隊士達も眠り、外は勿論真選組屯所もすっかり静まり返った真夜中。
そんないつもの穏やかな夜に逆らうかのように、一つの部屋の灯りのみほんのりと照らされ、二人の息遣いと土方から発せられる色気の含んだ喘ぎが微かに響き渡っていた。
普段訓練や巡回などの重労働を強いられている隊士達は、その強い疲れを癒やすべく眠りこけているため、少しぐらいの物音には気づかないであろう。
だがしかし、そんな夜更けに屯所の前を通り抜けようとする男が一名…。
「あ〜全く、ジャンプの発売日が今日だなんてすっかり忘れてたぜ。お陰でこんな真夜中に出歩かなきゃいけなくなっちまったじゃねぇか…」
ブツブツと独り言の煩い…この男こそ、あの万事屋の主人とも言える人物、坂田銀時な
のであった。
銀時はいつものよう、この人通りの少ない道を歩いていく。
そこで、ふいと銀時は足を止めた。
「…?」
もうすっかり人も寝静まっているだろう真選組屯所から微かならも物音が聞こえてくるのである。
別に真選組の連中がどうなろうとも知ったことではないが、気掛かりな人もいる為足先を薄暗い屯所入り口に向けた。
気掛かりな人ーそれは他でもない真選組副長、土方 十四郎のことである。
態度には出していないものの、銀時は土方に密かに恋心を募らせていた。
そんな土方に、何かあれば自分も耐えられない。そう感じた銀時はさらに明日を早くする。
早々と物音や何かの声のする方に向かうが、銀時はピタッとまるで糸が切れたかのように立ち止まった。
副長室の前で。
「う…ァ…!!やっ嫌だ…くぅッ…。」
少し聞いただけで、何をしているがは目に見えるよう。
しかし土方の淫らで甘い嬌声は少なからず拒絶を含んでいた。
もしかすると、誰かにー…!!考えただけでもおそろしくなった銀時は、副長室の襖を鋭い音を立てて開け放った。
一瞬、時間が止まったような気がした。
いや、止まってくれたらどれだけ良かっただろう。
銀時の足元には、知識上見たことのある器具が沢山転がっていて、しかもその中央には布団の中で両手首を手錠で嵌められた土方と、もうひとりの、銀時に見覚えのある人物が…まあそういう感じになっていて、此方に気づいたらしくぱっちりと二人と目があっていた。
「…万事屋…?」
まだ甘い雰囲気を漂わせた土方が、潤んだ目と声を銀時に向けている。
銀時は息を飲もうとするのをグッと堪え、もうひとりの方に視線をむけた。
土方の上に跨る人物…それは真選組1番隊隊長、沖田総悟であった。
「あれぇ、旦那じゃねぇですかィ?」
相変わらずの口調で呼ばれるのがはらただしいが、今はそれどころではない。
「いや…なんか声が聞こえたから、何事かと思って…いや、それよりもおたくら、
できてんの?」
一応問うてみた。
違う、と土方に言って欲しかったのかもしれない。
しかし、そんな淡い期待は土方の言葉によって崩れ去った。
「誰にも…言うな…。」
その時、実感した。初恋は、叶わないと。
必死にポーカーフェイスを保とうとする銀時を横目でみていた沖田は、ため息まじりに銀時に説明を下した。
「実は、今日は俺と土方さんの記念日でしてねィ…、それを祝ってSMプレイをしてたんでさァ。土方さんが異常なまでに嫌がってたのも、そのせいでさァ。
まあ、それがそそるんですがねィ。」
「そ、そうか…」
声が裏返りそうになるのを抑えながらも銀時は返答する。
ふいに土方の方を見ると、土方は顔を真っ赤に染め上げて銀時から視線をそらしていた。
どうやら、本当のようだ。
「あ、視姦プレイもいいかもしれねェ。旦那も見ていきやせんかィ?土方さんの淫乱っぷりを。」
沖田がそう誘う。もし犯されている奴がどうでもよければ、当たり前のようにそれにのるのだが、土方となれば見ていても気が重いだけだ。
「いや、帰るわ。早くジャンプ読みてぇし。」
早急にそう言い放つと、銀時はそそくさと襖をしめ、屯所を後にした。
いつも通る帰り道。それは対した距離でもないのに、遠く感じる。
「くそっ…」
今思えば、先程視姦プレイとか言っていたのは、もしかすれば沖田は銀時の土方への気持ちに気づいていたのかもしれない。
ふと、銀時は足をとめ、着流しの裾で目をごしごしと拭くとまたもと来た道に戻りはじめた。
また、コンビニへと行くために。
「失恋にはー甘いものが1番だし、な。」
そう言ってコンビニに一直線に歩く銀時の背中を、事を済ませた沖田は窓から見つめて
優しげな笑みを浮かべていた。
(すまねぇ旦那。俺も土方さんが大事なんでさァ。)