「ほら!急ぐんだ!」
サイレンが鳴り響く中、孫である隆の手を引き将司は妻の良子、息子の嫁である飛鳥とともに一路避難用ロケットへ向けて走っていた。
「お爺ちゃん、手が痛いよ」
「我慢するんだ。もうすぐだから」
『第3防衛ラインが破られた。最終防衛ラインは渡すな!!』
そのような無線を漏らしながら彼らの横を2輌の装甲車と1輌の重戦車、1輌の輸送車が走り抜けていった。
「すぐそばまできているのか…」
「あなた…」
「大丈夫だ。きっと助かる…きっと。とにかく今はロケットに乗るのが先決だ!」
そうは言ったもののもう60を超える老体。いくら健康に自信はあっても長距離を走るには身が堪えていた。が、それは良子も同じだ。
その時だ、この切迫した空気を何度目かの爆音が掻き乱した。
ここに来るまでになんど聞いたことだろうか。すでにここの防衛隊は戦力を大きく削られ時間を稼ぐのみとなっていた。おそらく先ほど横を通って行った兵隊達も自分たちが生きてホコタテの地を踏むことはないと分かっているはずだ。
「まさかあんな生物たちのせいでこうなるなんて…」
「そんなことを言ってる場合じゃないだろ!!」
「…ごめんなさい」
ついに気がたち些細なことで声を荒げてしまった。それに驚いたのか飛鳥が抱くまだ乳飲み子の葵が泣き出してしまった。
「…すまない…」
それから幾分走りようやく避難用ロケットが見えてきた。
すでに異変が発生してから4日目、他の機体はすべて離脱しガイアにおいてこれが最後の機体なのだという。が、離脱したからと言ってホコタテに到着するわけではない。私が知りえるだけでも全体の2割は撃墜されたという。もしかしたら乗り込んだとしても我々は助からないかもしれない。だが、これしか助かる道はない。少なくとも若い命だけは助けたい。その一心で将司はヘトヘトになっている隆を抱えあげ良子と飛鳥を励ましながら走った。
「ぎゃああああああああああああ」
その人間のものとは思えない断末魔が聞こえたのはその時だ。思わず振り返ると後ろを走っていた別の家族が赤色の光線を浴び、忽ち体から炎を吹き上げ悶え苦しみ始めた。彼らの皮膚はみるみるうちに溶けだしもう原形をとどめている個所を探す方が困難なほどだった。無論、助けることもできず眼に収めるのも嫌なのですぐさま走り出した。が、
「なんなんですかあれ!!」
「そうよ!なによあれ!!」
と二人は完全に取り乱してしまった。
赤色の光、熱…
「おそらく危険度Aランクのカノンリレイダーだ。だが、やつの生息域はこんなところでは…」
「そんな考察はいいから急ぐのよ!!」
「あぁ、分かってるさ!」
やはり気が立っているせいか声を荒げてしまった。が、死がすぐ間近に迫っているんだ。正気でいる方がおかしい。
「さぁ、こちらです!」
迷彩服を着、アサルトライフルを下げた兵士が駆け寄ってきた。
『最終防衛ライン崩壊!!』
無線にその知らせが入ったのはそれからすぐのことだった。