「う…」
重い瞼を開けると視界には風にたなびく木々と晴れ渡った空が広がっていた。
「くそ…」
強い衝撃を受けた体は思うように動かず仰向けからうつ伏せになるのが精一杯だった。おそらくどこかの骨が折れているのだろう。アドレナリンの分泌により麻痺してはいるが体の各所に鈍痛が走っていた。
うつ伏せになった姿勢からは前方に火を噴き黒煙を棚引かせるタイタンの無残な姿があった。どうやら機銃台座にいたため、先の爆発で吹き飛ばされたのだろう。尤もこんな無残な姿を晒すくらいなら仲間とともに命を絶ったほうがマシだったが今の自分に自分の命を奪うほどの体力は残されていなかった。運命はどうやらそんな簡単には楽にしてくれないようだ。
タイタンのさらに先、そこには左顔面から流血を起こし怒りにまかせ周囲を焼き払うカノンリレイダーの姿があった。
その時だった。不意に体を揺さぶるような地響きが起こった。
「ロケットか…」
避難用ロケットが飛び立とうとしているのだ。頭を見せたロケットは徐々に速度をあげつつ空へと舞い上がろうとしていた。だが、それは遅すぎた。ロケットが空高く舞い上がる前にカノンリレイダーがロケットの姿を捉えてしまったのだ。そして、体に走る赤い筋が徐々に光を帯びはじめた。
「や…やめろ…!!」
渾身の力を振り絞りかすり声を出し懇願したがそんな声は届くわけもなく、まして届いたところでなんの意味も果たさなかっただろう。
レイダーカノンリは今までより遥かに多い光量を充填し宙空へ浮き上がり無防備な腹を露わにしているロケットへ向け赤色の光を照射した。
「発射!」
激しい震動とともにロケットは少しずつ浮き上がりこの星を旅立とうとしていた。
あれから何人もの軍人や民間人が原住生物の餌食となり自分たちはその中を命からがら走りこの最後のロケットへと乗り込んだ。
「お爺ちゃん怖いよ…」
隣に座っていた隆が不安を隠せない様子だった。だが、それはみな同じで将司自身も不安で心が満たされていた。
「きっと大丈夫だ。もう少しでホコタテだ」
「うん…」
キャーーーーー!!
悲鳴が機内に響いたのはその時だった強化窓ガラスから外を見降ろすとそこには息絶えたワカレフタクチや破壊された戦闘車両が無造作に黒煙を靡かせ転がっていた。そして、その中にはこちらを睨みつけるレイダーカノンリの姿があった。
「まさか…」
そう、そのまさかだった。
程なくして放たれた赤光は加速途中であったロケットの腹を焼き払いすぐそばの避難民を装甲や椅子ごと溶解させるとブースターを炸裂させた。
うわあああああああああああ
機内は激震と断末魔、泣き声、悲鳴、混沌で溢れかえった。
「息子よ。あとはお前に任せた」
そうつぶやくと将司は家族の肩に腕をまわし一ヶ所に抱き寄せた。
午後3時32分。ガイアを脱出しようとした最後の避難ロケットは大樹林上空400Mの地点で燃料引火により火達磨と化し、程なくして四散した。