一本とられたとわたしは思った。
「契約書はただの紙さ」
アンソニーの手からそれを取ってわたしは破いた。
「振り出しにもどそう」
わたしはアンソニーにロブのダイヤモンドの山のことを話した。
「俺がトーマス・キッドだとわかったら、ロブのやつは俺を
追い出してしまうだろうよ、そして警察に知らせるさ」
「世界に誇るトーマスに大金なんか預けておけませんからね」
アンソニーはそう言ったが、その時ロブがやって来たので
わたしはあわてて口を閉じさせた。
「やあ、ロブ」わたしはそこらにごろごろいる詐欺師のように言った。
「こいつ、友達なんだ。トニーって言うんだ」
わたしは弟子を前へ突き出した。
「トニー?本名はアンソニーか?」ロブが聞いた。
アンソニーはまごついていたが返事した。
「はい、そうです」
「ロブ、インドまで行くんだ、こいつ、いっしょにいいだろ?」
わたしは聞いた。トニーは別にインドに行く用事なんてなかったが、
わたしは連れて行きたかった。
「かまわないがね、これからユーフラテスを渡るから用意しておきな」
ロブは馬車の手配をするのにどこかへ行ってしまった。
わたしはトニーに話の続きをした。
----------------------------------------------------------------
アンソニー注釈:
トーマスが私をロブに会わせた時というのは、
ほぼこのような感じであった。トーマスもロブも、
淡々としていたのを覚えている。