『石楠花物語小3時代』
○嵐山
田夢美代(9)、小口千里(9)おきゃっこをしている
美代「ねぇ千里ちゃん、次は車ごっこしない?」
千里「車ごっこ?それなあに?」
美代「千里ちゃんが車の運転手、美代は歩いてる人。」
うっとり
美代「美代ね、憧れなの。大きくなったら、交通スタントのお姉さんになりたいの。」
千里「何それ?」
美代「見てて。」
美代、交通事故を再現。迫真の演技。
千里、息を飲む。
千里「美代ちゃん?ねえ美代ちゃんったら!!」
美代「・・・。」
千里「美代ちゃん!ねぇ、誰か!美代ちゃんが!」
美代、起き上がる
千里「美代ちゃん!?」
美代「どうだった?」
千里「どうだった・・って?」
美代「だから、これが交通スタントマンよ。美代、演技上手いでしょう」
千里「(泣きそう)美代ちゃんのバカ!!僕、美代ちゃんが本当に死んじゃったかと思ってとっても怖かったんだよ!」
美代「千里ちゃんごめんね。泣かないで。」
慰める
美代「美代、スタント教室に通い出したの。だから、この間レッスンしたのを千里ちゃんにも見て欲しかっただけなのよ。」
千里「もう、美代ちゃんなんて知らない!!」
泣いて帰る
美代「千里ちゃん・・・」
○小口家
夕食。小口珠子(31)、小口懐仁(33)大笑い
小口「おいおい千里、美代ちゃんだってやる前にこれは演技だって言ったんだろ?どうしてそんなに怖がる事があるんだ。」
千里「だって・・・」
珠子「せんちゃん、あなたはちょっと怖がりすぎよ。もうちょっと強くならなくちゃね。」
千里「ママまで・・・僕、とっても怖かったんだよ!」
退室
千里「いただきました。」
珠子、小口、顔を見合わせてやれやれ
***
居間。千里、テレビを見てホットミルクを飲んでいる。
珠子「せんちゃん、明日は社会見学なんでしょ。いつまで起きているの?もう寝なさい。」
千里「はーい、」
珠子「叉そんなもの飲んで、おねしょしちゃうから寝る前には飲んだらダメっていつも言ってるでしょう。」
千里「はーい。お休み。」
***
寝室。千里、眠ってる
F・I
○交通博物館
児童たち、説明を聞いている。千里、寝不足。佐久間若惠(28)、数裏琢磨(30)
***
休憩時間
美代「千里ちゃん、大丈夫?どうしたの?」
千里「ちょっと寝不足・・・(うとうと)」
美代「先生!佐久間先生!」
佐久間先生「どうしたの?」
美代「千里ちゃんが!!」
佐久間先生、千里を見る
佐久間先生「千里君、どうしたの?」
○同・休憩室
千里を座らせる
佐久間先生「では、お昼休憩が終わったらお兄さんやお姉さんの演技が始まるから、それまでゆっくりしていなさい。ご飯は食べれる?」
千里「うん、先生。」
***
児童たち、昼食。
***
午後
数裏先生「それでは、これから交通スタントの劇が始まります。それでは演じてくださるお兄さんとお姉さんにご挨拶をしましょう。」
児童たち「よろしくお願いします。」
演技開始
迫真の演技。拍手や歓声、悲鳴が起きる
ラストの名演。千里始め、児童ら全員が泣く。最後、大拍手。美代、うっとり
○帰り道
ビクビクして歩く千里。園原宗一郎(9)、清原元助(9)、藤本みゆき(9)美代、千里を宥める
美代「千里ちゃん、大丈夫よ。先生やお兄さんお姉さんのいっていた通りに気を付けていれば事故になんて遭わないわ。」
宗一郎「そうだよ。あんまりビクビクしてても良くないぜ。」
元助「楽しく行こうよ。それじゃあいつもの千里君らしくないよ。」
千里「みんな・・・」
元助「明日の誕生日会には僕らみんなで行くからさ。元気だそうよ。」
美代「美代も、千里ちゃんの好きなお花やぬいぐるみ持っていくね。」
宗一郎「僕も。」
みゆき「お。俺も仕方ないからいってやらぁ。」
千里「みんな、ありがとう。僕、美味しいお料理作って待ってるね。(にっこり)」
○小口家
子供の声「こんにちはぁ!!」
千里「あ、来た!!はーい!!」
***
居間。テーブルにご馳走
美代・宗一郎・元助・みゆき「わぁ!!」
珠子「どんどん食べてね。実はこれ、みんなせんちゃんの手作りなのよ。」
美代・宗一郎・元助・みゆき「わぁすごーい!!」
みゆき「へ、お前なかなかやるじゃねぇか。ん、(包みを差し出す)これ、俺からだ。受け取りな。」
千里「ありがとう!みゆきくんっていいやつなんだね、本当は。」
みゆき「う、う、う、うっせーよ。」
元助「これは僕から。」
宗一郎「これは僕。」
千里「みんなありがとう!」
美代を見る
千里「美代ちゃんは?」
美代「(にっこり)千里ちゃん。」
大きなテディベアと花束
美代「お誕生日おめでとう。」
千里「わぁ!美代ちゃんありがとう!!」
抱きつく
千里「僕美代ちゃんの事大好きだよ!」
美代「美代も。千里ちゃんが大好き!」
***
5人「いただきまぁす!!」
食べる
宗一郎「この卵焼き、とっても美味しい!」
元助「本当にこれ、君が作ったの!?」
千里「うん、そうだよ。美代ちゃん、」
美代、シュークリームを食べる
美代「これも手作りなの!?」
千里「うん!僕シュークリーム作るの好きなんだ。もちろん食べるのも大好きだけど。」
美代「とっても美味しい!ねぇ、美代の誕生日にもシュークリーム作ってくれる?」
千里「もちろんいいよ!作ってあげる。いつ?」
美代「11月3日よ。」
千里「僕のピアノの発表会だ!」
5人、にこにこ。千里、ピアノを弾く。他4人、笑って拍手。
***
夕方。4人、帰る。
珠子「せんちゃん、今日は良かったわね。」
千里「うんっ!」
珠子「お夕食はまだお腹いっぱいなんでしょ。先にお風呂に入って宿題やりなさい。」
千里「はーい!!」
***
寝室。勉強机に手紙
千里「ん?(手に取る)千草オッパからだ!!」
開ける
千里『千里へ。元気か?こっちもなんとかやっているよ。今日はお誕生日だね。おめでとう。千草より。』
千里「千草オッパ・・・覚えててくれたんだ。」
千里、にこにこ。着替えを持って退室
○河原町こざくら小学校・教室
千里、教室の前に出る。ビクビクしている。佐久間先生。
