維新は 神勅成就にあり、 皇謨顕現にあり、本来具有底の大義を明かにし、万古 天皇に帰一せしむるにあり。
一箪の食・一瓢の飲も、神食神飲なりと欽仰す、実に維新の実証なり。
一個半個も此の人物を増し行く行為こそ維新なり。個身に明徳ある如く、国に明徳あり、之を 天皇と申し奉る。明徳を明かにするは修養の根基にして、心賊剪除の血闘を、永遠に続けざるべからず。明徳顕然たらば、姦悪其の影を没し、賊勢盛んなれば、忠臣其の跡を潜む。忠姦の死闘こそ修養、而して忠の勝ち行く聖姿こそ維新なり。即ち本来具有の正心に還り行くを向上と謂ふべく、之を維新と名づく。
一個の維新成れるを聖者とし、一国の維新成れるを 天皇國となす。
国憲・国法・文物・制度乃至百事悉く明徳具現の手段にして、賊心芟除の方便たらざるべからず。自己を善人なりと思惟乃至鼓吹するものに善人なく、反省なきものに修養なし。自己の欠陥を認むるか乃至自己は悪人なりと自覚する時、躍如して菩提心(一)は生起し、向上進前寸歩を退かず、滅賊の力澎湃として全身に滾る。是れ維新の発起なり。
皇國の現況を以て十成底となすものありとせば、そは向上心なき増上慢の個人と斉しく、冒涜不敬之に過ぐるものなく、速やかに焚了し去るべき存在なり。
天皇一元化が 皇國の完成にして、茲に至る道程が修養即ち維新なり。
維新は一時の現象に非ず。名利獲得の手段にも非ず。連綿不断なる捨身滅賊なり。子々孫々相伝へて実行し、寸暇も止むべからざる聖業なり。
古往今来 皇國に於ける総べての戦争は、悉く維新到達の手段、殊に日清戦争・北清事変・日露戦役・世界大戦参加・満洲事変等の如きは、皇道布施の大業にして、中大兄皇子の入鹿誅戮・大楠公の高時高氏征伐・明治維新の幕府討滅と何等異るなき 皇謨顕現の維新なり。世上維新とし言えば、所謂国内的に考察するを例となすも、是れ國體を知らざるの痴論、伏わぬ輩に対する膺懲が戦争なり、維新なり。境の内外は問う所に非ず、共に維新なり。風碧落を吹いて浮雲尽き、青山に上る玉一団、雲尽きぬれば、元より空に有明の明徳は、本来の真姿を露呈し、大義は歴々分明となる。
大義に立脚して日進日新、明け行く空の如く、向上の一路進んで止まず、是れ維新成就の根本方策なり。古殻を超出して一大復古をなすの秋に方りては、一大果断非常の人材を要す。是れ亦独裁人物の謂ひにあらずして、勤皇絶対第一等の人物を指すこと論を待たず。此の殉忠の大人物を廟堂に網羅して、翼賛の聖責に任
ぜしめ、内を治むるに、 詔勅を大綱となして諸(もろもろの目を編むを以てし、
之を中外に施すを外交の大方針となし、以て内外打成一片、億兆一心、天壌無窮の 皇運扶翼に邁進すること、維新成就の秘法なり。捨身滅賊此の秘法を実行して止まざれば、軈て 天皇を主・師・親と仰ぎ、人類一和、兆民其の堵(と)に安んずるの 皇謨は実現成就し、維新は完成せらる
るなり。
吾子には散れと教へて己れ先づ
嵐に向ふ桜井の里
大楠公の偉大なる一に茲の所たり。「父なき後は必ず高氏の天下だ、其の節汝が自己の一身を全くせんと欲し、禍福を計較して利に嚮い、大義を忘れて我家多年の忠節を失い、以て彼に隷属し、我が祖先の名を辱め汚すが如き行為があつてはならぬ、我汝を此の世に留め置くは親子の情に絆され、汝を不便に思つてのことに非ず、唯々 大君のために滅賊のために汝を残すのだ」と。挙世悉く魔賊たりとも、正道を踏んで不退転、最愛の吾子をも此の荊棘の難道を歩ましめんとする大楠公の大愛大悲、親子相伝以て朝敵を滅せんとす。而かも死に臨むや、七生滅賊を末期の一句となす。釈氏によれば、「罪業深き悪念に似たれども」と詳知しながら、敢て此の辞世の一句をものす。嗚呼、壮烈殉皇の義心、一点私心あるものゝ企て及ぶ所に非ず。楠公逝いて六百年、今何処にか其の生を受く、誰人か其の衣鉢を継ぐ。禅家に於ては、「其の嗣を得ざれば、如何なる聖者も堕地獄の罰を受く」と、其の嗣法を得ることは、大法護持のために斯くも厳乎として尊き極みとせられあり。古来兵法乃至芸道諸家の極意相伝亦然り。況んや無比の正法國體守護のために其の嗣を得ることは、最緊最要最重最大の事にして、嗣法の資に於て吾子を以て好適となせる正成公に学べ。身も心も譲り与ふべきは吾子なり。児の教育を他に全委すべからず。子を教ふることは親の努むべき喫緊の責務にして、大慈大悲大愛の至極なり。全力を傾尽して殉皇の大節を鍛錬伝授すべし。
教育に従ふもの、又維新遂行の人物養成を以て念願とせよ。教育の尊厳全く茲にあり。若し其れ吾児にして其の嗣たるに適せざれば、青年乃至後世の士に此れを選ベ。「見、師と等しくして師の半徳を減じ、見、師に過ぎて始めて譲るに堪へたり」、一世の智勇を傾倒して出藍の後嗣を作れ。
正に七生滅賊の実行なり。斯くして始めて、天壌と共に窮りなく維新完成への一途を驀進し得るなり。然らずんば七生滅賊も空論なり。無窮の皇運扶翼といふも勇ましき一時の空声・空念仏に終るのみ。上下一体皇國は今やこの一箇の殉皇純忠の火団と化し、 天業を恢弘し、 皇道布施の世界維新に邁進せよ。少くも東亜の維新即ち 天皇を盟主とし奉る東亜の結成に奮進せよ。而して漂へる人類を救へ。一人を済へば一人の維新、十人を度すれは十人の維新、一国を救えば一国の維新なり。
頼三樹三郎の刑死に遭うや
わが罪は君が世思ふまごころの
深からざりししるしなりけり
平野二郎国臣
今更にわが身惜しとは思はねど
心にかかる君が世の末
同
山守とならんはかなき我が身かは
世をなげきてぞ憂目をもみる
(昭和一一、一二、五)