リザードンは腹を抱えながら必死で弁解する。
「いや、聞いてくれって…実はいつも頼んでる【ミルタンク印のモーモー牛乳】が来なくて、……たった3ヶ月なら問題ないかなって思って……」
「問題大有りだよ!?」
「というか、問題しかねぇよ!」
「…しかし、ちょっと気になるな。モーモー牛乳っつったら、『安い、美味い、年中無休』がモットーで有名なんだろ」
「確かに。……どんな理由にせよ、毎日決まった時間に牛乳を届けるのに定評があるモーモー牛乳が来てないなんて、…なんか怪しいな」
弁解するリザードンに対し、ピカチュウとバンギラスが叫ぶが…
ギャラドスとヘイガニは【ミルタンク印のモーモー牛乳】の評判をよく知っているためか、今日届けられなかったことに疑問を覚える。
ここは一度、(リザードンの発狂回避のためにも)調べて見たほうがいいかもしれない。
その方向で話を終えようとしていたジュプトル達だったが
――その直後、オニゴーリから“氷の礫”制裁を受けていた。
しかも攻撃対象は、リザードン・ジュプトル・オオスバメ・オオタチ
…明らかにいつも騒がしいメンバーだ。それが、どんなに無実だったとしても(特にジュプトル)。
「……今朝から煩いんだよお前らァァァァァ!!!」
「そげぶっ!?」
「ぽめらにあん!?…ちょ、館長、俺無実…」
「くとぅるふっ!…うー、館長、俺も無実ー!!」
「まっちょがんすっ!?……わーん、館長、私何もしてないですー酷いですー!」
「黙らんか4馬鹿、特にオオタチ!…お前朝食食べ終わったらすぐ仕事してもらうぞ、今日、コータスの体調が悪いらしいんだ」
「……え?コータスさん、気分悪いの??」
ピカチュウは首を傾げながら、オニゴーリに尋ねる。
確かに、朝食を作った後は、顔を青くしながらどこかに向かっていったが…
オニゴーリも心配そうな顔を見せながら、頷く。
どうやら今は部屋で寝ているらしく、それでも人数分の食事を作ってくれたのだそうだ。
オニゴーリも後でフシギダネの薬屋で薬を貰ってくるようで、その間、オオタチに雪花屋の仕事をさせたいのだそうだ。
「んー…コータスさんの気分が悪いならしょうがないかー。でも私としては、お手伝いさん欲しいでーす。ヘイガニとかバンギラスさんとか」
「おいコラ普通に巻き込むな!俺、今日大工の仕事あるし!!」
「俺はこの馬鹿を薬屋か病院に運んだあと、取材があるから無理だ。つーか一人でやれ!」
「うわーん、雪花屋広いから手が回らないんですよーぅ!……ピカチュウ手伝ってーピカチュウに見捨てられたら私死んじゃうー」
「うぐっ。……ごめんオオタチさん、私もパス。モーモー牛乳のことが気になるから、今日はそっちを調べようかなって思ってるの…もしかしたらファントム絡みかもしれないし」
「うぼぁー!」
相変わらず騒がしいオオタチはさておき。
…そうしていると雪花屋に誰かが入ってきたようで、コータスは寝込み、オオタチは床で倒れて動かないため……応対はミロカロスが行う。
そして、やって来たのはカメラを片手に挨拶するポポッコ。
…【ポケモン通信】の記者の一人で、ウソッキーとバンギラスの同僚でもある。
「はーい!おはようございます、清く正しいポポッコでーす」
「…ポポッコ。お前、何の用だ?」
「あ、バンギラス。実は取材の件で、【ブレイブス】に依頼があってね。どーせなら内容的に【Bバースト】のリザードンさんでもいいんだけど、……なんかお取り込み中だし…」
「依頼か?悪いが今日は、モーモー印のミルタンク牛乳とやらを見に行くから…」
「ジュプトル!逆だから、モーモーとミルタンクが逆だから!」
「――あぁ!それはグッドタイミングですね!!」
死に掛けているリザードンを横目に…
ジュプトルはポポッコからの依頼を断ろうとするが、逆にポポッコは「ちょうどいい」と言わんばかり。
そして…
彼女は1枚の写真を見せ、それを見たジュプトル達は表情を変える。
写真に写っていたのは、無残に切り裂かれたミルタンクの姿。