佐久間先生「千里君、今日のテスト・・・あなたは(にっこり)」
千里、目を閉じて下を向く
佐久間先生「大変良くできました。先生嬉しいわ。」
千里「え?」
佐久間先生「先生も目を疑っちゃったんだけど・・・満点です。」
千里「え!?」
児童たち、ざわざわ
○小口家
千里、帰宅。
千里「ただいま。」
珠子「千里、今日テストだったんでしょ。お見せなさい。」
千里「ママ・・・」
珠子「早くっ!」
千里「はい・・・」
恐る恐る答案を渡す。珠子、見る
珠子「まぁ・・・(震え出す)せんちゃん、あなたって子は・・・」
○デパート
千里と珠子。珠子、ご機嫌
珠子「せんちゃん、やればできるじゃないの!ママとっても嬉しいの。だから今日はお祝いよ!」
千里「やったぁ、ありがとうママ!」
珠子「これからも今日の事を忘れずに、この調子で頑張りなさいね。」
千里「はいっ!」
珠子「まぁ、」
笑う。
珠子「せんちゃん、このままやっていけばいい大学に入れるわよ。」
千里「うんっ!!僕頑張るよ!ところでママ、今日は何を買うの?」
珠子「今日?」
微笑む。
珠子「勿論、せんちゃんのピアノの発表会のお洋服よ。」
千里「僕の?やったぁ!!」
るんるん。
○小口家・居間
千里、鏡の前。服を着てポーズを決めている。
珠子「せんちゃん、よく似合っているわよ。ママの王子様!格好いい!!」
ベビーベッドに小口頼子が寝ている。
珠子「ねぇ頼ちゃん、お兄ちゃん格好いいねぇ。」
千里、るんるん。
千里「ねぇママ、ピアノの発表会の日、美代ちゃんのお誕生日なんだよ。」
珠子「まぁ!!そうなの?」
千里「うん。だから僕、美代ちゃんに僕のお菓子焼いていってあげるの。」
珠子「いいじゃないの!!美代ちゃん喜ぶわよぉ!!せんちゃんは、美代ちゃんの事が大好きなのね。」
千里「うんっ!!」
小口「ただいま。」
珠子「あ、パパだわ。はーい、お帰りぃ。」
小口、入ってくる。
珠子「どう、パパ?」
小口「おぉっ、」
千里を抱き上げる
小口「格好いいじゃないか千里!!これでピアノの発表会をやるのか?」
珠子「えぇ、勿論」
***
小口「ほー、千里が満点を?凄いじゃないか、よく頑張ったな千里。」
千里「だからママ、僕にピアノの発表会で着るお洋服買ってくれたんだよ。」
珠子「そう、一番高いの奮発しちゃったわ。せんちゃんのために。」
千里にほおずり
珠子「こんなにもちもちお肌で、ママの王子様はどうしてこんなに可愛いのかしら。」
小口「おいおい珠子、」
笑う。
小口「誉めるのはいいが、お前は少し親バカすぎる。」
珠子「まぁ、親バカで何がいけないの?」
千里の頬にキッス。
珠子「だってせんちゃんはママの可愛い一人息子なのよ!!ねぇ坊や!!」
小口「全く!!」
小口笑いながら退室。珠子、千里にいちゃいちゃ。千里、照れ笑い。
○柳平家
家族9人。夕食時。
柳平麻衣(9)「え、京都?」
柳平けいと「あぁ、急に父さんの仕事の都合でな、数日間行くことになったんだよ。ほこでだ。折角だから家族みんなで旅行をしないかい?」
柳平紡(9)「え、私達もいいだ?」
柳平糸織(9)「連れてってくれるの?」
麻衣「行く行く行く行く、絶対にいくっ!!」
柳平、微笑む。
柳平紅葉「でもあなた、本当に子供達も一緒に連れていっていいの?お仕事ですのに。」
柳平「何ぁに、構わんよ。私が仕事の時は適当に何処か見ていればいいさ。それに、子供達も小さいんだ、こんな時は今しかないんだよ。みんなでわいわい行った方がずっと楽しいじゃないか。」
八重子「それもそうね。ね、正三。」
正三「あぁ!!」
紅葉「あなたたちは、」
笑いながら
紅葉「受験のお勉強はしてなくていいんですか?」
八重子、正三、顔を見合わせる。
紅葉「冗談よ、みんなで一緒に行きましょう。」
正三「母さん、こんな楽しい気分になっているときにまで勉強の話はしないでくれよ。」
八重子「そうよ、母さん。」
紅葉「そんな顔しないでよ、二人とも。」
わいわいと食べる。
○京都・ビジネスホテル
11月3日。柳平家家族。
柳平「みんなお疲れ、それでは…正三と八重子はツインルームでいいね。」
正三「わかった。」
八重子、正三を睨む。
八重子「正三、あんた何か嫌らしい事考えてないわよねぇ?府設楽な事…」
正三「ねぇーよ!!」
小粋にウインク
正三「いくら姉貴が美人でも、俺は姉妹に手を出す様なけだものじゃねぇよ。」
柳平、紅葉、笑う。
柳平「で、あすかはまだ赤ん坊だし、と子もまだ小さいから、私たちはみな、川の字で寝よう。」
三つ子「やったぁ!!」
紅葉「決まりね、とりあえずはまず一休みしてから何処かに行きましょう。」
八重子「なら私がお茶入れるわね。」
紅葉「ありがとう、八重子。」
八重子、お茶を入れる。
正三「姉貴はふんとぉーに、何やらせても」
にやにやうっとり
正三「美人だよなぁ。」
八重子「こらっ、正三!!」
家族、笑う。
○コンサートホール・控え室
珠子千里の身嗜みを整えている。
珠子「よしっと、せんちゃん出来たわ!!格好良く決まったわよ。」
千里「ありがとう。美代ちゃんは?」
珠子「発表までまだ時間あるもの。まだ来ないんじゃないかしら?」
千里「そうかっ!!」
千里、そわそわ。手にはプレゼント包み。
千里「まだかなぁ、まだかなぁ、」
珠子「せんちゃん、そんなに焦らないの。それはまだ置いておいていいでしょ。」
千里「だってぇ、」
恥ずかしそうにもじもじ。
珠子「宗一郎君と、元助君は?来てくださるの?」
千里「うん、二人も来てくれるって言ってたよ。」
○田夢家
美代と田夢風(40)
美代「ねぇお母さん!!早く早く!!」
母親「まだ大丈夫よ。千里君の出番までにはちゃんと着きますからもう少し待っていなさいっ!…」
美代「もぉっ!!」
部屋を出る。
母親「美代っ、ちょっと何処行くの?」
美代「すぐ近くのお花屋さんよ。千里ちゃんにあげるお花買ってくの。」
母親「そう、気を付けていきなさい。早く戻るのよ。」
美代「はぁーいっ!!」
走って出ていく。
○河原町通り
美代、るんるん歩いている。柳平一家とすれ違う。
麻衣「なぁなぁ、まず最初は何処いく?」
