その日、地球とN星の代表の会談が行われようとしていた。
「いよいよですな、大統領」
「うむ」
椅子に腰掛けて、地球の大統領は気を揉んでいた。星間連盟に加盟してまだ一年。まだまだ宇宙で孤立している地球にとって、地球人とよく似た容姿のN星人とは何としても仲良くしておきたかった。
やがて会談の時間となり、N星の代表たちがやって来た。
大統領は笑顔で迎えたが、代表たちが奇妙な者たちを連れていることに気づいた。彼らはボロボロの衣服を着ていて、身のこなしもどこか卑屈だった。
「ああ、彼らは私たちの奴隷です。お気になさらず」
大統領の視線に気づいたのか、N星の代表たちは愛想よく笑って言った。
大統領も愛想笑いを浮かべたが、内心は困惑で一杯だった。奴隷制度は地球で禁止されているのである。
会談が成功すれば、N星から移住してくる者も現れるだろう。だが、このような野蛮な文化を持つ者と、果たして仲良くできるのだろうか。
会談中も大統領は終始そのことが気がかりだった。やがて休憩になると、大統領は秘書官に相談した。
「大統領。どのようなことがあっても、相手の文化を否定したり、優劣をつけてはいけません」と秘書官は言った。「あらゆる文化を尊重する姿勢こそが大事なのです。私たち地球人も、そうやって一つになれたではありませんか」
秘書官の言葉にいたく大統領は感動し、そして相手の文化を野蛮だと決めつけたことを深く反省した。
会議が再開されると、大統領は奴隷のことは気にもせず、あたかも自然なことのように振る舞った。
やがて会談が終了し、大統領とN星の代表は笑顔で握手をして別れた。秘書官が嬉しそうに言った。
「やりましたね、大統領」
「うむ。君のおかげだ。N星人たちも、自分たちの文化を否定しなかった我々に好感を持ったに違いない」
大統領は満足げに頷くと、早速地球に戻って会談は無事成功したと発表した。
会談の帰りの宇宙船の中、N星人たちは集まって会議をしていた。その中には奴隷だと紹介されたものがいた。だが、今度はきちんとした身なりをしていて、物腰も立派だった。
ついさきほど笑顔で大統領と握手をしたものが困惑した様子で言った。
「しかし、困りましたな。どうやら彼らには奴隷制度に対する抵抗感がないらしい。これは付き合うのに苦労しそうだ」
「うむ。全くだ。どうやらかなり野蛮な星らしい」とさきほどまで奴隷の格好をしていたものが頷いた。「よし、次は全員裸でいこう。衣服の文化についても調べるんだ。我々のパートナーになるかもしれんのだ。しっかり調査をしなくてはな」