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タイトル未設定 - 43話:メデューサの正体

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43話:メデューサの正体

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――予想外だった

オニゴーリが絶望を乗り越えることもそうだが、一番の想定外はペガサスの存在。

前々から怪しいとは思っていたが、まさかオオタチもファントムだったとは。

しかも、あの口ぶりだとベルゼバブとも通じていたようだ…

ベルゼバブは元々頭の切れるファントムだ、だからこそ、その作戦にたびたびペガサスの案が仕込まれていたとしても……他のファントムだけでなく、メデューサもワイズマンも気付かなかったことだろう。

しかし、一番の問題は…


『……奴は、魔法使いと私達を天秤に掛けていた。そして、…ファントムでありながら魔法使いについた……!』


これが意味することは、一つ。

“ファントムと行動しても利点はない”ということだ。

ペガサスはどちらの陣営についたほうがより有益なのか、天秤に掛けていた。

そして…

“滅ぶ可能性のあるほう”を、切り捨てたのだ。

それだけでなく、自分のことをある程度知っていた上で、気付かないふりをしていた…誰にも怪しまれない立ち位置で、からかっていたのだ…メデューサが憤りを感じない理由は、ない。



そして…

彼女が訪れたのは、【封印の間】。

そこではあるファントムがワイズマンによって厳重に封印されており、魔力的なものだけでなく…白い布のようなもので拘束されている。

メデューサは自分の持つ杖で、そのファントムを封印している結界石を破壊する。

更に白い布の拘束を引き裂くと、中から自由の身となったマスキッパが現れていた。


「……おや、私の封印を解くとは…随分とクレイジーなファントムもいたものだ」

『御託はいいわ。…あなたの力、ある魔法使いとファントムを消すために役立てて欲しいの』

「…ほう?しかし、君も噂に聞いているだろうが……私は自分のハートを震わすような、心の持ち主しかターゲットにはしない。果たして、その魔法使いとファントムは私の目に適うものかね」

『ファントムの始末は私がする。あなたは…魔法使いをやってほしいの』

「……ワイズマンに処罰されると知りながら、私の封印を解いたクレイジーなお嬢さんだ。その頼みを断る理由はないだろう…出来る限りの助力をしよう」


そう言って、マスキッパは姿を変え…

特徴的な頭部をしたファントム、レギオンとなっていた。

彼の姿を見て、メデューサは怪しげな笑みを浮かべるばかり。


(見ていなさい…本当の絶望がどんなものなのか、その身に味わわせてやるわ!)