他にも似たような写真をポポッコは見せ、食い入るように写真を見るピカチュウとジュプトルに言う。
「…これは…」
「随分と、酷いな…」
「これが今朝、モーモー牛乳が届かなかった理由です。牧場に勤めているミルタンクさん数名が、昨晩、何者かに襲われた……そしてこの鋭利な切り傷は、…バンギラス。あなたが今追ってる件と関係ある可能性があるの」
「……もしかして、――無差別傷害事件か?」
〜〜〜
――無差別傷害事件――
この事件はほんの数週間前から起きており、死人は出ていないものの、大怪我で苦しむポケモンが大量に出ている。
事件の被害者には関連性がなく、また鋭い刃を持つポケモンは沢山いることから、メタグロス保安官達も犯人が特定できず頭を悩ませているそうだ。
バンギラスはこの傷害事件をファントムの仕業と見ており、今日は2日前に起きた傷害現場をもう一度洗って見ようと思っていた
…所に、ポポッコからのニュースだ。
ピカチュウとジュプトルも元々今日はそこを調べるつもりだったため、ポポッコの【取材中に襲われてもいいよう護衛が欲しい】という依頼を受けることになる。
バンギラスはというと、……リザードンを何とかしてから来るそうだ。
「ポポッコさんはこの事件、ファントムの仕業だって見てるの?」
「うーん、うちの新聞社は【ファントムの仕業派】と【お尋ね者の仕業派】に分かれていてね、私はどっちでもいいって思ってますよ。相手の正体が掴めない以上、今の段階ではどっちの仕業かなんて決め打てないし」
「……確かに、それもある意味正しいな。で、ファントムの仕業だった場合に備えて、俺達【ブレイブス】に依頼したと」
「そうなりますねー。リザードンさんでもよかったんですけどね、あそこの牛乳の大ファンだから依頼料安くで済むかなーとは思ってましたけど、お取り込み中だったらしいし」
「「……えぇもう、本当に」」
そんなことを話している間に、現場にやって来た。
牧場はかなり広く、牧場主のケンタロスも今回の事件で頭を抱えているそうだ…
辛うじて働き手のミルタンクは2〜3匹残っていたが、これだけでは顧客分のモーモー牛乳を確保するのも難しい。
「こりゃリザードン、絶対犯人焼き殺しかねないな」などと思いながらも、ジュプトルはポポッコに尋ねていた。
「……もしもお尋ね者だった場合、怪しいのは?」
「そうですねー…最近のやつでは、ストライクやエルレイド、ドラピオンにウツボットが有力候補ですかね」
「…それで、これを聞くのもおかしい気がするが……ファントムだった場合は?」
「うーん、それはバンギラスに聞いてもらいたいところですね。彼のほうが詳しいですし。ただ…」
「ただ?」
「……以前バンギラスがぽろっと零してただけで、確証はないんですけど。――グレムリン、とか言うファントム。あれ、巨大な鋏みたいな剣を使うって話ですよ」
…グレムリン
その名前を聞いたピカチュウとジュプトルは、互いに顔を見合わせる。
【Bバースト】に所属していたゴウカザル…彼が絶望し、生み出したのが……グレムリン。
残虐非道な性格で、元の心優しいゴウカザルとはまったくの正反対というのは、リザードンやバンギラスから話を聞いていた。
「……確かにそうかもしれないが、だが、ならどうして無差別傷害事件なんて?」
「狙ったポケモン皆がファントム、…ってわけじゃないもんね。今回なんて、ケンタロスさんがそうなのかなって思ったけど……ファントムを生み出している様子じゃなかったし」
「これは私の、記者としての勘なんですけど。……犯人はどちらにしろ、ただ自分の欲求を満たすためにこの事件を起こしていると思うんですよ。そういうの、ファントムもお尋ね者も変わらないと思いません?」
「……一理あるな」
「うん…でも、そうじゃないと説明がつかないよね。被害者の共通点は、何一つないんだから」
「とにかく、この牧場をこれ以上調べても…大した手掛かりは手に入らないと思いますよ。相手はどうやら、犯行現場に身を隠したままの馬鹿じゃないみたいですし」
ポポッコはそう言いながら、地面や木の柵につけられた傷の写真を撮る。
