「アリエス?」
「ふ〜んアリエスか、まあ綺麗そうだからいいかもね」
光一とルナは一応納得している様子だった。
「アリエスはホコタテ地方神話の水の女神からとったのかしら?」
「え、まぁ…」
「あらそう、意外に教養があるのね」
「意外ですね」
アストは実はただなんとなく思い浮かんだ。なんてとてもじゃないが言えなかった。それにしても最後のステラの「意外」という一言はアストの心に突き刺さった。
「(ステラ・ナイトスノー…彼女もSなのか?)」
女子三名全員がサディスティックな性格なのかもしれない。と思ったアストは悪寒が背筋を走るのを覚えた。
「では、『アリエス』ということで。ところでバイクの免許を持っている方はいらっしゃいますか?」
「え?」
アストは思ってもみなかったことを言われたのでメンバーを見渡した。ほかのメンバーも同じだった。
「親父、俺が持ってるじゃん」
と、驫木の息子である雅之が名乗り出た。
「お前が持ってるのは分かってる。ほかの方でだ」
すると
「私が持ってるわ」
と、レイラが手を挙げた。
「レイラさんもってるんですか?」
「まあ暇つぶしに乗る程度だけどね」
「暇つぶしに自動車警邏隊の大型バイク乗ってるんだもんねー」
「排気量が高いから爽快感があるじゃない」
「1200ccなんていう化け物で暴走するのはあんただけだよ」
「あら、改造したから1500ccよ」
「最高時速は?」
「時速420km/hってところかな?」
「もっと小さいのに乗りなさい」
「燃費悪いから最近は800ccよ」
「ほー。で、時速は?」
「時速は310km/h程度かな。でも、東洋製だから燃費は最高」
「一回捕まりなさい」
という二人の会話を皆ただ茫然と聞いていた。バイクは分からないアストだったが一般車が出せる最高時速180km/hを遥かに凌駕するレイラのバイクは文字通り「化けもの」なのだろうと思った。
「1500ccに乗ってたんですか。私も若いころはバイク乗りでしたが1250ccが限度でしたね。お若いのに達者だ」
「若気の至りです」
「事故や捕まったことは?」
「路面凍結を起こした道路に一度200km/hで突入してハンドルを取られかけましたがそれが最初で最後ですね。警官なんかに捕まるなんて醜態は晒せません」
「なるほど、なかなか腕がいいようで。ではこれも大丈夫ですな」
そういって驫木は背後の荷物の一角にあった布を取り去った。
「この旅のために作らせた特注品です」
そこには赤、黒、各1輪のバイクが止められていた。
「いくらボンベや食料があるといってもたらたらやっているより早い方が何事もいいです。そこで用意させました」
「性能は?」
やはり一番先にレイラが興味を示した。
「レイラさんが乗るのはおそらくこちらでしょう」
そう言って赤く塗装された隣の黒いバイクより少し大型のバイクに歩み寄った。
「S-750ランサー。排気量は750ccとレイラさんが乗っていたよりも少し小さめですがその分悪路の走行や小回りを重視しました。エンジンは水冷4式で最高時速は280km/h。馬力は77馬力。回転数は8000rpm。尤も、そんな飛ばすことも少ないでしょうが。尚、オプションとしてサイドカーが設置できます。その時は200km/hが限界でしょうが150km/h以上出すと危険なのでご注意を。病院などはガイアの反対側なのでくれぐれもヘルメットを忘れないようにしてください。で、次に…」
今度は黒いバイクへ体を向けた。
「XLR-250シャドウ。排気量250cc、最高時速180km/h、ランサーと同じく水冷4式エンジンで45馬力の8500rpm。ランサーより小柄ですが小回り、悪路走行などは圧倒的にシャドウのほうが向いています。それに扱いがランサーに比べかなり楽です。ただ、軽いので安定性はランサーに劣るうえあまり重い物を運搬できません。おそらくこれは雅之が乗ることとなるでしょう」
アストやルナたちにはさっぱり分からなかったが2人はどうやら納得したようである。
「で、燃料はタンクにハイオクで50L載せています。無論、水より軽いのでそこまで重量は嵩みません。ただ、燃料が切れたらただの鉄くずになるのでご注意を」
言い終えると驫木は係員に眼で合図し2輪を『アリエス』へと運ばせ始めた。
「もう各自の荷物は運びこませているのであれが積み終わり次第出発となります。何か質問は?」
驫木は一同を見渡した。が、手を挙げる者はいなかった。
「あ、そういえば」
すると不意に驫木は懐を漁った。
「いざというときにお使い下さい」
驫木が差し出した手には大口径銃が握られていた。
「これは?」
「照明弾です。夜間やいざというときのために。装填数は1発ですが2発発射可能です。ただ弾が嵩張るので持っていくのは6発で十分でしょう」
「(さて誰が受け取るのか)」
アストがそう思っていると、おもむろにレイラが受け取り腰に刺した。
「スペアです」
そう言って驫木はもう一丁差し出した。すると再びレイラが受け取りそのままアストへ差し出した。
「え?」
「男女一丁ずつね」
「でも…つかったことないんで…」
「逆に使ったことがある人なんていないわ」
それもそうか。
アストは若干いやいやそれを受け取りポケットへ収めた。
「良い忘れていましたがガイアはオゾン増加計画の成功によりオゾン層が拡大、有害な宇宙放射線の遮断に成功したため宇宙服を着なくとも有害な気体を遮断する細胞膜転用マスクをつけるだけであとは私服で活動できます。が、すべてが安全というわけではない上に原住生物に遭遇した際非常に危険なので本当な安全区域以外では宇宙服を身につけてください」
「へー私服で活動できるんだー」
ルナがみんなを代表して口を開いた。
「但し、安全な所のみで。というのをお忘れなく。では、以上ですのでスタンバイしてください」
「じゃあ乗りこみますか」
ずっと黙っていた光一がやっと口を開いた。