〜〜〜






【紅蓮の大地】付近にある、温泉宿。

そこに何とか帰還してきたジュプトル達は、早速ルージュラとポポッコの待つ部屋に訪れる。

そして…

ルージュラは何やら空気を察し、部屋を退室する。

その際彼女は、少し疲弊した様子のコータスに声を掛けていた。


「あなた、館長さんあまり困らせちゃ駄目よ?あの人、こう見えて一途なんだから」

「おい」

「はい、分かっています。…ルージュラさんにも、ご迷惑おかけしました」

「それじゃあ、長くなりそうだから温泉でも入ってこようかしらね〜」


ルージュラがいなくなった後、その場にいた全員は即座にオオタチとオオスバメを取り囲む。

ポポッコも、空気を察して扉の前に待機するほどだ。

しかも窓からダイナミック逃走をされないよう、ギャラドスとバンギラスが待ち構え…

「何で俺までー!?」と叫ぶオオスバメだが、その前にヘイガニに問い詰められていた。


「オオスバメさん………さっきの会話の内容から、あんた、絶対オオタチさんがファントムって知ってただろ!」

「え、あ、うん」

「いつからだよ!?」

「というか、どうしてお前が知っていたんだ!?」

「早くに教えていれば、こんな面倒なことにはならなかったものを…!」

「つーか、お前らどういう関係なんだ!?フリーダム同士でシンパシーでも通じたのか!!?」

「さあ!洗いざらい答えてもらいますよ!!」


ヘイガニだけでなく、ギャラドス・バンギラス・ジュプトル・リザードン・ポポッコが圧迫取材を開始。

ピカチュウは止めない。

コータスも止めない。

オニゴーリは無視する。

オオタチは寝転がる。

そのオオタチをオニゴーリが“氷の礫”で叩き起こす。

そんな光景が展開されながらも、オオスバメは少々困ったような顔をしながら……話していた。



「――そもそも、宝石店のヤミラミさんに魔法石を届けるよう頼まれた時から知ってたよ?」



次の瞬間、ジュプトルがランドリングをオオスバメの頭に投擲する。

ガツン、と鈍い音を響かせたそれはオオスバメの頭に直撃して跳ね返ると、ピカチュウがすかさずキャッチしていた。

「痛い」と騒ぐオオスバメだが、ジュプトルとリザードンはそのまま食い殺さんかという勢いで詰め寄る。


「……そんな初期段階から気付いていたのか、お前はッ!?」

「黄色の魔宝石って確か、メタ話で3話ぐらいでの話だろ!?その時から繋がってたのかよ!!?」

「うん」

「「何故に黙ってた!?」」




「え、だって、ファントムだろうがポケモンだろうが、顧客情報を漏洩するわけにはいかないよー。スピデリは信用命だし」




次の瞬間、バンギラスが一瞬のうちに踏み込みオオスバメを殴る。

巨体に見合わないその動きのよさに、ピカチュウとコータス、ヘイガニは一瞬凍りつく。

…が、リザードンとポポッコは耐性があるのか平然としている。流石、親友と同僚は格が違った。

オオスバメの言い分も分からなくはないのだが、一度ならず二度(ウォータードラゴンリング)も三度(フレイムドラゴンの魔宝石)も同じことをしているのだから、殴らない理由がない。

「じゃあ」とコータスは訝しげな顔で、オオスバメに尋ねていた。


「……では、ドラゴタイマーを贈ったのも…?」

「え?それはオオタチじゃないよ、オオタチは自分からいつも俺経由でジュプトルに渡すよう言ってきたから」

「…本当か?」

「そこは信じてあげましょう、オニゴーリさん。オオスバメさんは良くも悪くも、正直ですから…」

「確かに。……だとしたら、ドラゴタイマーは誰が贈りつけたものなんだ?」

「――ワイズマンだと思うよ?」


オニゴーリの疑問に答えたのは、頭にタンコブを作り、正座しているオオタチだ。

−ε−という顔をしている以上、反省の色が薄いのが伺えるが…

バンギラスは彼女まで殴ろうと仕掛けるが、そこはギャラドスとリザードンが必死に押さえてくれる。

…その際、「お前は殴るな宿が壊れる」だの「どうせオオタチだから館長じゃない限り当たらない」だの言っていたのが機に掛かったが。

薄々そんな予感がしていたオニゴーリは、納得した様子で頷いて見せた。


「…確かに、そっちのほうが可能性があるな。お前じゃ出所が謎過ぎて、白い魔法使いと繋がっていない限りありえない……話を聞く限り、白い魔法使いはアレをジュプトルに使わせたくなかったらしいから、ないだろうとは思っていたがな」

「ですねー」

「…それよりも、お前を生み出したゲートはどうして絶望したんだ?元々の性格と違う可能性が高いとはいえ、ワイズマンに従属していないことも考えると…そこは個人的に気になる」



ジュプトルの質問に、オオタチは「待ってました」とばかりに…

話の内容を、盛大に切り替えていた。


「――私は直接絶望したわけじゃないんですよー、言うなり言えば、心の中に蓄積した絶望が解放されたと言いますか」

「は?」

「…この世界は3年前まで暗黒世界だった、となれば、それは謂わば【絶望の期間】……絶望の因子を持つポケモン、つまりゲートが生まれるには充分すぎる期間なんですよ」


どういうことだ、とジュプトルが尋ねる。

オオタチは少しばかり溜息をついた後、ジュプトル・オニゴーリ・ピカチュウ・ギャラドス・コータス・オオスバメを指し示し…

今ここにはいないミロカロスのことも含めるような言い方で、話していた。


「時の止まった暗黒世界は、絶望そのもの。ゲートというのは、その絶望世界における絶望的な生活環境内で誕生した、心の闇を持つ存在……そう言ったほうが早いですかね?」

「…それで、お前の、ペガサスの誕生とどう関係しているんだ」

「ファントムって言うのは、同じファントムという外敵要因がなければ生まれないと思ってません?そこが間違いなんですよー」

「「「…?」」」

「もしもファントムが絶望させて、ファントムを増やそうとしているのだとしたら……最初に生まれたファントムはどうして生まれたのかって話です」




最初に生まれたファントムが、どうして誕生したか。

…そう尋ねられ、ジュプトルもリザードンも首を傾げるが…

バンギラスから、これまでのファントムに関する資料や情報を貰っていたポポッコは、メモに書き留めながらオオタチに尋ねていた。


「……ファントムが誕生するのは、ファントムによる直接的な被害だけではなく…ゲート自身の精神的な理由によって誕生する?今までの口ぶりからすると、多分あなたはそのパターンで誕生してますよね。オオタチさん」