中には鋭い刃物で一刀両断されたような跡があり、確かにこれは普通ではつけられない傷だと理解する。
問題は…
無差別に襲うような相手を、どうやって見つけ出すか。
こちらが嗅ぎ回っていることに気付けばおびき出せるのだが、そうなると危ないのはポポッコ。
ひとまず彼女を安全な場所まで避難させるべきか、と思ったジュプトルは、彼女をポケモンタウンまで誘導させるような発言をする。
「どちらにせよ、一度ポケモンタウンに戻ったほうがよさそうだな」
「そうだよね。ポポッコさんも一度、ポケモンタウンに帰ったほうがいいと思うよ?」
「何か誘導されてる気もするけど…まあいいですよ。深追いしすぎて自分が被害に遭う、って洒落にもならないし……大怪我覚悟でファントムに突撃リポートするなんて、うちじゃバンギラスぐらいしかできませんから」
「――はっくしゅん!」
フシギダネの営む薬屋で、そんな盛大なくしゃみが聞こえる。
くしゃみの主はバンギラス…
フシギダネはオニゴーリに処方したての頭痛薬を渡しながら、バンギラスに尋ねていた。
「はい館長。……あなたも風邪気味なら、薬出すわよ?」
「いや、大丈夫。…どうせポポッコかオオタチ辺りが噂でもしてるんだろ」
「オオタチは…今頃その辺で真っ白になって倒れてるはずだから、そんな気力ないと思うが。……たく、甘いもんでも買っていけばやる気出るだろ」
はあ、と溜息混じりに呟きながら店を出るオニゴーリ。
それを見たフシギダネは「胃薬が必要になったら言ってくださいね」となかなかに失礼なことを言い、リザードンのほうに向き直る。
どうして期限切れの牛乳を飲んだのか、そしてバンギラスも処理しようと思わなかったのか…
このコンビのズレっぷりに頭を抱えつつも、フシギダネは薬を処方し始めていた。
…なお、リザードン、現在店の片隅で動かない。
「……………」
「さてと、あの人そろそろ死にそうだし作りますか。…ところでバンギラスさん、あなた、ポケモン通信の記者ですよね?最近のニュースについてなんですけど」
「ああ…お尋ね者か、それともファントムか。意見がばっさり分かれてるんだ。……まあ、ポポッコはどっちの線もあるってことで、モーモー牛乳の牧場に取材に行ったけどな。それが?」
「そのことなんですけど…私、3日前の傷害事件が起こる前、……見たんです」
「見たって、何をだ?」
バンギラスが問うが、フシギダネはリザードンに遠慮しているのかなかなか言い出せないでいる。
死に掛かっているリザードンも空気を察したが、「いいから話を続けてくれ」と死にそうな声で告げていた…
その言葉を聞いて、フシギダネは胃の調子をよくするウブの実を粉にしたものを混ぜながら、リザードンとバンギラスに話していた。
「ありえないとは思うんですけど、ファントムのことを考えるとありえるんじゃないかって……本当に、そこで息絶えそうなリザードンさんにトドメを刺しそうで、怖いんですけど」
「いや…いいから……俺の意識があるうちに………話を、そして、薬を……」
「…待て、もしかして!」
「……はい。【Bバースト】のゴウカザルさんを…見かけたんです。5ヶ月ほど前にファントムによる事件で命を落とした、って聞いていたんだけど……」
〜〜〜
雪花屋に向かう帰り道。
「早いところ帰ってやらないと」と言いながらオニゴーリが薬とケーキを頭に乗せて帰っていると、
――突如鋭い衝撃波のようなものが放たれ、何とか回避する。
運悪く…いや、オニゴーリにとっては運よくなのだろうが、避ける際にケーキの入った箱が宙に舞い、一刀両断されてしまう。
「まあオオタチだしいいか」と思いながらも、衝撃波の放たれた方向に目を向ける。
……そこにいたのは、グレムリンだった。
『おっと、いきなり避けられたのは初めてだな』
「…テメェ、さっきのが薬袋のほうに当たってたら…その命、地獄に落としてたからな?」
『おっかないねぇ。……紹介が遅れたな、俺様はグレムリン…ファントムの1人だよ』
「……グレムリン?」
