僕はいつもミアと一緒だった。
彼女は気高くて美しい。
それに比べると、世界は醜い。
荒野に咲いた一輪の花のような彼女を醜い世界から守るのが僕の役目だった。
僕らは幸せだった。
でも、世界の終わりは突然訪れた。
「ミアッ!!!」
彼女は僕の目の前で黒い点に埋めつくされ、やがて消えてしまった。
後で聞いた話しでは、AIDAと呼ばれるバグウイルスが彼女に擬態していた、と。
それでは一体彼女はどこに行ってしまったのだろう?
ミアのいない世界はいらない。
彼女のいない世界は無意味だ。
僕は…、僕の意味を失ってしまった。
ミアが消えてしまった後、僕は自分を凍り漬けた。
神殿の下にひっそりと根付いた大樹の根元で。
そこで眠り続ける僕を呼び起こす声がした。
ハセヲ、君だよ。
ハセヲ、君は僕が必要だと言ってくれた。
僕は嬉しかった。
君といろいろな場所へ行って、世界は醜いと思わなくなった。
ハセヲ、君が僕に新しい世界を見せてくれたんだ。
そして、
ミアは僕と共にいると気付かせてくれた。
ありがとう、ハセヲ。
次は僕が君に新しい世界を見せてあげる。
君への感謝の気持ちと共にこれを贈ろう。
受け取ってくれないか?
僕は、今日も君と一緒にフィールドを探索に来ていた。
「ハセヲ、君にこれをあげよう」
「なんだ? 耳飾りか?」
「君の為に手に入れたんだ。是非、使って欲しい」
「それなら、有難く貰ってやるよww」
耳飾りを受け取り、つける君を見て、僕は憑神(アバター)を展開した。
「マハッ」
「おいっ! いきなり何やって…、ん? か…体が動かない!?」
首から下が思うように動かせずに無理にもがくハセヲ。
「エンデュランス! てめぇ何しやがった!」
「ハセヲ、その耳飾りには僕がマハの誘惑の力を加えてるんだ」
「なんだ…と?」
「暴れないでくれ。僕は君を傷つけたくない」
「だったら! 何で…、」
こんな事をする!
そうあらわした瞳で僕を見つめる。
僕はハセヲの肩に手を置いた。
「何を…するつもりだ?」
「君は、僕に全て任せればいい」
僕はハセヲを押し倒した。
「エンデュランス! 何やって…、ッ!? 何で服が脱げんだよっ! おかしいだろ!」
ハセヲの言う通り、PCをキルする事は出来ても服を脱がす事は出来ない。
「まさか…! これもこの耳飾りのせいなのかっ!?」
「そうだよ。マハの誘惑の力で君のPCを改竄しているんだ」
「一体、何の為にっ!」
「何の為に…だって?」
ハセヲ、君はまだわからないのかい?
そんな事、わかりきっているじゃないか。
「君は、僕を必要として、僕に新しい世界を与えてくれた。だから感謝の気持ちを込めて、今度は僕が君に新しい世界を見せてあげようと思った、それだけの事だよ」
ハセヲ、ありがとう。
そしてこれからは、君は僕のものだ。
僕の新しいミア。
ずっと一緒にいよう。
「…っ! や、やめろっ!」
「フフッ」
「俺のPCがーーーーーーッ!!(泣)」
リアルハセヲの絶叫がゴーグル内でこだましたのだった。
END.