糸織「僕なんか、まずは食べたいな。」
紡「京都グルメぇ!!」
麻衣M「千里君、どの辺に住んどるだら?」
○花屋
美代、入店。
店員「いらっしゃいませ!!」
美代「お花下さい。ブーケにしてね。」
店員「畏まりました。お使いものですか?」
美代「はい!!」
店員「何のお花にしましょうか?」
美代「千里くん、ユリと石楠花、それとバラが好きなの。出来る?」
店員「えぇ、勿論出来ますよ。少々お待ちくださいね。」
店員、花を作り出す。美代、頬を紅くしてにこにこ。
○コンサートホール・廊下
正装をした千里。うろうろ。
珠子「せんちゃん、まだそこにいたの?あなたの出番、もうすぐなのよ?早くおトイレ行って準備なさい。」
千里「うん・・・。」
心配そうに首を降る。
千里「だって美代ちゃんが、」
珠子「約束したんでしょ?心配しなくてもちゃんと見に来てくれるわよ。」
千里「でも、でも」
うろうろ
女性の声「小口千里くん、千里君いますか?」
珠子「ほらほら先生も心配してらっしゃるでしょ。」
千里「はい・・・」
呼ばれた方へかけていく。
***
千里の演奏。会場、美代の姿はない。
***
終わる。会場から拍手。千里、一礼をして戻る。唇を噛んで泣きそう。
***
ロビー。千里、泣きながら歩いてくる。
千里M「美代ちゃん、美代ちゃん約束したのに。どうして来てくれなかったの?ちゃんとお菓子焼いてきたんだよ。なのに酷いよ、約束破るだなんて酷いよ。」
入り口から宗一郎、元助
元助「おーいっ、おーい、」
宗一郎「千里君ーっ!!」
千里「ん?」
涙を拭って顔をあげる。
千里「二人とも、今来たの?」
元助「あぁ。ごめんね千里君、ピアノ聞けなくて…」
宗一郎「それより大変な事になってるんだ!!ちょっと来て。」
千里「え、へぇ?」
元助と宗一郎、千里の手を引いて会場を出ていく。
千里「何だよぉ、ちょっと!!一体何処へ連れていくんだよぉ!!」
○京都病院・霊安室
千里、元助、宗一郎。
千里「え、何ここ?」
恐る恐る入室。ベッドに眠った美代と側に座る風。
風「あ、千里君。あなたも来てくれたのね。」
千里「おばさん、美代ちゃんは?何処にいるの?」
風「ごめんね、ピアノの発表会に行けなくて。あのね、」
風、美代の顔布を外す。美代、
眠る。
千里「美代ちゃん?」
蒼白。風を見る。
千里「美代ちゃんは?」
母親「あなたの発表会にお花を持って行くって言って、お花屋さんに行った帰りに車に跳ねられたの。緊急の処置はして頂いたのですけど助からなかった。そのまま逝ってしまったわ。」
千里「じゃあ・・・美代ちゃんは、死んじゃったって事?」
涙も流さず放心状態
千里「美代ちゃんの誕生日だから、美代ちゃんの為にお菓子焼いて持ってきたのに、美代ちゃんが僕との約束破るだなんて。」
清原「千里君…」
園原「もう行こうよ…」
千里「うん・・・。」
立ち尽くす千里。
○小口家
寝室。明かりはついていない。千里、窓のさんに座ってぼんわり
珠子「せんちゃん…」
千里の肩を抱く。
珠子「美代ちゃんの事、辛かったわね。切ないわね。」
抱き締める。
千里「ママ・・・」
千里、泣かずにそのまま。
珠子「さぁ、ごはんにしましょうか?」
千里「うん、」
***
食卓。千里、食べない
珠子「あら千里、食欲ないの?」
千里「分からない・・・ごちそうさま。」
○河原町こざくら小学校・教室
千里、笑顔で入る。
千里「みんなおはようっ!!」
クラスメートたち「おはよう…」
元助「千里君。」
宗一郎「おはよう…」
千里、席につく。隣を見る。誰もおいない席に白百合の一輪挿しが置かれている。
千里M「美代ちゃん、本当に死んじゃったんだね。」
***
三時間目
彫刻刀版画。千里、木を掘っている。
千里「あ」
手を見る。血が溢れる。
千里「先生、佐久間先生」
佐久間先生「千里君、どうしたの?まぁ・・・」
千里の元へ飛んでくる。
佐久間先生「一体どうしたの?ほら、手を高いところに上げて、医務室行きますよ。」
千里の手をあげさせてつれていく。クラスメート、ビックリして千里を見つめる。
○京都病院・診察室
千里、ベッドに寝かされて指を縫われている。
○同・待ち合い室
数時間後。千里、佐久間先生、珠子
佐久間先生「お母さん、本当に申し訳ございません…私がきちんと千里君を見てあげなかったからこんな事に」
珠子「いえいえ、先生のせいじゃありません。家の子が不注意なもので。こちらこそご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした…。」
佐久間先生「千里君、君の怪我大分深くやっちゃった見たいね。」
千里「・・・。」
指を見る。
佐久間先生「千里君、しばらくは安静にね、今度からは気を付けましょう。先生も君の事を気にかけるようにするわね。」
千里「ありがとうございます、。ご心配お掛けして先生、ごめんなさい…」
佐久間先生「いいのよ、大丈夫。気にしないで。それより君がもっと大事にならなくてよかった。」
○河原町こざくら小学校・家庭科室
ミシン裁縫。
千里「あぁっ!!」
指を縫う。
○京都病院
千里、治療を受けている。
○小口家・台所
珠子、小口、千里、夕食中。千里の手、包帯だらけ。珠子に食べさせて貰っている。
珠子「せんちゃん、今までのあなたらしくないわねぇ。」
小口「きっと美代ちゃんの事、よっぽどショックが大きいんだ。」
千里「美代ちゃんの事はもう仕方ないよ。別になんとも思ってない・・・。」
珠子「せんちゃん・・・」
自分が食べたり千里に食べさせたり
珠子「とりあえずまず、その手を早く治してしまわないとね。」
小口「そうだな。そうしないとなんにも出来ないぞ千里。」
千里の頭を撫でる。
○教会前
5日後。外の階段。黒い礼服の千里が階段に腰かけている。そこへ麻衣。
麻衣「?」
近付く。
麻衣「どうした?ほんねなところに座って。」
千里、ビクリ。
麻衣「あ!」
千里「あ。」
顔をあげる。
千里「麻衣ちゃん、」
麻衣「あんた、せんちゃんよね。どーゆー?」
隣に腰かける。
