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よしんば、日ノ本史が... - 第1話 家出したら城に入れることになった

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2 第1章 薔薇猿豊臣秀吉 (1ページ)

📍 第1話 家出したら城に入れることになった
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第1話 家出したら城に入れることになった

第1章 薔薇猿豊臣秀吉
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儂は子どもの頃、御母(おかあ)の再婚相手である義理の父親に虐待を受けていた。

御父(おとお)が死に、また御父と呼べる存在ができたこと嬉しかった。

それなのに、4人兄弟の中で儂だけ醜いからと愛されないのが何より悔しかった。

血の繋がらない息子であれば致し方ないのかもしれない、と何度も言い聞かせても酷く耐え難いものだった。

御母が離縁を考え始めていることに気付き、儂はそれを止めた。

暴力を振るうような最悪な父親でも、義父の稼ぎがなければ儂ら家族は飢え死にしてしまう。

離縁だけは阻止するためにずっと我慢していた儂だが、儂を庇おうとした御母や姉弟たちが怪我をしたことは許せなかった。

儂のせいで御母や姉弟たちを巻き込んでしまうことを恐れた儂は、13歳の時に家を飛び出した。

義父から逃げるのに必死でその時は気付いておらんかったが、三河国まで来ていた。

初めて間近で城を見たためか、自然と眼前にある上ノ郷城へと足が進んでおった。

上ノ郷城の裏門前に到着した頃には辺りは真っ暗で、怪しまれないようにと茂みに隠れた。


―天文19年(1550年)―


「御父はこんな大きな城の中に入ったことあるのだろうか?......ん?」

「昔よく、俺を城下の悪ガキだと疑って中に入れてもらえなかったんだよ」

「だからって俺を巻き込んでまですることかよ」


聳え立つ城を見上げながら死んだ御父を思い出していると、裏門から若い男2人が仲良く話しながら出てきた。

幸運なことに話に夢中で儂の存在には気付いていないようだった。


「それに俺は嫌われ者だから、誰かに狙われるかもしれないだろ」

「駿府に行くことになったのだって、義元様の推薦だろ?そんな奴を誰も狙わないよ」

「駿府?義元様?」


貧しい生活で教育も何も受けていない儂には駿府がどこかなんてわからなかった。

近づくのは危険だと儂にもわかってはいたが、2人の後をこっそり追ってみることにした。


「はっ!くっそ!!」

「たまには手合せもいいかもしれないな。な?政虎」


政虎と呼ばれた男は手合せする相手の言葉には応えず、木刀を握りしめて打ち込んでおった。

一方の手合せしている男は持っている木刀を構えずに、軽々と避けていた。

男の無駄のない美しい動きに魅入ってしまった。


「そろそろ寒くなってきたし、戻ろうか?」

「俺は今から水浴びするけど、長照はどうする?」

「じゃあ、俺は忘れ物したから一旦戻るよ」


これが儂の運命を変えた鵜殿長照との出会いだった。

政虎という男は城内へと戻ろうとした長照に何かを話しかけると、水を浴びると川へ歩いていった。


「!?あの傷……」

「付き合わせておいて悪いことしたな」


義父からの暴力で儂も身体が傷だらけではあったが、政虎という男は儂以上に傷も多く深そうなものばかりだった。

川の水をすくい身体にかけ、まるでそれは身体に残る傷を必死で消そうとしているように儂には見えた。

男が着替えなおしてすぐに、長照という男が着替えを手に戻ってきた。


「悪いな。わざわざ持ってきてもらって」

「いいけど、俺もそんな権限ないしどうなっても知らないからな」

「おい、ガキ、これに着替えろ」


茂みに隠れていた儂にとっくに気付いておったようで、長照という男が持ってきた着替えが投げ渡された。

早く着替えろと促され着替え、2人に言われるまま付いて行くと城内まで案内された。

裏門の警備をする者たちが怪訝な目で儂を見ていたが、長照という男がいたおかげかすんなりと入ることができた。


「これを食べるといい」

「ありがとう」

「俺の名は鵜殿長照。こいつは政虎。呼び捨てで呼んでくれていい」


長照から渡されたおにぎりを食べただけで涙が出てきた。

虐待を受けていた以前に貧乏だったせいで食べるものも少なかったが、特段高級な米というわけでもないのに涙が溢れ出てきて止まらなかった。


「男なのに泣くなよ。そんなに食うものに困ってたのかよ」

「政虎も心にないこと言うと、嫌われるよ」


なぜ涙が止まらなかったのか、2人のやり取りを見ていてやっと分かった。

家族以外から優しくされたのが、この時が初めてだった。

家族でも義父から虐待を受けていた儂には、なぜここまで親切にしてくれたのかはわからないが、それがすごく嬉しかった。


「名前は?」

「藤吉郎、木下藤吉郎」


この2人との出会いが儂の人生を大きく変えた。