この作品は、同士郷例大祭に出展した作品です。
木々その葉を落とし、いよいよ枝だけになるとようやく、博麗の巫女の仕事も終わる。
ここは幻想郷。また今年も、現世では見られぬ幻想の冬がやってきた。
とかく雪が多い。石質な柱の立ちならぶ「大都会」ではおそらく幻想になったであろう純白の雪。これでは一向参拝の客も来ないだろうと、神社の巫女は例によって道具屋に来ていた。
「とまあ、地熱によって暖められた地下水が噴き出てくる現象を間欠泉というらしい。寒いときにはありがたい代物だ」
語っているのは店主森近霖之助。そしてお茶を飲んでいるのが博麗の巫女、博麗霊夢。よくある風景だ。
「あのね、到底実現できないような話はやめてくれる?もっと手軽に暖まれるようなものはないのかしら」
「有益な情報がほしかったらツケを払ってくれなきゃね」
「おうおう寒い」
いきなりそう言ってずかずか入り込んできたのは魔法使い霧雨魔理紗。ストーブの前に陣取ったが、これまたいつものことなので霖之助は気にしない。
「ちょうどいいところに来たわね。勝負でもしない?」
「なにか決着つけるようなものでもあったか?」
顔だけ向ける魔理紗。
「あんたがストーブの前に陣取ったから寒くなってね。暖まりたいのよ」
「冗談じゃないぜ」
魔理紗はまたストーブのほうに顔を向ける。
「冬のこの時期は茸を取りづらいからな」
「僕としてもやめてほしい。雪は光の反射率が高いからね。君たちの弾幕はただでさえ目に悪いのに、まさに目も当てられなくなるよ。それよりも雪合戦なんかどうだい?」
「余計に寒くなるわよ」
反対された霊夢の態度は若干冷たい。
「雪合戦も寒さをしのぐ知恵の一つさ。これだけ雪があるのだから、積もらせておくのはもったいない」
雪かきにもなるしね、と霖之助は言いかけたがやめておいた。
…と、ここでまた来客があった。
「すみません。発注した材料は届いているかしら」
入ってきたのは紅魔館のメイド、十六夜咲夜だ。
「あいにくまだでしてね。もうしばらくお待ちください」
「あら咲夜。折角来たんだから弾幕勝負でもしていかない?」
咲夜は即答する。
「嫌。雪の上じゃナイフを拾いづらいし、あなたと違って暇じゃないのよ」
いよいよ霊夢の機嫌が悪くなる。
「あらそう。ナイフじゃなければいいのよね?わかったわ。あんたの御主人さまと話しつけてくるから」
「ちょっと、お嬢様に何をする気!?」
飛び上がった霊夢を咲夜が追いかける。
「邪魔をするならまずあんたからよ!」
「お嬢様のもとへは、絶対に行かせない!」
BGM.フラワリングナイト
即効2分でかたがついた。咲夜の負けである。
「良い?あんたはそこで待ってなさいよ」
「うう、おぜうさま〜…」
紅魔館へとひとっ飛び。門番はお仕置きされたらしく戦いにはならなかった。
「レミリア、いるかしら?」
「ここよ」
見上げると頬杖をつきながら手すりに座る幼い「吸血鬼」の姿が見えた。この館の主、レミリア・スカーレットである。
「あんたのとこのメイド、借りるわよ」
「用件はそれだけ?まあ良いわ。でも、咲夜は優秀なメイド長よ。あなたごときに貸すわけにはいかないわ」
「それ、いつまで言っていられるかしらね」
BGM.亡き王女の為のセプテット
3分25秒で霊夢の勝利。イージーモードでもこれほど早くかたはつくまい。
「じゃ、借りても良いわね」
「まって。何をするのか見てみたいわ」
傘を持って追いかけてくる。
「香霖堂に行ってて。そこにあんたのメイドもいるはずだから」
「ルーミア、チルノ、リリー…と。あらかた集めたわね。次はアリスかしら」
行ってみると見事に留守だった。
「つまらないわね。ま、次次っと」
目の前にスキマが現れる。危うく入りそうになるが、そこはどうにか停まった。
