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肉吸い - 肉吸い 肆

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📍 肉吸い 肆
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静寂に飲み込まれる夜、宿の玄関からは宿に止まっていた客人が賑わいの声が、溢れている




その様子を少女は二階から眺めていた




がやがやっと騒ぐ客人の壁の中に、蛍と風吹の姿もある


その客人達が、目を集めている先には瞳に鋭い光を宿らせる武士と、少し太り気味の武士が見える




「ここの宿で、私達にしたら雲の上のお方の京香(きょうか)様と鈴香(すずか)様に会えるなんて奇遇だわ!」



「お美しい方なんでしょうね!」



そんな声も客人の間から飛ぶ


京香様と鈴香様という二人は姿はないが




『…京香様と鈴香様…か…』





将軍に直接仕え、一万石以上の「知行」と言われる所領(土地)をもつ武士を?W大名?Wと言われる


そのような大名の中でも、多くの所領を持っていることで有名な?W高坂英一郎?Wの娘が、京香様と鈴香様らしい





なんでも





大名屋敷に将軍が訪ねた時に使う専用の門?W御成門?Wと呼ばれる非常に華美な装飾を施した門が、設けられる


その高坂英一郎の大名屋敷の御成門を見た将軍は、一番胸を撃たれたとか




そのような、風の噂をふわりと聞いた




「また、来て下さり誠に、ありがとうございます。」



絢野の声の先に引きつられた先には



天女が舞い降り立ったように、二人の回りには神々しい輝きに満ちているような光を放っていた



その艶麗さに、声を上げる者はいない



「いいえ…ここに来たらこの宿にするって決めているのよ…ね?鈴香?」



「はい。姉上様」



その声に客人は声を出すのかを忘れたように静まり返り、誰もが心を奪われている




________________________



「退魔師、まだ居たのかい?」



京香様と鈴香様を部屋へ案内し終わった絢野が、未だに玄関の方を眺める形で居る少女に声を掛けた



『…少し…聞きたいことが…ね…』



「なんだい?」



『…京香様と鈴香様の回りに居た…あの武士は…?』



「あの武士達は、高坂英一郎様が一番信用している大名さ。そして、ここに居るのは京香様と鈴香様の護衛のためだよ。護衛っと言ったら必ずあの二人を選ぶんだよ…」



『…随分と…詳しい…』



「まぁ、長いこと来てくれてるから、仲良くなったんだよ」



『…成る程…そうですか…ありがとうございます…』



軽く頭を下げ、絢野の横を通り過ぎこの場を去る少女に絢野は、今にも消えそうな声を発した






「……あんた…笑わなくなったねぇ」









突如のことに、少女は歩みの音は静かにに止まる




「五年程前までは、ちゃんと笑って居たじゃないか…何かあったのかい?」



少女は、ふと短く瞼を閉じる




瞼を押し上げたその先に覗かせる瞳は一瞬、今にも、少女自身が壊れてしまいそうな深い哀しみに浸ったていた



『………五年の月日も流れば…変わることもありますよ…』




「……でも」



『…大丈夫ですよ…たいしたことは…ありませんから』



少女は、絢野の言葉を遮って言い切る言の葉は強い


そのことに、無理するんじゃあないよ…と力ない言の葉を散らせた絢野は階段を踏みしめ下って行く



一人になれば、針を落としても響きそうな位、静けさが満ちた廊下には、格子から漏れる優しい光は、少女に降り注ぎ落とす




熟れた果実より尚、柔らかく、かぐわしい香りが漂ってきそうな愛らしい唇から



『……』




口を開けて、何かを発した



しかし、格子の隙間に入って来た風に持って行かれた少女の肉声は、虚空に溺れ消える




その瞳にいつもの光はない




少女は、冷たい空気を肺に息を溜めて吐き出し夜の色も深くなったのを、確認し、自分の部屋へと体を向けた