暗闇に一人立つの蒼井阿仁一、高校教師だ。あたりを見回しても何にも見えない。見えるのは自分自身のみ。
「…これは。なんだかいやな予感がしますね」
「いやな予感ではありません。実際いやなことが起こります」
いきなり話しかけられた阿仁一。後ろを向くと前に見たことのある人物がいた。
「おや、落花さん。あなたもここにいらっしゃるとは…」
「私としては酷く心細いです。だってあなたといると…」
「えあぁいやまぁ、こ、今回はそんなことなんてないと思いますが…ねぇ」
暗闇の中で微妙な沈黙が流れる。落花の凛とした顔が、このときばかりはすこし儚げに見えた。
「と、とりあえず、ここから動かなければなんだって起こりようが…」
阿仁一がそういった瞬間だった。二人はふっと足場を失い、暗闇を行く当てもなく落下しはじめた。
「え?あ?あら?うわああああ!!」
「だ!だから言ったんです!あなたがいるとろくな事が起きないって!」
(はっ)
「絶望した!この手の突拍子もない物語の始まり方に絶望した!!」
二人の絶叫は暗闇に吸い込まれていった。
次に目を覚ましたとき、阿仁一は頭から布団に突っ込んでいた。どうやらコンクリートの屋根を突き破って室内に落下したらしい。
「お…落花さん?大丈夫ですか?」
「う…あ、あいにく…」
落花は布団の上に腕を乗せてそこに乗り上げた。二人とも血まみれだった。
「いやあ、毎度のことながら申し訳ありません。…それと、ここは一体どこなのでしょうか…」
よろよろと立ち上がった阿仁一の目に、一枚の紙の切れ端が目に映った。