麻衣「(服装をみる)ひょっとして誰かのお葬式?」
千里「そう。」
暗い顔で放心状態。
千里「麻衣ちゃん・・・。」
麻衣M「せんちゃん?」
麻衣、心配そう。
***
話を聞く。麻衣も、涙をぬぐう。
麻衣「ほんなこんが・・・」
千里「うん。でも大丈夫だよ。」
放心のまま。
千里「麻衣ちゃんと話していたら、少し元気になった。」
麻衣M「全然元気そうには見えないぞ君・・・。」
千里「ところで、麻衣ちゃんはどうして京都にいるの?」
麻衣「私?私は、父さんの仕事の都合。昨日から一週間ここにいるの。」
千里「そうか。」
麻衣「そして歩いていたら偶然あんたに会った。ところで、お母さんは?中?」
千里、頷いて会場を指差す。
麻衣「せんちゃん、辛いこん話してくれてありがとう。でも、君は入らなくていいの?」
千里「・・・。」
麻衣「でも、最後に美代ちゃんと会った方がいいと思うに。あんたが後悔するわ。お別れは辛いけど、大好きだったんだら?」
千里「うん・・・。」
麻衣、千里を支えて入る。
○教会内
葬送の歌。参列者たち。
棺が運び出される。全員、泣いて見送る。
千里「美代ちゃんっ!!」
駆け寄る。
千里「本当に、本当に死んじゃったの?もうこれでお別れなの?」
棺を覗き込む。
千里「美代ちゃん…」
歌い出す。
千里「美代ちゃん、覚えてる?昔、この歌一緒によく歌ったよね。」
棺が運び出される。
千里「美代ちゃん!!」
棺、車に入る。麻衣が飛んでくる。
麻衣「せんちゃんっ!!」
泣いて抱き締める。
麻衣「辛いわね。いいの、いいのよ。思いっきり泣いていいの。」
千里、泣かない
千里「泣けないんだ・・・。」
麻衣「え?」
千里「胸の中がすごく苦しくていたいのに、涙が出ないの。泣きたくならないの」
珠子、元助、宗一郎、かけてくる。
元助「千里君っ!!」
宗一郎「千里君!!」
珠子「せんちゃんっ!!」
麻衣を見る。
珠子M「この子・・・」
千里「でも、でも美代ちゃんに歌を歌って・・・車に乗せられちゃう美代ちゃんをみたら僕、僕・・・」
麻衣に顔を埋めて泣き出す
珠子「せんちゃん・・・(涙をぬぐう)」
○ホテル・一室
バス・トイレ。麻衣一人。
麻衣「…。」
便器に座り、トイレットロールに刺繍をしている。
ドアを叩く音。
糸織の声「おいっ麻衣?麻衣なんだろ?早く出てくれよっ!!」
麻衣「まーだーだーめっ。今忙しいの。」
糸織「忙しいって、トイレで何がほんねに忙しいんだよ!!こっちは使いたいんだよ!」
麻衣「うるさいっ!!」
糸織「へーもれそうなんだって!!なぁ頼むよ!」
麻衣「ほいだったらそこでもらしな。」
そこに紡。
紡「どーゆー?」
糸織「なぁ、父さんと母さんは?つむ、君からもなんか言ってやってくれよ!!」
紡「だで何を?」
糸織「トイレだよ!!麻衣のやつがちっとも出てくれないんだよ!!」
紡「ほいだったら…」
指差す。
紡「ん、廊下のトイレ行ってこいよ。」
糸織「あ、ほーか。」
麻衣、出てくる。
糸織「やっと空いた!もれる!!」
飛び込む
糸織「ん?」
刺繍トイレットロールを見て目を細める
糸織「な、んじゃこれ?」
麻衣と紡。お茶を飲みながら
紡「んで?どーゆーだ?何かあんたらしくないに。話してみ、何かあるだら?」
麻衣「可哀想な男の子…」
紡「は?」
麻衣「今日な、さくら組のせんちゃんに偶然あったの。あの子、京都の子だら。」
紡「ふーん。で?」
麻衣「すぐ上の教会の前であったんだけどな」
事を話ながら泣いている。
麻衣「私、せんちゃんの泣いた顔が忘れられなくて可哀想で、可哀想で。」
紡「麻衣・・・」
しんみり。
***
糸織が出てくる。
糸織「あースッキリした。何の話しとっただ?しんみりとしちゃって。(鼻を鳴らす)それよりさぁ」
刺繍トイレットロールを見せる。
糸織「麻衣、これ君だろ?何だよこれ?」
麻衣「あぁほれ?トイレットロールに刺繍してみた。綺麗だら…。」
糸織「綺麗だらって君、わざわざこんなこんするために何時間もトイレの中に立て籠ってたのかよ?」
糸織、やれやれ。紡、笑いを堪える。
○河原町こざくら小学校・教室
歌の練習。千里の伴奏。
クラスメート「あーあ。美代ちゃんがいれば美代ちゃんがピアノだったのになぁ。」
クラスメート「本当、本当。ピアノは千里君か。」
クラスメート「仕方ないよ、美代ちゃんがいなくなってピアノマドンナがいなくなったんだもん。ただ上手いだけの千里君にやらせるしかないんだ。」
千里、睨む。
佐久間先生「こらこらみんな、そういう事言ってはいけません。はい、真面目にやって。続けますよ。」
再会。千里、にこにこと伴奏をする
***
千里M「急にトイレ行きたくなってきちゃった・・・」
キョロキョロ
千里M「どうしよう。先生に言おうかな」
もじもじ、笑顔が消える。
千里M「でも後もうちょっとで授業も終わる…」
蒼白で泣きそう。
手を止めてズボンを押さえる。
佐久間先生「千里君どうしたの?」
千里「先生・・・」
半ズボンが濡れる。
千里「もれちゃった。」
泣きそう。
佐久間先生「みんなは少し待っていなさい。」
千里の手を引いて教室を出る。
○同・トイレ
千里、用を足す。近くに佐久間先生。
佐久間先生「全部もれちゃう前で良かったわね。でもズボンとパンツは替えないとね。」
千里、泣き出す。
佐久間先生「泣かなくていいの。トイレ行きたくなったら授業中でも行っていいのよ。どうして早くに言わなかったの?」
佐久間先生、千里を抱き上げる。そのままトイレを出る。
***
帰路。
肩を落としてうつ向く千里。元助、宗一郎。
元助「元気出しなよ千里君、大丈夫だよ。」
宗一郎「仕方ないよ。我慢できなかったんだよね。」
千里「・・・。」
宗一郎「まだ僕ら小学生だもん、そういう事だってあるよ。大人だって時々おもらししちゃうことがあるってパパが言ってたよ。」
元助「僕のパパだ。」
宗一郎「本当に?」
元助「うん。お酒飲んで帰ってくると、いつもお家でおもらししちゃってママに怒られてるよ。」
千里、笑う。
千里「僕のパパもお酒飲むけどそんな事ないよ。」