「ピンポーン!100点花丸ハナコちゃんでーす!!」

「「「うっわこんな性格のゲートが絶望なんて想像できない」」」

「でも、ファントムになったからこそ吹っ切れたって可能性も否定できないと思いますよ。彼女、言動こそアレですが…なかなか知恵は回るみたいですし」

「うん…まあ……オオタチさん、何気に頭いいよね…本読めるし」

「え、そこ?ピカチュウそこー??」


オオタチの頭のよさの部分を、「本が読める」で表現した辺り…

ピカチュウ、普段からオオタチをアホの子と思っていた模様。無理もないのだが。

無理もないだろ、とギャラドスは悪態交じりに話す。

ここで騒がれて面倒なことになる前に、リザードンが次の質問をしていた。


「…ってことは、ワイズマンが何もしなくても……いずれファントムは増えていく一方だったてことか?」

「ですねー。でも、それを加速化させたのが…白い魔法使いによる、セイレーンの洗脳」

「「「……」」」

「前にギャラドスのアンダーワールド経由で見せた、あの光景か。…つか、あれって結局誰のアンダーワールドなんだ?」

「俺の推測だけど、それは多分オオタチさん自身のアンダーワールドじゃないか?ジュプトルだとそれどころじゃなさそうだし、リザードンの話だとセイレーンと白い魔法使いが一緒にいたってことだから……別の誰かの視点なのは間違いないだろ」



オオタチがこくりと頷いた辺り…ヘイガニの推測は、当たっている。

白い魔法使いのアンダーワールドに行き着くには少し面倒な手順ではあるものの、自分自身のアンダーワールドなら連れて行くのは容易。

つまりペガサス…オオタチは、日食の日の儀式を直接目の当たりにしていたことになる。

よくセイレーンの歌を聞いて平気だったな、と誰もが思うが、“歌”の対策などそこそこ容易だろう。

コータスの話では、セイレーンの歌は耳を塞いだだけでは効果が無いが、効果範囲の外にいれば影響はまったく受けない。


「…そうなると、白い魔法使い自身も…」

「影響はあると思います。それほどまでに、大きなリスクだったかと思います…私を、セイレーンを使っての魔法使いの誕生は」

「ジュプトルを操った時のことを考えるに、相手の近くにいてコントロールしないと効果がなさそうだったからな。……だが…」


オニゴーリは白い魔法使いから受け取ったハーメルケインを見ながら、考える。

――本当に、セイレーンの歌だけが原因なのだろうか

――もっと別に、その身を削るに足る理由があったのではないか

【神の頂】へと向かうための鍵は手に入れた、後は話を聞くぐらいだが…

そのことを話す前に、ピカチュウが『誰もが聞きたかったこと』をオオタチに尋ねていた。


「ところでオオタチさん、ファントムと私達を天秤に掛けてたって言ってたよね?」

「そーですねー?」

「…それって、私達の情報を……ワイズマン達にも売ってたってこと?」

「疑われてもしょうがないとは思いますけどねー……私はベルゼバブに、ちょいと知恵を貸してたぐらいですよ。まあそれを有効的に、しかもゲートを絶望させられるのは彼の実力ですけど」

「……で?」

「他のファントムに情報はあげてませんよー。私は冷静に、『ペガサスの存在を口外しない人』を選んだつもりですから……これまでのファントムの行動がおかしいと思うなら、私以外の他のファントムが見張りをしていたってことでは?」




…確かに、ベルゼバブの性格はアレだが…ワイズマンや他のファントム、PPCのルージュラが信用を置けるほどに口は堅い。

オオスバメに関しても、先程の『スピデリの社訓は絶対』という言葉からも分かるとおり、そう簡単に口を滑らせることはなかった。

何を問い詰めても、「個人情報はお答えできません」で返されたのだから、彼がペラペラ話すことはまずないだろう。

となれば、オオタチの言うように、別のファントムがスパイとして送り込まれていたという可能性…


「……マジかよ」

「だが、そう考えればこれまでのファントムの行動も…コータスがセイレーンだと分かった理由も、納得もできる」

「私としては、メデューサがそうなんじゃないかなって思いますよー。正体は……まあ、私も分かってないですけど」

「それよりも…最後に聞きたいことがある。……お前、どうして俺達についたんだ?」


ジュプトルは目を険しくさせながら、オオタチに尋ねる。

…確かに、ファントムは放っておいても増えていく…

いずれこの世界の勢力図は今の形から逆転し、ファントムの支配する世界になるだろう。

しかし、それでも魔法使い側についた理由。

勝ち目は正直言って薄いというのに、どうして味方をするのか?