その名前を聞き、オニゴーリはバンギラスとリザードンが過去に話してくれた話を思い出す。
――リザードンの相棒でもありバンギラスの友人でもあったゴウカザルが、フェニックスによって絶望し、生み出してしまったファントム――
これまで姿を見せなかったことが気がかりだったが、まさか、今ここで出てくるとは。
グレムリンは双剣を構え、オニゴーリに言い放つ。
『襲ったポケモンのどれもが手ごたえなさ過ぎて、つまらなく思ってたんだ。楽しませてもらうぜ?すぐ死なない程度にな』
「…成程、お前の目的はよく分かった。それで『はいそうですか、では絶望させてください』……なんて言うと思ったか?」
『思ってねぇよ。……さて、それじゃあ…究極にして最高のエンターテイメントといこうか』
「――その前に、俺と戦ってもらうぜ…!」
そう言いながらグレムリンとオニゴーリの前に現れたのは…リザードン。
「お前大丈夫なのか」とオニゴーリが叫ぶが、それについては無問題(モウマンタイ)らしい。
…と言うのも、ゴウカザルの話を聞き、グレムリンがようやく動き出したのだと知ったリザードンは作りかけだった薬を水もなしに飲み、そのまま直行したようだ。
この後のバンギラスの苦労を想像するだけで、オニゴーリは頭痛を感じる。
「…お前、後でバンギラスとフシギダネに謝れよ…?」
「後でな!……つか、…やっぱあそこの薬苦っげぇ…!!」
『お前は…あぁ、そういえば俺を生んでくれたゲートの仲良しさんだっけか?お前はゲートじゃないし俺の任務にも関係ない、怪我する前にとっとと失せな』
「――そうは豆腐屋が下ろし大根、って言うだろ!」
そう言いながら、リザードンはビーストドライバーを取り出す。
それを見たグレムリンは目の色を変え、剣の切っ先をリザードンのほうに向き直す。
その間にオニゴーリは薬袋…と、一応はこのお陰で無事だったケーキの一部分を持ち、【雪花屋】に戻っていた。
ゲートに逃げられたと言うのにグレムリンは気にしておらず、相手の変身をそのまま見ていた。
<L・I・O・N、ライオーン!>
『お前がビーストか…面白い。ゲートの絶望も大事だが…魔法使いの始末も大事だしなぁ!』
「グレムリン、……うおおおおおおおおッ!」
ダイスサーベルとグレムリンの持つ剣の片割れが、激しくぶつかり合う。
更にそのまま激しい剣戟が繰り広げられ、ビーストはもう片方の手に持ったミラージュマグナムで近距離からの射撃を行う。
グレムリンはそれを受けて数歩引くが、すぐさま何事もなかったかのように接近し、不意を突かれたビーストを袈裟斬りにする。
…どちらも、一進一退の攻防。
しかし(直前まで3ヶ月前の牛乳に当たって)体力を消費しているビーストのほうが、圧倒的に不利には変わらない。
――このままグレムリンが押し切るか、と思われたところへ…
上空からの狙撃をまともに食らい、グレムリンが膝をつく。
グレムリンとビースト、両者が空を見上げると、そこにいたのはウィザード・ハリケーンスタイル。
雪花屋辺りまで戻ってきていた彼らは、オニゴーリからグレムリンの話を聞き、ジュプトルが先に先行…残されたポポッコとピカチュウは後からやって来るという形になった。
ウィザードHSはそのまま地上に降りると、ビーストと連携して2方向から攻める。
『チッ…!魔法使いが二人も来やがった』
「…ジュプトル!」
「まったく、調子が悪いのに飛び出していくとはな!……あぁ、ちなみに、ポポッコとピカチュウは後から来る」
「あぁそうかい!……ジュプトル、その剣貸せ!!」
ビーストはそう言いながら、ミラージュマグナムをハリケーンスタイルに投げる。
大体の意図は分かったのか、ミラージュマグナムを左手で受け取り、自分の持っていたウィザーソードガンを投げる。
更にハリケーンスタイルはそのまま“コピー”でミラージュマグナムを複製し、二丁拳銃で相手を追い詰め始めていた。
その合間を縫って、ビーストはウィザーソードガンとダイスサーベルの二刀流で戦い始める。
