by向日葵様
いつもの様に予告通りビッグジュエルを盗み、マジックを使ってその場から姿を消し。
翼を広げて飛び立った。
そして降り立った中継地点。
オレはそこでいつも通り盗んできた宝石を月に翳していつも通り・・・。
「じゃ・・・ねぇ・・・。」
そう呟くオレの声が震える。
月の光に照らされたオレの手の中にある拳大の宝石。
その宝石の更に奥にまるで火を灯したみたいに浮かび上がる赤い光。
これが・・・。
「パン・・・ドラ、か・・・?」
オレは誰もいない空間に問い掛ける。
答えてくれる人間などいるはずがない。
もしいたとしたら、それはあの組織の奴らくらいだろうけど、それがオレの手の中にあると知ればオレはその事に気づく間もなく殺されているだろう。
そう、殺されて・・・。
「親父の・・・様に・・・。」
オレはそう呟くと、その手の中にある宝石を強く握り締めた。
こんなモノの為に親父は殺された。
そう思ったら、オレは体の裡から悔しい想いが込み上げてくるのを感じて、オレはその場で即座にその宝石を粉々に砕いてぶっ壊した。
「親父・・・。」
そう呟いて空を見上げる。
やり遂げたすがすがしさ・・・なんて、あるはずがない。
後から後から苦い思いが込み上げてくるばかりで。
それでも、もうこれ以上罪を重ねる事はないのだと思ったら、それだけで少しでも救われる気がした。
その時、ビルの屋上の入口が重たい音を響かせて開いた。
オレは咄嗟に警戒してそちらに視線を向ける。
ここに来たのが組織の奴らだったら・・・。
その可能性を考えてオレは懐のトランプ銃に手を掛けた。
だけど、近づいてくるその姿にオレは目を見開いて思わず声を上げていた。
「あお・・・こ?」
「やっぱり・・・、快斗・・・なんだね。」
そう言って青子が悲し気に笑みを零す。
「なんで・・・。」
「当然でしょ?青子が快斗に気づかないわけがないんだから。」
青子がそう言ってオレに手を伸ばして背中を抱き締める。
「宝石・・・返すの?」
その言葉にオレは首を横に振って答える。
「今回のだけは・・・返すわけにいかねぇんだ。」
その言葉に青子が伏し目がちに頷く。
「快斗・・・。理由(わけ)を聞かせて。快斗がドロボーしている理由。キッドを続けている理由。」
「青子・・・。」
オレは思わず言葉に詰まり青子を見つめる。
「ちゃんと聞かせて。青子が・・・受け止めるから。」
オレはそう言われて。
青子の覚悟を知り、もう言い逃れは出来ないと思った。
だから一瞬で早変わりして本来の姿に戻ると、その場ですべてを打ち明けた。
パンドラの事。
組織の事。
親父の事。
まだ終わりを迎えていないオレ自身の戦いのすべてを青子にわかって欲しくて。
すべてを伝えた後でもう一度青子を見ると、青子の目からは涙が止めどなく溢れ出していた。
この涙ぜんぶオレの為に流れているのだと思ったらそれだけで胸の奥が苦しくなった。
「青子・・・。」
呼び掛けたオレに青子が顔を上げて言った。
「ごめんね・・・快斗。」
そう言ってまた膝を抱えて泣き出す青子の顔を覗き込んでオレは言った。
「なんで青子が謝るんだよ。謝んなきゃいけねーのはオレだろ?」
そう言っても青子はブンブン首を横に振ってもう一度オレを見上げた。
「キッドなんか大っ嫌いって・・・いつも言ってた。快斗悲しかったでしょ?青子は快斗を傷つけたでしょ?」
そう言いながらまた泣き出す青子を全部正面から抱えて包み込んでオレは言った。
「オレだって・・・青子にずっと嘘ついて騙してて。ホントひどい事も言ったりして。謝っても謝りきれねぇけど。」
オレはそう言って青子の顔を覗き込むと、まっすぐ青子の大きな瞳を見つめて言った。
「もう絶対に盗みはしない。青子に誓うよ・・・。だから、赦してくれるか?」
問い掛けるオレに青子が深く頷く。
「絶対だよ、快斗。約束だからね。」
オレはその言葉に頷くと、青子に顔を寄せて唇を重ねる。
オレが一番欲しかったもの。
それは君からの赦し。
ただ、それだけが欲しかった。
高価な宝石なんかいらない。
欲しかったのはオレのただ一つの宝石。
求めて止まないただ一つの存在。
今、それをくれたただ一人の君に誓う。
もう二度と罪は犯さない。
そして、犯してきた罪を償う為に。
オレのすべてを掛けて君を守ると誓うから。