そう思っていると、オオタチは呆れ顔で返していた。


「……さっきも言いましたよね、情が移ったって。…館長は確かに名前通りの鬼ですし、鬼神ですし、いやむしろ閻魔大王様とかダゴンとか、もっと言えばニャルラトテップですけどー」

「おいコラ」

「…コータスさんは優しいしご飯美味しいし、館長は不動明王だけど面倒見はいいし衣食住は保障してくれるし、オオスバメさんやリザードンさんとは気が合うし、ジュプトルさんもピカチュウもバンギラスさんも遊びがいあるし……こっちのほうが楽しいんですよねー!」



「散々俺達振り回しといて、その答えかよ…」



ヘイガニのツッコミは、至極尤もだった。

というか、正論過ぎる。

しかし、今のところオオタチはこちらを裏切る気はないようで…それはコータスを助けてくれたことからも、分かっていた。

とにかくポケモンタウンに戻ったら、スパイが誰なのか突き止めるべきだろう。

ジュプトル達はそのまま解散し、依頼としてルージュラについてきたピカチュウ・ポポッコ・ヘイガニ・リザードン・バンギラス以外は先にポケモンタウンに戻ろうとしていた。

そして…

その途中でヘイガニは、ジュプトルに聞こえないような声で、オオタチに尋ねていた。


「…オオタチさん、あんた、メデューサの正体に気付いているんじゃないのか?」

「え?どうしてそう思うんデスカーン??」

「あんた、さっき『自分でも分かってない』とか言ってたけど…白い魔法使いの行動を独自に調べていたあんただったら、メデューサの正体に皆目見当がつかないはずがない」

「……」

「…ジュプトル達に言えないようなことなのか?もしかして、それって――」

「――あー、かんちょー饅頭買って帰りませーん?」

「おい言い逃れが露骨すぎんだろォ!」


ヘイガニが怒鳴るが、オオタチは聞こえないフリをするのみ。

「あの人マジ何なんだ」と呆れつつも、オオタチの行動を見て……大体のことは察してしまった。

オオスバメも既にその可能性を考えているのか、暫く考えた後、オオタチに便乗する。

はあ、と誰の耳にも聞こえるような溜息をつきながら、ヘイガニは考えていた。




(もしそうだとしたら、――ジュプトル…)


(お前に、メデューサは倒せない…いや、倒すことなんてできない……)



(俺の勘が正しかったら、あいつは…メデューサは―――)