元助「千里君、やっと笑ってくれた!!」
宗一郎「良かった!!ねぇ、この後君の家に遊びに言っていい?」
千里「勿論、いいよ。遊びに来てよ。」
宗一郎、元助「うんっ!!」
宗一郎「じゃあね、」
元助「また後でねぇ、」
千里「うん!!」
別れる。千里、一人で歩く。
千里「?」
背中や腰を動かして頭をかしげる。
○小口家・千里の部屋
千里、元助、宗一郎。白妙カルタをしている
千里「あまのはらぁ、ふりさけみればかすがなるぅ、みかさのやまにいでしつきかもぉ、みかさのやまにいでしつきかもぉ」
宗一郎「はいっ!!」
元助「千里君上手いっ!!」
千里「え?」
元助「その百人一首の読み方だよ、何処で覚えたの?誰に教えて貰ったの?」
千里「いやぁ、あのぉ、そのぉ」
照笑い。
千里「いやはや。」
三人、おやつを食べたりわいわい。
***
宗一郎、元助、帰る。手を振り玄関で別れる。
千里、怠そうに体中を触る。
***
珠子、電話。
珠子「そうですか、はい、はい、わかりました。伝えておきますので、ありがとうございました。」
***
夕食時。
珠子「今日、石楠花平病院から電話でね、茅野のお父さんが倒れたんですって。」
小口「え?それで父さん大丈夫なのか?」
珠子「二、三日様子を見て退院って言ってたわ。」
小口「全く、父さんも無茶するからな。年を考えろって。」
千里「・・・。」
千里の食事、半分以上残っている。
千里「ねえパパ、僕さっきから身体中がピリピリ痛いんだけど・・・」
小口「ピリピリ?何だ、神経痛か?」
千里「分からない、ご馳走さま。」
退室。
珠子「あら千里Z?せんちゃん、せんちゃんっ?」
食べ残しを見る。
珠子「まぁ、半分もご飯食べてないじゃないの、一体どうしたって言うの?」
心配そう
珠子「いつものせんちゃんらしくないわ。ねぇあなた。」
小口「あぁ、そうだな。」
○同・寝室
千里、電子ピアノを弾いている。
21時。
千里、ピアノをやめてドアを開ける。
千里「ママ、ママぁ?」
しーん。
千里「ママ、ママってば、もう寝ちゃったの?」
珠子、別部屋から顔を出す。
珠子「どうしたのこんな時間に?頼ちゃんが起きちゃうでしょ。あなたも早くお眠りなさい。明日も学校なんですから!!」
千里「ママ、ちょっと僕のお部屋に来てよ。ちょっとでいいんだよ。」
珠子「何?どうしたの?」
やって来る。
珠子と千里。千里、ベッドに座って胸を押さえている。
珠子「どうしたのせんちゃん?」
額に手を当てる。
珠子「ん、ちょっとお熱があるかしら?待ってね。」
体温計を持ってくる。
珠子「お熱計りましょうか?」
体温計を千里の口に入れる。
千里、体温計を加えながら
千里「ママ…」
嘔吐。
珠子「まぁっせんちゃん!!大変!!」
背を擦る。
珠子「大丈夫?気持ち悪かったの?」
洋服を脱がす。
珠子「ほら、お洋服脱いで着替えないとね、汚れちゃったね。お口濯ごうか。」
千里を着替えさせる
***
千里、布団に横になる。
珠子「落ち着いたわね、良かった。」
千里「ママ、ここにいて。」
珠子「分かったわ、ずっとここにいてあげる。」
千里、うとうと。珠子、千里の体を優しく叩く。
10時
千里、飛び起きる。
珠子「せんちゃんどうしたの?又気持ち悪い?」
千里、再び嘔吐。吐いては収まり吐いては収まりの繰り返し。珠子、泣きそうになる。
そこへ小口
小口「珠子、どうしたんだ?千里っ!!」
千里、ベッドにぐったり。
珠子「さっきからずっと吐き気が止まらないの。お熱もあるみたいで…」
小口「そうかぁ…」
千里の脈拍を図ったり額に手を当てたりしている。
小口「インフルエンザかもな。この間人混みに出たりしたから。体が痛かったり食欲がなかったのもこのせいだったんだな。」
***
千里、寝入る。
小口「やっと落ち着いたか…」
小口「珠子、お前は寝てていいよ、私が起きて千里の側についているよ。」
珠子「私も勿論起きているわ。だってせんちゃんが可哀想ですもの。」
2時
小口、珠子うとうと。千里、目覚めて起き上がる。
千里「ううっぷ…」
嘔吐。
小口「又気持ち悪いか…」
千里の背を擦る。
小口「暫く気持ちよくぐっすり寝てただになぁ。」
珠子「せんちゃん、わざわざ向こうにお口濯ぎに行くの気持ち悪いからママここにボール持ってくるわね。」
小口「千里、お茶いるか?」
珠子「今はダメよ、又吐いちゃうわ。」
千里、半泣き。
4時
千里、珠子、小口。千里、落ち着いて寝入っている。
F・I
(翌朝)
F・O
千里がうっすら目を覚ます。
珠子「せんちゃんおはよう。」
千里「ママ…」
珠子「昨日はビックリしたねぇ。何か食べれる?」
千里「今何時?」
珠子「8時よ。でも今日は学校はお休み。」
千里「ダメ、ママとの約束だもん。行かなくちゃ。」
小口「千里、こんな時はいいんだよ。なぁ珠子。」
珠子「そうよ、せんちゃん。無理しちゃダメ。」
千里、強く首を降る。
珠子「休みなさいっ!!」
千里「嫌だっ!!」
珠子「聞き分けのない子ね。分かりました。では少しだけですよ。」
○河原町こざくら小学校・教室前
珠子と千里、佐久間先生。千里、ぐったり。
珠子「という訳なんです、」
佐久間先生「そうですか。千里君、そんな辛いときに無理して来なくていいのよ。」
千里「ううっぷ…」
佐久間先生と珠子、千里の背を擦る。
佐久間先生「いいですからお母さん、早く帰って休ませてあげてください。」
珠子「分かりました、ありがとうございました…」
佐久間先生「いいえ、こちらこそ。わざわざありがとうございました。お大事に。」
珠子「ほらせんちゃん、行くわよ。お家に帰りましょう。」
千里「うんママ、ありがとう。」
珠子「バカね。具合悪くい時はお休みしていいのよ。」
珠子、千里をおぶって帰っていく。
○宮川長峰小学校・教室
11月。クラスの3/1がいない。
麻衣「ほーいや、流行っとるわね今、」
磨子「インフルエンザ。」
麻衣「健司、あんたは?珍しく今年は元気ね。」
健司「珍しくとは何だよ失敬な!珍しくとはぁ!!」
横井「ふふんっ、確かにだ。」
笑う。
