今……いや、大分前からこんな感じだ。
外瀬 孝太郎(そとせ こうたろう)はいつものように嘆く。
「はぁ」
もう幾度となくついたため息だった。気分も重い。
原因は、受験のことだった。
孝太郎はまもなく高校生になる。あと、二時間後で入学式だ。一見幸せのようにも見えるこの状況こそが、孝太郎の悩みの種だった。
孝太郎が入学するのは、都立二番手校を受験する中学生が、よく滑り止めとして受験する私立西扇(せいおう)高校だ。
受験者の大半は、その都立二番手校に合格する実力を持っている。孝太郎もその例に漏れない。だが、みんな実力があるだけに倍率がけた外れの数値で、たとえ実力が足りていたとしても、孝太郎のように落ちる場合もあった。
そんな生徒が通う私立西扇高校。噂には、グレた不良が多いと聞く。自分も一時期荒れていた時があるのであまり否定的には言えないが、できれば行きたくない、と言えば事足りるか。
孝太郎は手を宙に泳がせた。かつて、この手で学校を騒がせたことがある、そう思うと、不意に疎外感を覚えた。なぜなら、自分の行動一つで辿りつく先が変わってしまったからだ。騒がせたお陰で母親は家を出ていき、今日まで父親と二人で暮らしてきた。運命というもの、又はこの先の未来とは、いとも容易くねじ曲げることができるんだ、とその時に実感した。
もう二度と同じ過ちを繰り返さない。今はそれを信条として生きている。
孝太郎は身支度を整えるために、ベッドからのっそりと起き上がった。