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濡れて溺れて - ◆

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ㅤ昔、男は狼だと誰かが言った。世間知らずだった当時の私は半信半疑で、まさか、と軽く笑ってその言葉を流した。

ㅤだが、今ならわかる。一見消極的なように見えて、しかしそれは消極的という名の仮面を被った狼に過ぎないのだということを。そうでない者がいるのだとしたら、その人物は余程の紳士か、欲の無い人間なのだと思う。彼はそのどちらでもなく、やはり狼だった。




「あ……」


ㅤ蜜壷を突いていた男の逸物が抜け、その切なさに女は思わず吐息を漏らした。


「水沢さん……」


ㅤ呼びかけには答えず、男――……水沢は手早くゴムを外した。そして、女の顔めがけて中身をぶちまける。口中にまで侵入した液体は生温く独特な味がして、あまり気分の良いものではなかった。嘔吐きそうになるのを噎せたふりをしてごまかし、飲み込む。だが、それはいつの間にか口から垂れていたらしく、水沢はぺろりと女の唇の端を舐めた。


「……不味いな」


ㅤ心を見透かすような押し殺した声に、女の肩がギクリと強張る。いつもの彼なら、出すものを出して満足したところで、彼女の体に残った性欲など関係無しにシャワーを浴びに行ってしまうのだが、今日は違った。

ㅤ萎れたばかりとは思えないその姿はさながら獣のようで、水沢は再び女に覆い被さる。口づけ、流した体液を取り戻すかのように激しく貪りながら、静かに己のモノを彼女に充てがい、とば口を割る。しとどに濡れた女のそれはすっぽりと肉棒を咥え、体内に引きずり込んでいく。先程の行為では達せず、快感を持て余していた彼女にその刺激はあまりに非情で、自ら水沢を抱きしめていた。


「……体力は残ってるみたいだな、新庄」


ㅤ彼はそう言って、不敵な笑みを浮かべた。




ㅤ水沢は、女――……新庄の勤める会社の上司で、仕事のできる男だった。仕事以外では無口で硬派な人だと思っていたから、チャラチャラとした不真面目な男ならまだしも、彼にセックスという言葉は似合わなかった。だが、彼と初夜を過ごしてからというもの、印象はがらりと変わった。彼は、終わってしまえばあっさりとしているが、行為中はとても情熱的に愛してくれる。

ㅤ人を見た目だけで判断するものではない。普段の彼からは窺うことのできない人間の本能としての“男”が、他の男と同様に備わっていた。




ㅤ通常、一度萎えたら復活までには時間がかかるものだと聞いていたが……これは頼もしい。

ㅤ水沢が新庄の肩を抱き、彼女の奥深くまで逸物をさし込めば、腕の中からくぐもった呻き声のようなものが聞こえる。否応なしに女の部分を押し広げられ、痛みと快感の狭間で彼女は喘いでいた。浅瀬で縦に円を描くように彼女の蜜壷を掻き回せば、擽ったさにも似た快感を覚えて身を捩る。やがて、水沢が自身を上下させ、引き返しては深く、また引き返しては奥底へ、ゆっくりと動かしてやると、新庄は「もっと」と掠れた声で呟いた。

ㅤ月明かりで仄白く浮かび上がる彼女の肢体は勿論、汗でパラパラと散らばった前髪のひとつひとつにも色香を感じる。毎度、挿入時に痛がる新庄を気遣って、彼女が激しいプレイを望んでも初めのうちは優しくしていた水沢だったが、今日は我慢がならなかった。新庄を掻き抱き、水沢は浅く素早く腰を打ちつける。新庄の好きなところを熟知していた彼は、喘ぎ声が段階を踏んで高くなり、秀麗な顔が歪んで限界を報せ始めた頃、彼女をベッドに縫いつけるように再び奥を強く貫いた。


「ああ……っ!」


ㅤ新庄の熟れた唇の合間から嬌声が上がった。そっと肉棒を引いて接続部を見ると、掻き出された愛液が葛湯のようにとろりとしていて、水沢はゴクリと喉を鳴らした。

ㅤその時、キュッと己の先端が締め付けられた。それは新庄が口づけを請う合図で、水沢はふと顔を上げる。額に大粒の汗を張り付かせ、紅潮した頬の上で目元を緩ませた彼女と目が合った。

ㅤ水沢は再び彼女を抱きしめ、マシュマロのように柔らかな唇を食んだ。口を開かせて舌を入れると、新庄はされるがままになる。彼女は舌の裏を愛撫されるのが好きで、静かにその時を待っている。本当はギリギリまで焦らしたいのだが、生憎水沢にそんな余裕は無かった。尖らせた先端で新庄の裏筋を撫で上げ、その舌を吸い込むように深く口づけると、彼女は喉の奥で小さく悲鳴を上げた。余程気持ちが良いのだろう、華奢な体がぶるりと震えて快感を訴える。至近距離で見つめ合い、彼女の唾液を味わいながら彼はゆっくりと腰を落とした。新庄が水沢の舌に苦しそうな声を乗せる。だが最早、彼の理性は振り切れていて、彼女に手加減などしてやれそうになかった。

ㅤ唇を離して、水沢は新庄の頭部を強く抱き寄せた。


「……悪い、もう限界だ」


ㅤ直後、水沢は猛り狂った闘牛のようにモノの頭を振り、新庄を攻め立てた。互いの体液にまみれた体はより一層感度を高め、水沢が己を打ちつける度、ぐちゅ、ぐちゅと淫靡な声を上げて泣き叫ぶ。体を激しく揺さぶられて、新庄は痛みなど忘れて快楽に溺れ、恍惚と声を上げ続けた。

ㅤ頭の中が白くなっていき、やがて、己を支配する感覚以外は何もわからなくなる。恥じらいやプライドなどかなぐり捨てて、2人は互いを求め合った。新庄は涙や汗で顔をぐしゃぐしゃにしながら、水沢の暴れ馬を己の中でひしと抱きしめて離さず、また、水沢は、叶うことなら新庄の熱くとろける懐にいつまでも留まっていたいと思った。だが、2人が果てるまではそう長くはなく、キュッキュッと続けざまに締め上げてきた新庄によって水沢も己から迸る愛情を彼女の中にたっぷりと注ぎ込んだ。

ㅤ2人分の汗をしっとりと含んで重くなったシーツの上に、新庄はぐったりと体を預けた。水沢は彼女の中に己を入れたまま、暫くその場を動けずにいた。二度の行為を終えた後ではさすがに締め付ける元気も無いようだが、水沢には新庄が口づけを求めているのがわかった。先端を抜き、新庄の上体を起こしてやると、水沢は彼女の唇にそっと触れるだけのキスをする。だんだんと柔らかくなってきた息遣いの中で、彼女は満足そうに微笑んでいた。

END

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