横井「風邪が流行るっつやぁ毎年真っ先に大風引いて休むのは健司、お前だもんな。」
健司「てっめぇ!!」
末子「でも健司、今年はちゃんと予防に心掛けてるってことね。」
磨子「後は、食べ過ぎでお腹壊さんこんだ。」
健司「お前は一言余計なの!!で?」
時計を見る
健司「後ちょっとで休み終わりか。次なんだっけ?」
磨子「国語。テスト。」
健司、ずっこける。
健司「チェッ。何だよ。」
磨子「残念ね、健司ちゃん。」
麻衣「んなら私、トイレ行ってくる。」
磨子「あ、私もぉ。麻衣ちゃん待ってぇ!!」
二人、退室。
チャイムがなる。健司、もじもじ
健司「あ、ヤバイっ!!俺もちょっとトイレ!!」
トイレに走っていく。
○同・男子トイレ
健司一人。用を足している。
健司「あーあ、インフルエンザか。」
額に手を当てる。
健司「こんなときに熱でも出て早退できればいいのに、そう上手くもいかないんだよなぁ。」
○小口家・千里の部屋
千里、重湯を食べる。
珠子「どうせんちゃん、食べられそう?」
千里「うん、ママ…ありがとう。」
珠子「でも本当に良かったわ、あなたが落ち着いて。」
小口「千里、」
入ってくる。
小口「じゃあパパはお仕事してくるな。」
千里「うん頑張ってね。」
申し訳なさそう
千里「パパも昨日は僕のせいで眠れなかったんでしょ?ごめんね。」
小口「何言ってるんだ千里、パパは大丈夫だよ。早く治るといいね。何か食べたい物はあるかい?」
***
一週間後。千里、登校の準備をしている。
珠子「せんちゃん、元気になって良かったわね。もう大丈夫ね。」
千里「うんっ。ママとパパ、本当にありがとう。いってきまあーす!!」
珠子「はーい、気を付けなさい。」
千里、飛び出していく。珠子、小口、手を振る。
小口「珠子、今日の夜二人であの子に話そう。」
珠子「そうね。でもあの子、簡単に受け入れるかしら。」
小口「千里はおじいちゃん好きだから、きっと受け入れてくれるよ。」
珠子「そうかしら。」
小口「話してみよう。あの子も説得すれば分かってくれる子だからさ。」
珠子「分かったわ…。」
夕食時。千里、珠子、小口。
千里「え、転校?嫌だよ、僕ここの学校にいる!!」
小口「でも千里、宮川のおじいちゃんが重い病気なんだよ。だから見てあげないといけないんだ。」
千里「宮川の?長野に行くってこと?」
泣き出す
千里「嫌々嫌!!嫌だよぉ、僕引っ越しなんかしない!!ここにいる!!」
小口「長野からここまで通うつもりかい?」
千里「・・・。」
俯いたまま
千里「どうしても行かなくちゃいけないの?」
珠子「えぇ。おじいちゃん具合悪いからママたちがいってお世話してあげないとね。せんちゃんにも会いたいって。もし独りにしていたら死んじゃうかも知れないのよ。」
千里「おじいちゃんが死んじゃうかも?そんなの嫌だ!!」
泣き出す。
千里「ねえ、どうすればいいの?パパ、ママ!!」
小口に泣き付く。小口、千里を慰める。
○河原町こざくら小学校・体育館
音楽会。千里、ピアノ伴奏と合奏でのピアノを弾いている。悲しそうな顔。
○同・教室
千里と佐久間先生、黒板の前に立っている。
佐久間先生「と言うわけで、突然ではありますが小口千里君は今日でみんなとお別れです。」
元助「お別れって?千里君転校しちゃうの?先生、なんで?」
宗一郎「本当に行っちゃうの?」
佐久間先生「千里君のおじいちゃんが具合悪くなってしまったので、おじいちゃんの看病のために行かなくちゃ行けないんですって。さぁ、」
千里、泣きそう。
佐久間先生「午後の時間は千里君のお別れ会をやってみんなでさようならしましょう。」
給食の時間から。クラスメート、お菓子を食べながらゲームをしている。
***
下校のチャイムがなる。
佐久間先生「それでは、みんな立って。千里君、」
千里「はい、」
俯きながら前に出てくる。
千里「一年生の入学から今まで、短い間でしたが、みんなで過ごした日はとても楽しかったです。みんなと別れるのはとても寂しいけれど今日でお別れです。長野へ行ってもみんなの事はずっと忘れません。ありがとうございました、さようなら。」
千里、一人一人から小さな花束とメッセージカードを受け取る。泣き出す。
歌を歌う。千里、泣き笑いで歌う。
○小口家・庭先
小口、珠子、車に荷物を積んでいる。
小口「さぁ、準備はできた。千里、いいかい?」
千里「うん。」
そこに清原、園原
元助・宗一郎「千里君ーっ!!」
千里「ん?」
振り返る
千里「元助君に、宗一郎くん!!来てくれたんだ。」
清原「当たり前だろ。これ、」
プレゼントを渡す。
元助「突然だったからさ、びっくりしたよ。プレゼント。向こう行っても手紙おくれよ。元気でな。」
宗一郎「僕からも…」
千里「二人とも…」
涙あふれる。
千里「うん、勿論だよ。お手紙書くよ、きっと又会えるよね。」
元助「うん、」
宗一郎「きっと、約束だよ。」
珠子「せんちゃん、」
千里「うん、」
車に乗り込む。
千里「ばいばーいっ!!元気でね!僕の事忘れないでね。」
元助と宗一郎、手を振って泣いている。
○車内
千里、肘で涙を隠す。
珠子「せんちゃん、」
千里を優しく抱き寄せる。
珠子「初めての転校だもんね、お友達と別れるの悲しいね。でも叉新しいお友達がすぐに又出来るわよ。」
小口「美代ちゃんがいれば、あの子すごく寂しがっただろうね。」
珠子「そうね、せんちゃんの事大好きだったもんね。」
千里「うん。」
寂しそうに微笑む。
美代の声「千里ちゃんーっ!!千里ちゃんーっ!!」
千里「つ!?」
慌てて顔をあげる。
千里「美代ちゃんっ?」
珠子「えぇ?」
千里「美代ちゃんだ!!」
車は高速道路
美代「千里ちゃんーっ!!」
千里、振り返る
千里「美代ちゃんっ!!」
美代、車を追いかけるように走ってくる。
千里「美代ちゃん、美代ちゃんだ!!パパ、ねぇパパ、停めて!!早く車止めて!!」
小口「千里、停めてって言っても急には止まれないよ、ここは高速道路なんだよ?」
千里「だって、だって、美代ちゃんが!!僕、美代ちゃんにちゃんとお別れしなくちゃ。」
