人を親しみを持って呼ぶのは詐欺師のやり方では
なかったのだが、ダイヤモンドの山がかかっているの
だからわたしにとっては何の苦でもなかった。
もちろん、他の理由も少しあったが)
もし未来に利益は何もなかったら、”ロバート”を
やめて”ニッチェ氏”とでも呼んでいただろう。そして
わたしのことも”トーマス”と呼ばせていたかもしれない。
「じゃ、さっそくだけど、ロブ」
なまあくびに混じりながら声が出た。
「キプロスまで行くつもりだったんだ。だから船はその
方向に向けて泳いで、じゃない走っているけど」
わたしはコンパスと地図で確かめた。
「キプロスからは大型船で行かないか、この船もそろそろ
限界だよ」
「ああ、いいだろうよ」
彼は言った。
キプロスにはわたしの弟子が一人いる。名前はアンソニー
=スコット。イギリスにいる時は詐欺事件はたいてい二人で
起こしていた。彼もわたしを”ユイ”と呼んでいたが、今年の
二月、わたしがトーマスだと知ると(わたしからトーマスだと
言ったのだが)、弟子になりたいと申し出てきた。それで
弟子にしてやった。彼は十三歳、英国人である。
彼がキプロスにいるわけは、実につまらないことなのだが。
わたしがキャプテンの船に乗り込んで一仕事してくると
言うと、彼はぜひその仕事ぶりが見たいと言い出した。
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アンソニー注釈:
ここでようやく私のことが出てくる…
私とトーマスとの出会い、また、彼が私に正体を
明かした時のことなど、私の人生にとっては
ものすごく劇的なことであるのだが。
…レーベンは、そのことについては、どうやら
この話の中では語ってはくれないらしい。
もちろん、私たちのことを今まであまり語らなかった
私も悪いのだが。