グレムリンは相手の攻撃に対して防戦一方で、この状態では分が悪いと思っていた。
――そんな時だった。
「おーいっ、ジュプトル!リザードン!!」
「緑の体に鋏っぽく見えなくもない剣…あれが噂のグレムリン!?」
「リザードン…お前って奴はッ!」
ピカチュウとポポッコ、更にバンギラスが戦いの場に駆けつける。
それを見たグレムリンは、チャンスだとばかりに衝撃波を放つ…
対象は、一番弱そうなピカチュウとポポッコ。
いきなり飛んできた攻撃にピカチュウ達は反応することができず、直撃するかに思われていた。
…だが…
バンギラスは違った。
彼はあの攻撃をピカチュウ達が受けたら大怪我では済まないと一瞬で判断し、咄嗟に壁になっていたのだ。
バンギラスならば、その巨体で攻撃を全て受けることも…吹き飛ばされることもない。
「…がっ…!」
「バンギラスさん!?」
「「「バンギラス!」」」
『あー、別の奴に当たっちまったか。……まあいい、この場は退かせてもらうぜ』
「あっ…くそっ!?」
まさかバンギラスに当たるとは思っていなかったのか、グレムリンも意外そうな顔を見せるが…
チャンスなのに変わりはないと考え、その場から撤退していた。
ビーストはグレムリンを追いかけようとするが、バンギラスのほうを優先し、彼のほうに駆け寄る。
事実、バンギラスが大怪我を負えば彼を運べそうなのは…リザードンかギャラドスぐらいしかいないのが現状。
岩タイプだったがために、バンギラスのダメージは思った以上に軽くで済み…ハリケーンスタイルもビーストも一安心していた。
が、それでも一応見てもらったほうがいいことに変わりなく、ビーストとハリケーンスタイルが協力してバンギラスを病院まで連れて行っていた。
その様子を見ていたのは…白い魔法使い。
彼はそのまま踵を返そうとするが、そんな彼を呼び止める者がいた。
…オオタチだ。
「トロピカルヤッホー♪」
『貴様は、……何の用だ』
「いやー、ちょっと気になりましてですね?……あなたがここでスタンディングバーィしてたってことはですよ?そうしなければならない事情があったって事ですよね??」
『……』
「でもって、それはジュプトルを潰すためでもそれを邪魔するリザードンを倒すためでもない。勿論、――うちの館長を守るためでもないんですよね?」
『何が、言いたい』
「あなたが本当に死守しなければならないのはただ1人…でも、自分の傍に常に置くことはできない事情があった……だから“魔法使い以外で”欲しかったんですよね?」
「……ファントムを、ワイズマンを自分の代わりに倒す魔法使いとは別に…実力的に申し分のないポケモンが。ね?」
***
※この後、サボっていたのがばれたオオタチは館長に怒られました
…というのはさておき。
遂にグレムリンが動き出します……っていうか、次回で終わる予定ではいます。
いますが、まあ、展開上どうなるのか…ってところですかね?
一応、まだレギオンという凶悪能力持ちがいますし…
ちなみに今後出したいファントムとしては、デュラハン・ケルベロス・ゲルダが有力候補。
…ただし、デュラハンとゲルダは……うん、相手が悪すぎたと言いますか…うん。
(恐らく)セイレーンの過去がトチ狂ってるw
そして、リザードンェ…
どうして3日前の牛乳を飲んだし…そして、バンギラスも処理しなかったし…
しかし、リザードンのおまけで制裁を食らったジュプトル・オオスバメ・オオタチェ…しかも4馬鹿って……
まあ、館長の怒りもご尤もなんですけど。
ポポッコは金で愛用していたポケモンの1匹ですー。
オオタチも当然そうなんですけどね! そしてオオタチはHGでも頑張ってくれました。
リザードン=可哀想
しかし館長、あんた本気で魔法使いになったほうがいいと思います。
グレムリンからも生還してるってあんた…
というか、もうワイズマンでも来ない限り【普通の方法では】館長を倒せませんよ!
…
ただ、セイレーンなら可能性があるんですよね。えぇ、セイレーンを【使えば】…
次回…
グレムリン戦は決着するのか、しないのか。