珠子、千里を落ち着かせる。
珠子「せんちゃん、落ち着きなさい!!」
千里「美代ちゃんっ、美代ちゃんーっ!!」
後ろを向いてじたばた。
珠子「危ないわよ、危ないったら、せんちゃん少し落ち着きなさい!!」
美代、まだ走って追いかけてくる。泣いている。
美代「千里ちゃんーっ!!」
千里「美代ちゃんーっ!!」
珠子、千里を押さえつける。
千里「何するんだ、ママ!!ママっ、放してよ!」
珠子「冷静になって考えてみてせんちゃん、美代ちゃんはもう亡くなったのよ。それにここは、」
周りを見る。車の通りの激しい高速道路。
珠子「高速道路なのよ、しかももう名古屋なの。京都からはずっと離れているの。」
小口「美代ちゃんがここにいるわけがないよ。」
千里「そんな、だって。」
車の後ろを見る。車が走っているだけ。美代の姿はない。
千里「美代ちゃん・・・」
寂しげに俯く。珠子、千里を慰める。頼子は眠っている。
車が込み合ってくる。
小口「お、だんだん車が混んできたぞ。千里、渋滞になる前に何処かのサービスエリアに入って行かなくていいか?」
珠子「渋滞になってからトイレって騒がれてもママ知りませんよ。」
千里「あ、うん!お願い止めて。」
車、渋滞直前のサービスエリアに入る。
○小口家・庭先
茅野市宮川。家族、荷を下ろしている。
千里「わー、おじいちゃんちだ!」
小口「あぁ。ここに暫くは暮らすんだよ。」
千里「おじいちゃんと!?やったぁ!!」
そこへ小口吉三。
小口「おぉ、父さん。」
吉三「懐仁、来たか!!それに、珠子さんに、千里に頼子。」
千里「おじいちゃん、久しぶりだね。」
小口「父さん、起きてて大丈夫なのか?」
吉三「なぁに、わしゃ大丈夫じゃ。それより千里、お前こそ色々あったみたいじゃが大丈夫じゃったか?」
千里「え?」
小口「あぁ、この子はお陰様でもう大丈夫だよ。な、千里。」
千里「うん。」
吉三「そりゃ良かった。とにかく早くお上がり。長旅疲れたろう。」
家族、荷を下ろしながら家の中へと入る。
○同・居間
大きな囲炉裏がある。千里、キョロキョロ
吉三「さぁさぁ、まぁお座りなして。千里も。」
千里、にこにこ。
吉三「んで何だ?アパートが見つかるまでのしばらくの間はここにおると言ったが、千里の学校はどうするんだ?」
小口「えぇ、見つかるのもいつになるかわからないのでここから通える学校に転校の手続きをしました。」
吉三「ほー、では宮川長峰小学校に通うんじゃな。」
小口「あぁ父さん。」
吉三「しかし、千草がいなくて寂しいのお。どうしてあの子を引き留めなかったのじゃ!」
千里「千草オッパ・・・」
吉三「とにかく、あの子がいつ戻ってもいいように。こっちにいることを千草にも連絡しておきなさい。」
千里家族と吉三、わいわい。
○宮川長峰小学校・帰り道
麻衣、健司、磨子、末子、横井が並んでいる。
磨子「そう言えばさ、噂なんだけどうちの学年に転校生が来週から入るとか…」
麻衣「転校生が?何ほれ?初耳。」
健司「俺も。どんな子かなぁ?」
赤くなる。
健司「可愛い女の子ならいいな。」
末子「私は、どっちでもいいや、いじめっ子じゃなければ。」
横井「俺はなぁ?」
ニヤリ
横井「健司、お前の様に苛め概のあるやつがいいや。」
健司「おいっ、ほれってどういう意味だよ?」
千里の家の前を歩く。
健司「ん、」
小走りになる。
磨子「あ、健司待ちなさいよ!!」
麻衣「どうしたんよ!!」
通りすぎる。
健司「お前達知らねぇーのか?ここの雷じいさん、めちゃくちゃ怖いんだぜ?」
横井「あぁ、俺も知ってる。あまり関わりたくねぇーよな。」
磨子「ほりゃ、恐いんは、」
末子「あんたたちがごただもんで怒るじゃないの?」
麻衣「で、どいときに恐いって?」
横井「宮川公園で野球やってて窓ガラス割った時とか」
麻衣、磨子、末子「そりゃ誰だって怒るの当たり前っ!!」
三人が去った後。千里が出てくる。
千里「それじゃあ僕、近くでちょっと遊んでくるね。」
駆け出す。
○宮川長峰小学校・教室
翌日。湯田坂君惠先生(36)、千里。
湯田坂先生「それでは授業を始める前に、今日からこのクラスで一緒に勉強をすることになります、転校生を紹介します。小口君、自己紹介をして。」
千里「はい、初めまして。京都から来ました小口千里です。皆さん今日から宜しくお願いします。」
大きな拍手。
湯田坂先生「ありがとう。じゃあ小口くん?」
席を案内している。
***
2時間目休み
健司「転校生って男だったんだ、しかもお前、幼稚園のチビだろ?俺、改めて健司。岩波健司ってんの。宜しくなして。」
磨子「私は磨子。田中磨子だに。」
末子「末子だよ、吉岡末子。」
横井「俺は哲仁、横井哲仁だ!宜しくなっ。」
じわじわ
横井「お前幼稚園のチビなんだって?女みたいだな。苛め概がありそうなやつだぜ…」
千里「え、え、えぇ?」
磨子「これっ、てつ!!」
頭を平手打ち。
横井「痛ってぇ!!」
磨子「こんなやつのいうこん気にせんでいいでね。」
末子「安心しな、口ではこいこん言ってるけど根はうんといいやつだで。」
麻衣「あんた、」
千里をまじまじ
麻衣「ここで又、会えるなんて奇遇ね。」
千里「あ、麻衣ちゃん!」
麻衣「ほ、私は麻衣。せんちゃんずら?」
にこにこ
麻衣「重大発表!!実は私、先日の叔母の結婚式で・・・せんちゃんとは親戚同士になりました!!私の叔母さんの旦那がせんちゃんのはとこおじさんなんです!」
全員「へぇー。」
***
放課後、帰り道。麻衣、岩波健司(9)、田中磨子(9)、横井哲仁(9)、吉岡末子(9)
千里「あ、じゃあ僕んちここだから。みんなきょうはありがと。又明日ね。」
健司「は?」
家と千里を見る。
健司「お前、この家の子だったのかよ?」
千里「うん。ここ僕のおじいちゃんの家なんだ。じゃあね。」
手を振って家に入る。
他五人、ポカーンと千里を見つめている。
○小口家
夕食時。千里、にこにこお喋り。
千里「(食べながら)でね、てっちゃんがね、」
珠子「ちょっと千里、ご飯中くらいもっと静かにしなさい。」
千里「えー、だって・・・」
