ある日の事。
ティキ・ミックは千年伯爵に呼び出され、ロードが奏するノアの箱舟に来ていた。
「ハァ…、何の用なんだかねぇ。つまんなさそうだから、帰ろっかな…?」
ティキが踵をかえそうとした瞬間、
「うほっ!?」
ドサッと何かが背中に降ってきた。
驚いて振り返れば、
「やっほー、ティッキー」
「っ、ロード! …ったく、もう驚かすなよ?」
同じノアのロードが、ティキの肩口に垂れていた。
「なかなかティッキーが来ないから、伯爵が迎えに行ってあげてって言うから、ボクがわざわざ迎えに来てあげたのにぃ…」
お礼のひとつも言わないティキに焦れたのか、ロードはティキの首にしがみついたまま、ぶらんと垂れ下がる。
子供とは言え、その全体重が首にかかると辛い。
「ロード! わかったから、やめろって…、」
苦しい、と首に回された腕を叩く。
「キャハハハハッ」
ロードはティキの慌てる様子を見て面白がるだけで、一向に言う事を聞く気配がない。
「この、おチビさんは?…っ、」
ティキのこめかみがヒクヒクと動いた。
そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。
「いい加減に…っ」
「ところでさぁティッキー、アレンとヤったって本当ぉ?」
「!!?」
ティキは予想だにしなかった言葉に思わず停止した。
「どーしたんだよぉ? 早く言えっての、」
焦れたロードが頭をボカボカ叩いてくる。
「いててっ…、やめろって」
「ボクのアレンなのにぃ…」
「いや違うだろ、…てか何で知ってんの?」
ティキ自身はロードに言った覚えはなかったのだが。
「アクマに吐かせたんだぁ★」
「あっそ…」
なるほど、あの時のアクマか。
別に口止めをしていたわけでもないから、ロードにもらしたところでティキは責めれない。
「…で?」
「で、ってぇ?」
「とぼけるなよ…、何かあるんだろ?」
ティキはロードに聞いた。
ノアは互いのプライベートには干渉しあわない暗黙のルールが出来ている。
千年伯爵を除いて、だったが。
それを破ってまで、一体何をしたいのか?
ティキはその部分を聞いているのだ。
「別にぃ? ただ…、」
「ただ?」
ロードが言葉を濁すのは珍しかったのでティキは続きが気になり、促したら、
「今度アレンをヤるときはボクも呼んでねぇ? 約束★」
ロードは爆弾発言を投下すると、唖然とするティキを残して先に千年伯爵のところへ行ってしまった。
「な…っ、お…ぇえ?」
一人、残されたティキは戸惑いを隠せなかった。
「落ち着け、俺…」
状況を整理しなければ何もわからない。
まず、ティキはアレン=エクソシストに手を出したことは後悔はしていない。
それに以前からロードがアレンを好きなことは知っていた。
ここまではいい。
しかし、まさか釘をさしに来るほどに好きだとは流石に思わなかった。
今度呼べと言われても、いつになるかわからない上に、しかもロードはまだまだ子供で、家族として教育上よろしくないのは確かだ。
「う?ん…、あぁどうすっかな…? 帰りたくなってきた」
頭を抱えて珍しく悩む。
ティキはアレンを嫌いではない。
むしろ構ってやりたいと思うくらいに好きな人間だ。
だが、
「はぁ…」
ティキはため息を吐いた。
おそらく今日、千年伯爵に呼び出されたは14番目の関係者であるアレンを再び始末するように、催促する為だろう。
(悲しいな…)
結局は結ばれぬ運命か。
ならば、
「ラストダンス前に、もう一度勝負でもすっかねぇ」
ティキは胸ポケットから愛用のトランプを取り出すと、願をかけるようにチュッとキスを落としたのだった。
END.