「何よ紫。用がないなら邪魔しないでくれる?」
「何をするのか教えてくれない?あなたずいぶんと人を集めているそうじゃない」
スキマに腕を乗せて乗り出してきたのは八雲紫。おそらく幻想郷最強の妖怪。
「雪合戦よ。どうせなら大勢でやろうと思ったわけ」
「なるほど。そういう名目で弾幕勝負をやりたいわけね」
「どうでもいいけど。ところであんたも来ない?」
「そうね。考えておくわ」
「それとまた寒くなってきたわ。弾幕勝負もしていきなさい」
「今度は手加減しないわよ?」
BGM.ネクロファンタジア
5分47秒。早いのか遅いのか…。
「また勝ったわね。じゃ、必ず来なさいよ」
「はいはい…」
「どうせならあそこの神社にもいこうかしら」
「ちょっと待ってください〜」
かなりのスピードで追いかけてきたのは天狗の射命丸文。幻想郷唯一の新聞記者だ。
「話すことなんか何もないわよ」
「まあまあそう言わずに。どうして人を集めているのか教えてくれませんか?」
「前も聞かれたわ。面倒だから紫に聞いてくれる?」
「おやおやつれませんね〜。では力づくで聞くとしましょう」
「あんたに負ける気がしないけどね」
BGM.風神少女
4分12秒。連戦続く霊夢だが余裕の勝利。
「う〜ん。とりあえずどこに集めているのでしょうか?」
「香霖堂よ」
「香霖堂ですね。わかりました」
天狗はあっという間に飛び去って行った。
「あったあった。相変わらず暇そうな神社ね」
「あなたのところには及びませんよ」
そう霊夢の背後から声をかけてきたのは神社の巫女、東風谷早苗。現代神…とのことだが作者にはよくわからない。
「ケンカ売ってるわけ?いい度胸ね」
「いえいえそうではありませんよ。ただ真実を述べただけです」
「やっぱりケンカ売ってるじゃないのよ!」
BGM.信仰は儚き人間の為に
7分34秒。そろそろ霊夢もきつい。
「とりあえず今日の用件は香霖堂へ来いっていうことよ」
「わかりました…」
「ふう疲れた。そろそろ戻ろうかしら」
「お、来た来た。香霖堂へ行きたかったら私と勝負していくんだな」
突然ほうきに乗って魔理紗が飛び上がってきた。
「何?もうあんたと勝負する気力もないんだけど」
「いまならおまえを倒せそうだしな。さあ勝負だ!」
BGM.恋色マスタースパーク
10分ぴたりで霊夢の勝利。
「茸、もったいない事をしたわね」
「くそ〜。雪合戦では絶対負けないからな」
香霖堂へ戻ると霊夢の呼んだほかに萃香、八雲一家、そして幽々子、妖夢が来ていた。
「宴会ってことで呼んでおいたわ」
紫が不敵に笑っていた。
「てことは、終わったら私の神社で宴会するつもりね」
霊夢はため息をつくばかりである。
ルールは簡単。2つにわかれて思うままに雪玉をぶつけあうだけである。
3発当てられたら退場。勝利したチームには紫の持ってきたお酒を飲む権利が与えられることになっていた…が。
夕方から永遠亭の連中が、そして夜になるとレミリア、フランといった紅魔館の連中が参加することになったので結局7回勝負になった。八雲一家と永遠亭の連中、萃香、魔理紗、早苗の側の勝利だった。
「雪合戦では勝ったな」
「当り前よ。どれだけハンデがあったと思ってるの?なぜか知らないけれど私にばっかり雪玉が飛んでくるし」
後は博麗神社で宴会。雪合戦の話で大いに盛り上がった。
その中で、ふと霊夢は考える。
雪合戦と、弾幕勝負ではまた違った面白さがあるなと。
そして。
折があれば、またやってみたいな、とも。
団体で戦う弾幕勝負、雪合戦。勝っても負けても暖まるし談論風発。霊夢はまた、次にどうやったら勝てるかを思案するのであった。まだ冬は長い。そのうち、第二回戦が開かれるだろう。