吉三「ははは、いいじゃないか珠子さん。千里も嬉しいからこうやって喋りたいんじゃよ。なあ千里、今日の事、おじいちゃんに話してくれないか?」
千里「(嬉しそうに)うん!!ねえ聞いてよ、それでね。」
***
吉三「のお千里、お前の父さんから聞いたんじゃが、お前はお花が好きなんじゃって?」
千里「うん!だってかわいいんだもん。」
吉三「おーそうかそうか。なら春になったらおじいちゃんと見に行くか?ここののぉ、もうちぃと先にある運動公園の桜が見事なんじゃ。」
千里「わぁ!!いきたい!約束だよ、絶対連れていってね。」
小口「(笑う)父さん、病み上がりなんだし父さんはもう年なんだからあまり無理はしないでくれよ。」
吉三「懐仁、わしの事をあまり年より扱いするんじゃないわい。わしゃまだピンピンしとる!」
珠子「お冷や水はよくないわよ、お父さん。」
吉三「珠子さんまで!年寄りバカにするんじゃないぞ!」
***
一週間後。
吉三、横たわって亡くなっている。千里、珠子、小口。
千里「おじいちゃん、おじいちゃんっ!!」
小口「父さん。」
珠子「ついにお亡くなりになってしまったのね。」
小口「仕方ないよ、病気だったし、何しろとしも年だ。長生きしたよ。」
千里「おじいちゃんっ!!」
泣き崩れる。
○千里の夢の中
古い和室。千里が眠っている。
千里「ん、ううっ、ん?」
薄目を開けてキョロキョロ
千里M「ここは何処だろう?ママ?パパ?」
枕元で足音。
千里「誰?」
箪笥や棚の引き出しを開ける音。姿はない。
千里「ねぇ、誰なの?ここは一体何処なの?返事してよ!」
シーンとなる。
千里「っ!!?」
美代の声「千里ちゃん、千里ちゃん…」
千里「その声は、美代ちゃん?」
美代の声「美代を置いていかないでよ。どうして美代を置いて行っちゃうの?美代に一言も知らせてくれないの?」
千里「ごめん美代ちゃん、ごめんよ。お願いやめて。こっち来ないで・・・。」
美代の声「どうして?千里ちゃん、もう美代の事嫌いになったの?忘れちゃった?」
千里「そんなことないっ!!」
美代の声「約束したわよね、大きくなったら千里ちゃんのお嫁さんになるって。
千里「お願い美代ちゃん!!」
美代「(悲しげ)でもね、美代はもう大きくはなれないの・・・死んじゃったから。」
千里、強く目を閉じる。声はだんだんと大きくなる。
美代の声「だからね美代、千里ちゃんが大きくなるまで待ってる事にしたの。千里ちゃんが大きくなったら美代、叉千里ちゃんの事迎えに来るから・・・そしたら」
千里、目を開ける。目の前に美代。
美代「結婚しようね。」
千里「ひぃーっ!!!」
美代の隣に吉三。薄笑いをしている。
吉三「千里、わしとの約束もわすれとらんな?春になったら一緒に見に行こう。」
千里「おじいちゃんっ、な、何を?」
吉三「さくらじゃよ。わしの今おるとこはのぉ、季節問わず年中桜が見れるんじゃ。千里は桜が好きじゃろう。だからこっちへおいで、おいで・・・」
千里、布団に潜る。
千里「ごめんなさい、僕、もうどっちの約束も守れない!許してよ、二人のところへはいけないんだ!生きてる僕を殺さないで!お願い!!」
○小口家
千里、小口、珠子、川の時で眠っている。千里、飛び起きる。汗だくで息を切らす
***
一ヶ月後。千里、小口が縁側に腰掛けている。珠子、おねしょ布団を干している。千里は窶れている。
珠子「せんちゃんったら又おねしょして」
千里「ごめんなさい。」
小口「大丈夫、千里。まだこの子も三年生なんだし、新しい環境にもまだ馴染めていないだろうし。な、千里。」
千里「…。」
珠子、縁側に腰を下ろす。
珠子「でも心配なのはせんちゃん自身よ。おじいちゃんが亡くなって以来、ずっと魘されてみたいですし、寝不足みたいで。このままじゃ、せんちゃんがどうにかなっちゃうわ。」
小口「そうだよな、私も心配していだ。じゃあ、これを期に…」
○宮川長峰小学校・教室
卒業式。
湯田坂先生「と言うわけで、たったの三ヶ月でしたが、小口千里君はおうちの都合で転校してしまうことになりました。」
千里「折角みんなと仲良くなれると思ったのに、とても寂しいです。でも、僕の転校先は諏訪市の上川城南小学校です。茅野からは遠くはないみたいなのでみんなよかったら又遊んでください。」
麻衣「当たり前ずらに!!」
立ち上がる。
麻衣「私達はへーあんたと仲良しなんだだもん!!きっと又遊ぼうな。ね、みんな。」
クラスメート「うんっ!!」
千里「みんな、」
涙ぐんで微笑む。
千里「ありがとう。本当にありがとう。」
頭を下げる。
千里「皆さん、先生っ、お世話になりましたっ!!」
湯田坂先生「小口君、本当に短い間だったけど楽しかったわ。元気でね。上川城南小学校に行っても頑張るのよ。逞しくて優しい子になってね。」
千里「はい、先生っ。先生のお言葉肝に命じます。」
湯田坂先生、笑う。
湯田坂先生「君ってなんか、時々古風な言葉遣いをするわね。」
千里「え?」
クラスメート、笑う。
千里「えへへっ、ふふ。」
千里、泣き笑い。
○アパート
諏訪市上川城南。千里、小口、珠子。
小口「千里、何度も何度もすまなかったね。でも今度はもう大丈夫だよ。しばらくここに落ち着こう。今度からは新しく明るい、家族五人だけの生活を始めていこうね。」
珠子「そうね、せんちゃんっ。良かったわね、やっと落ち着けるわね。」
千里「うんっ、」
深呼吸をする。
千里「ここもとってもいいかも。僕好きになっちゃうな。寧ろ京都よりもいいかも。」
珠子「まぁこの子ったら!!」
小口「このぉ、ついこの間までブーブーいって泣きべそかいてたやつが!順応性のいいやつ!!」
千里の髪の毛をいたずらっぽく撫でる。
千里「痛いっ、痛いよちょっとパパぁ、やめてくれよぉ。」
近くには子供数名。
男の子「あ、君新しく引っ越してきたの?」
千里「え?」
男の子「僕たちと一緒に遊ぼうよ。」
女の子「仲良くしよ。」
千里「いいの!?」
子供たち「もっちろん!!」
千里、珠子と小口の顔をみる。二人、微笑んで頷く。
千里「うんっ!!」
千里、子供たちとかけていく
終わり。