〜〜〜






翌日。

ピカチュウ達もポケモンタウンに戻り、ミロカロスは昨日起きたことをヘイガニ経由で聞いていた。

そして…

今はバンギラスやオオタチと共に、ミロカロスは「買出し」と称して商店街に向かっている。

その道中、ミロカロスは少しばかり考えた後、オオタチに尋ねていた。


「質問ばかりで窮屈だろうけど、答えてくれないかしら?」

「はいはーい、今回そういう回ですしおすし」

「悪いわね。――あなた、カビゴンさんとは知り合いなんでしょう?会いには行かないの??」


そういえば、とバンギラスも今思い出したように声を上げる。

それに関して、オオタチは

『ファントムになっていつ死ぬかも知れない危険な橋を渡ってるってのに、危険な目に遭わせたり、死に様を見せたりできますかー?』

…と、軽く答えていた。

その答えに関しては、バンギラスも多少同意できる部分があり、カビゴンの歳を考えると無理もないと考える。

話を聞く限り、暗黒世界時代で孫のように可愛がっていたのだ…あまりショックを与えるわけにも行かないだろう。

……そうしていると、町のほうが騒がしいことに気付き、3匹は急いで向かう。

そこではレギオンが商店街を強襲しており、今まさに、フラワー商店のキレイハナがレギオンの攻撃に倒れていた。


「きゃああ…!」

「キレイハナッ!?」

『あなたの妹さんの心…純真で、実に壊しがいがあるものだった。次は……あなただ』

「!」

「――おおおおおっ!」



レギオンに向けて、バンギラスがショルダータックルを放つ。

その間にミロカロスはラフレシアの元に向かい、キレイハナの様子を見る。

かなり衰弱している様子で、顔色が悪い…

そこへ騒ぎを聞きつけたジュプトルとピカチュウ、リザードンにヘイガニ、オオスバメが現れ、ミロカロスはオオスバメにキレイハナを運ぶよう頼む。


「オオスバメ!…ちょうどよかった、病院に彼女を!!」

「えっ、あ、はーい!スバッとお届けしまーす!!」

「…スピードは最低でも35%に抑えてねオオスバメさん!?」

「駄目だ、35%でもオオスバメさんは速い!いっそミロカロスさんが届けたほうが、キレイハナさんにとっての希望だ!!」

「そうだったわね!ごめんなさい、さっきの頼みごとは忘れていいわ!!」

「えー!?」


どういうこと、とオオスバメが叫ぶのも聞かず、ミロカロスは背中にキレイハナとラフレシアを乗せて避難する。

その間に、ジュプトルとリザードンはそれぞれハリケーン・ビーストへと変身するが…

それを見計らっていたかの如く、メデューサが現れ、ハリケーンスタイルに攻撃を仕掛けていた。

ビーストはレギオンに狙いを絞り、周囲のグールはバンギラスが応戦する。

レギオンは長柄の鎌を振るいながら、ビーストに言い放つ。


『……君の心は…ふむ、私が壊すに値しない』

「はあ!?何言ってんだお前!」

『むしろ気になるのは、あそこにいる指輪の魔法使いと…オオスバメか。どちらも壊し甲斐がある……失せてもらおうか!』

「オオスバメがよくて俺が悪いってどういう了見だ!?お前ぜってー倒す!」


ビーストはそう叫びながら、ダイスサーベルでレギオンを袈裟斬りにしようとする。

しかしレギオンは難なくそれをかわすと、鎌の柄でビーストの腹を突く。

げほ、と激しく咳き込みながらも、ビーストはバッファマントを装着し、ハリケーンスタイルが同時に2体のファントムを相手にする事態を作らせないためにもタックルで押し切っていた。




その間に、メデューサとハリケーンスタイルの戦いは激化する。

メデューサは石化能力を利用して作り出した岩を、杖で一突きして無数の礫をハリケーンスタイルに放つ。

何とか“ディフェンド”の魔法でそれを総て弾き落とすと、ハリケーンスタイルは相手に接近し二振りのウィザーソードガンで切りかかる。

怒涛の連続攻撃を浴び、メデューサは地に伏すが…


『う、…くぅっ…!?』


突然、頭を抑えて苦しみだす。

一体、どうしたというのだろうか…

誰もがそんな疑問を浮かべながらも、今がチャンスだとばかりにハリケーンスタイルはトドメを刺そうとしていたが

――その手を止める一言が、メデューサから放たれた。


『あ、ぐう、……ジュプ…トル、さん……』

「…ッ!?」

『しまった、こんな時に……ッ、――うう…あああああああああっ!』


メデューサはそのまま、悲鳴にならない声を上げる。

そして…

彼女は姿をポケモンのものに変え、それはハリケーンスタイルの剣を鈍らせるには充分すぎるものだった。

ピンクの体躯。

エメラルドグリーンの瞳。



……今までメデューサだったものが、自分のよく知る、セレビィへと姿を変えていったのだ……

ハリケーンスタイルは何とか声を絞り出すように、目の前の相手に尋ねる。

ピカチュウやビースト、バンギラスなども驚きを隠しきれないといった様子を見せる一方で…

ヘイガニとオオスバメは、「当たってほしくなかった」という顔でハリケーンスタイルとセレビィを見ていた。


「セ…レ、……ビィ…?」

「ジュプトル、さん……ッ、――嫌ああああああああああああああああっ!」

「!…セレビィ、待て…話を」

「――ジュプトル!追うなッ!!」

「止めるなヘイガニ!…セレビィ、……セレビィッ!!」


錯乱し、その場から逃げ出すセレビィ。

そんな彼女をハリケーンスタイルは追いかけようとするが、ヘイガニがそのローブを掴む。

だが火事場の馬鹿力と言うべきか、力に自信のあるヘイガニが引いても引き止めるどころか、逆に引きずられている。

オオスバメも足でベルトの部分を掴み、ピカチュウも咄嗟に左足にしがみ付き、3人掛かりでハリケーンスタイルを抑えようとするも…手が足りない。

しかし…

そこへレギオンの相手を放棄し、ビーストが左拳でハリケーンスタイルを殴り飛ばす。

その衝撃で彼を引き止めていたピカチュウ達も吹っ飛ぶが、ビーストは冷静さを欠いているハリケーンスタイルに言い放つ。


「…俺が言えた話じゃないが、落ち着け!」

「だが、セレビィが…いや、そもそもどうしてあいつが!」

「落ち着けっつってんだろ!今はそんな場合じゃない、だからヘイガニ達も必死で止めてたんだろうが!!」

「……ッ」

『…ふむ、成程な。今は退いたほうが懸命のようだ』


レギオンはビーストからのマークが外れたのを見ると、そのまま撤退を始める。

「待て」とバンギラスが追いかけるが、グールに邪魔をされてそれどころではない…

一方で戦う様子を見せなかったオオタチに、呆れながらも尋ねていた。


「……くそ、逃げられたか…つかお前も戦えファントム!」

「いやー、残念ながら戦闘能力はないんですよね、自分。だから、どっちかの陣営に癒着するしかないわけで?」

「だろうな畜生!」




吐き捨てるように言いながらも、バンギラスは今の状況の最悪さに頭を抱える。

…恐らく、セレビィがファントム側のスパイだったのだろう…

いつもジュプトル達の近くにいた彼女ならば、そしてジュプトルの知り合いでもある彼女ならば、スパイ活動に何の支障もなかったことだろう。

だが…こちらにとっては、最悪と言うしかない。

特に、セレビィをよく知るジュプトルにとっては致命的な痛手だろう。

そうでなければ、一時期のリザードンのようなあの暴走を…彼が見せるはずがないのだから。


「…一難去ってまた一難、ってレベルじゃないだろ……くそっ」






***




・レギオン

・メデューサの正体

・レギオンの会話によるフラグ

……ジュプトル…あーあ……←


今回はオオタチ周りの説明回でした。

オオスバメェ…

でも、スピデリって信用問題は大事ですし、顧客の情報を簡単に洩らすわけには行かないですよね。

見返してみると、色々とオオスバメとオオタチで裏の繋がりがあったのは分かると思います。

オススメは24話。

最後の辺りはオオタチ=ペガサスと知っていると、割と納得できると思います。

ちなみに「面倒なこと」っていうのは、命を狙われるような危険性って意味です。

そのリスクを犯してまでコータスを助けたと考えると、やっぱ情が湧いていたんでしょうねぇ。



オオスバメ=オオタチ間のラインでの裏話だと、PURIN-cesの時の話ですね。

オオスバメはそもそも興味がなかった、って言うのもありますが、オオタチが裏で「ピクシー・ノートの歌はなるべく聴かないほうがいい」って言ってます。

…オオスバメとオオタチがあまり出張ってこなかったのは、それが理由です。

なので、ゲートというのも相まってかオオスバメはエキドナの歌の効果外にいたことになりますね。

ちなみに館長はある種セイレーンの狂信者みたいなもんですし、コータスとフーディンはファントムでしたし。

エキドナの歌はゲートに強く作用しますが、ジュプトルは魔法使いだけあってか洗脳には時間が掛かった(後は至近距離で歌を聞かせるしかできなかった)ようで、決して彼が駄目だったわけでは…

――ただ、オオタチ曰く

「まあオオスバメさんは、エキドナやセイレーンの歌を聞いてても『ふーん』なんだろうなーって自信はあったwww」


そして…

まあ、フラグはありましたよねー。

本編知ってると「ああ…」なんですけど、ジュプトルもエピソード5を見る限り割と気に掛けてはいるんですよね。

LoveかLikeかはともかく。

ちなみにセレビィ自身は、本編シナリオ中に「もう少し一緒に居たい」的なことを言ってたと思います。

その会話内容であいつが性格:せっかちって言うのも判明します。クールなのに…

まあ、ウィザダンのジュプトルはいい意味で壊れましたが! あ、アニメのジュカイン進化回は…悪夢だったね……




【次回予告】

やめて!

レギオンの特殊能力で、アンダーワールドの中のドラゴンを倒されたら、ジュプトルが二度と魔法を使えなくなっちゃう!!

お願い、死なないでジュプトル!

あなたがここで倒れたら、ミライやポッチャマとの約束はどうなるの?

希望はまだ残ってる。

これを耐えれば、メデューサやレギオンを倒せるんだから!


次回、【オオタチ死す】 デュエルスタンバイ!!

(次回予告担当:ピカチュウ)